■ワゴン化という大胆な発想
トヨタのスポーツカー「GR86」は、同社がこれまで展開してきた「86(ハチロク)」の思想を受け継ぎ、軽量なボディと後輪駆動レイアウトによる素直なハンドリングで、多くのドライバーから支持を集めてきたモデルです。
【画像】超カッコいい! これがトヨタ斬新「ハチロク“ワゴン”」の姿です
ドライバーの操作に忠実に反応する操縦性や、手の届きやすい価格帯という特徴により、スポーツカーの楽しさを身近なものとして提示してきました。
その86をもとに、まったく異なる方向性を模索したコンセプトカーが2012年に製作された「サイオンX86Dコンセプト」です。
このモデルは、トヨタがアメリカ市場で展開していた若年層向けブランド「サイオン」のもとで企画されました。
サイオンは2003年に設立され、既存の販売手法にとらわれないマーケティングや、個性を前面に打ち出した商品展開によって独自のポジションを築いてきました。
2016年8月にトヨタブランドへ統合されるまでに100万台以上を販売し、そのうち70%が新規顧客だったという実績は、ブランドの狙いが一定の成果を上げていたことを示しています。サイオンX86Dコンセプトは、そうした挑戦的なブランド姿勢を象徴する存在でした。
ベースとなったのは、サイオンで販売されていた小型スポーツカー「FR-S」です。FR-Sは日本では「(初代)86」として知られ、低重心パッケージとバランスの取れた車体構成により、純粋な運転の楽しさを追求したモデルでした。
サイオンX86Dコンセプトは、その基本メカニズムを活かしながら、外観やパッケージングに大胆なアレンジを加えています。
最大の特徴は、ボディ形状をクーペからワゴンへと転換した点にあります。一般的にスポーツカーは2ドアクーペが主流ですが、サイオンX86Dコンセプトではあえて5ドアのワゴンスタイルを採用しました。
これにより、スポーツ性能と実用性を両立させる新しい可能性を提案しています。日常の買い物やレジャー用途にも対応できる荷室スペースを確保しながら、走りの楽しさを犠牲にしないという発想は、従来のスポーツカー像に一石を投じるものでした。
エクステリアデザインは、低いボンネットラインを保ちつつ、全体に抑揚のあるグラマラスなフォルムが与えられています。
前後フェンダーは力強く張り出し、路面をしっかりと捉える安定感を視覚的に表現しています。
さらに、フロントおよびリアには蝶ネクタイ状の黒いグラフィックが大胆にあしらわれ、個性的な印象を放っています。
この装飾は単なるデザイン上の演出にとどまらず、若い世代に向けた自己表現の象徴でもありました。
インテリアの詳細な仕様は多くが公表されていませんが、ベース車である86系のドライバー中心のレイアウトを踏襲しつつ、ワゴン化による使い勝手の向上が図られていたとされています。
スポーツ走行だけでなく、日常生活のなかでも自然に使えるパッケージングを意識していた点は、このモデルの重要なテーマでした。
週末のドライブはもちろん、趣味の道具を積み込んで遠出をするようなライフスタイルまで想定されていたと考えられます。
サイオンX86Dコンセプトは市販化には至りませんでしたが、その存在はブランドの実験精神を明確に示すものでした。
2012年当時、スポーツカー市場は縮小傾向にあり、実用性や効率性が重視される時代でした。そのなかで、スポーツカーをワゴンへと発展させるという発想は、既成概念に縛られない柔軟な思考の表れといえます。
量産モデルではないからこそ実現できた大胆な提案は、86という車名が持つ可能性を広げる試みでもありました。(くるまのニュース編集部)
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アホか。