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美しきスーパーカー! ランボルギーニ ミウラの誕生秘話とは?

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美しきスーパーカー! ランボルギーニ ミウラの誕生秘話とは?

1960年代中盤、モータースポーツの世界では早くも常識になり始めていたミドシップ車であるが、当時ロード・カーに採用された例は、フランスのルネ・ボネ「ジェット」など、ごく少数しか存在しなかった。

そんな折、1965年におこなわれたトリノ・ショーのランボルギーニ社ブースに参考出品されたのが、鋼板を組み立てたスペースフレームに、自社製のV型12気筒ユニットを横置きミドシップに搭載したローリング・シャシーである。

気軽に所有出来るランボルギーニが登場!? ただし、公道は走れません

のちの正式名称「P400」に、シャシーを意味するイタリア語「Teraio」の頭文字「T」を組み合わせ、現在では「TP400」と呼ばれているこのシャシーを目にした誰もが「ランボルギーニがモータースポーツに参戦するのでは?」と、噂した。

V型12気筒エンジンをミドシップに横置きした市販車は、前例がなかった。ところが、翌1966年春におこなわれたジュネーヴ・ショーに出品されたのは、前年のベアシャシーにカロッツェリア・ベルトーネ製のエキゾティックなボディを組み合わせた超弩級市販スポーツカー「P400ミウラ」だったのだ。

実はこのミウラ、ランボルギーニにヘッドハンティングされてきた設計者のジャン・パオロ・ダラーラ氏や、テストドライバーのボブ・ウォーレス氏など、のちに“レジェンド”と称される若手スタッフたちの自主製作プロジェクトからスタートした企画だった。

少数限定生産のはずが……自社モデルに上質な“GT”を望んでいたフェルッチオ・ランボルギーニ氏は、当初、このプロジェクトに難色を示していたという。カロッツェリア・ベルトーネの社主・ヌッチオ・ベルトーネ氏との協議の結果、「ベルトーネ側主導でショーに出品し、数台+αの限定生産ならば……」という条件付きで製作を許可したと言われている。

ところが、ジュネーヴ・ショーでプロトティーポ(試作車)を見た富裕層から購入を希望するオーダーが殺到、やむなくシリーズ生産化に踏み切ることになったという。

全長4360mm、全幅1780mm。かくして正式デビューに至ったP400ミウラは、400GTのV型12気筒エンジンを350psまでチューンして搭載、290km/hを自称する最高速度など驚異的パフォーマンスと本格的レーシングスポーツカーのハンドリングを、エキゾティックなスタイルとゴージャスなインテリアとともに愉しめる、文字どおりの“スーパーカー”になった。

ベルトーネ製の美しいボディは、公式にはジョルジェット・ジウジアーロ氏の後任として1965年から同社のチーフスタイリストに就任したマルチェッロ・ガンディーニ氏の作と言われている。しかし一説には、「ジウジアーロが描いたアウトラインに、ガンディーニ一流のディテールをくわえた」とする説が根強く語り継がれていることも、念のため記しておきたい。

トランスミッションは5MTのみ。フェラーリやマセラティが焦るミウラのシリーズ生産決定が発表されるや否や、世界中のカー・マニアが熱狂的に歓迎した。そして1967年からオーダーの受付が始まると、世界のミリオネアたちは先を争うようにオーダーした。そのなかには、シートに豹の毛皮を張るよう要求したフランク・シナトラ氏や、内/外装のメッキ類の総純銀化を求めたモナコ・レーニエ大公ら、風変わりな注文をするカスタマーも数多くいたという。

モデルによってはエアコンも装着できた。ただし、効きは弱かったという。フェルッチオ・ランボルギーニ氏は、「ミウラがある程度の完成形になって、世の中に自社の優れたテクノロジーをPRさえできれば、ダラーラやウォーレスらの若手スタッフたちの野心が鎮まる」と考えていたようで、ミウラのシリーズ生産化は事実上考慮していなかったらしい。

一方、ヌッチオ・ベルトーネ氏は自社主導でミウラの限定生産をしても良いと考えていたが、その生産台数はフェルッチオ氏の考えた数台+αよりは多いものの、それでも精々50台くらいのものだろうとタカを括っていたという。

つまり、フェルッチオ・ランボルギーニ氏もヌッチオ・ベルトーネ氏も、このクルマのポテンシャルを過小評価していたのだ。ごく少量だけの製作と考えていたからこそ、デビュー当初は上記のような「スペシャル過ぎる」特注も受けてしまったのかもしれない。

P400ミウラが全世界のスーパーカー市場に及ぼした影響は大きい。それまで新興のランボルギーニを軽視していたフェラーリやマセラティなど既存の高級スポーツカーメーカーも、ランボールギーニに対する見方を変えざるを得なくなった。

結果、280km/h級のマキシマムスピードを掲げたフェラーリ「365GTB/4デイトナ」やマセラティ「ギブリ」が投入されることになり、史上初の“スーパーカー全面戦争”に突入した。

今のランボルギーニがあるのはミウラのおかげ?P400ミウラは、あまりに革新的なモデルだったため、未完成な部分も多々あった。そこで、頻繁に改良がくわえられた。1968年12月には、改良版の「P400S」に発展、エンジンはプラス20psの最高出力370psに増強されたほか、パワーウィンドーやクーラーなどの豪華装備も装着できるようになった。

さらに1971年3月には、それまでミウラの弱点とされてきたエンジンの潤滑システムを改良するとともに、パワーも385psにアップ。これは、ボブ・ウォーレス氏らによる自主プロジェクトから始まったという「P400SVJイオタ」(サーキット走行を意識したミウラ改造モデル)の制作経験が活かされたという。

エクステリアは、後輪トレッド/リアカウルがワイドになり,最終モデル「P400SV」へ進化を果たした。

3.9リッターV型12気筒エンジンを搭載。最高出力は350~380psと、モデルによって異なる。そして1973年10月、最後の1台がラインオフ。シリーズ通算で765台のミウラが生産されたというが、その絶対数はSUV「ウルス」の追加で爆発的に増大した現代のランボルギーニ社の生産台数に比べるべくもない。とはいえ、このミウラによって、新興メーカーであるランボルギーニの知名度は、大きく高まった。ミウラがなければ今のランボルギーニ社はなかったかもしれない。

そんなミウラの素晴らしさを誰よりも認めていたのは、当初は冷淡だったはずのフェルッチオ・ランボルギーニ氏だった。甥であるファビオ・ランボルギーニ氏から筆者が直接聞いたところによると「伯父フェルッチオが、もっとも愛したランボルギーニはミウラだった」という。

その証拠に、自動車業界から離れたフェルッチオ氏が、晩年、自身のワイナリーで生産していたワインは「ミウラ」と名づけられていた。

文・武田公実

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みんなのコメント

7件
  • やはりミウラはかっこいいし色気がありますね。

    カウンタックや今のアヴェンタドールより好きだな。

    それとミウラって、今見るとカローラスポーツと全高以外ほぼ同サイズなんですね、意外と小さいんですね。
  • ミウラは美しい車だけど、機械としては欠陥車で、修理工場へ入っている期間が長い車です。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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