2022年シーズンは、劇的な形でタイトル争いが決着したスーパーGT・GT300クラス。ここでは、光るところを見せながらも最終戦を前に事実上のタイトル争いから脱落してしまった陣営に、『反省』や『タラ・レバ』などを含めて、2022シーズンを総括してもらった。
第4回は、新型車両GR86を導入したmuta Racing GR86 GT陣営だ。
“フルウエイト走行”で密かに得ていた鈴鹿への自信【2022年GT300“反省”レビュー(3)グッドスマイル 初音ミク AMG】
GR86は今季、製作を担当したapr、新規チームのシェイド・レーシング、そしてmuta Racingと3台がシリーズに参戦。それぞれヨコハマ、ダンロップ、ブリヂストン(BS)とタイヤメーカーも分かれるなか、初年度にどんなポテンシャルを見せるのかが戦前から注目されていた。
muta Racingのシェイクダウンはこの3台のなかでもっとも遅い、3月下旬の富士公式テストとなってしまう。渡邊信太郎エンジニアによれば、それは「かなり無茶な状態」であった。
長年走らせたロータス・エヴォーラMCからのマシン切り替え、そして加藤寛規の相方として堤優威が加入するなど新要素が多い2022年シーズンに向けては、あまりにも事前の走行時間が少なかったのだ。
「本来であれば開幕前に充分に走行し、そこでいろいろ試してクルマ・タイヤ・ドライバーのマッチングみたいなものが見れれば良かったのですが、それができないままシーズンが始まりました」と渡邊エンジニアは振り返る。
「ジオメトリーなどベーシックで構造的な部分などは、レースウイークでポンと試すにはいかない。まだ、やりたいことがやれない状態で、最終戦まで来てしまっているんです。それが一番『不完全燃焼』な部分ですね」
とはいえ、渡邊エンジニアも初年度における速さの部分については、一定のものを見せられたと自負している。
「速さだけに関していえば、(ポテンシャルは)出せているとは思います。とくに堤選手は常にBS勢のトップですし、彼のタイムだけで言えば練習走行でもほぼトップ5に入ってるくらいですから。ベーシックなセットアップというのは外れていないと思います」
「あとはどうしてもタイヤが一番大きな要素になるので、言い方は悪いですが選んだタイヤが当たったり・外れたりというのはある。そういった部分で、結果が大きく左右された部分はあると思います」
新型車両に合わせたタイヤ開発の重要性や、そのシビアさが窺える話である。同じブリヂストンながら、ミッドシップ車両だった2021年までと比べるとタイヤの仕様は「だいぶ違う」のだという。
「幸い、同じBSユーザーで52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)などがいて、すべてではないにせよ、分からないことを教えてもらったり、テストでの情報を一部共有してもらったりとかができたのは助かりました。どうしても“ミッドシップベース”の考え方だと見当がつかない部分もありましたから。スタートから大きくつまづいていないのは、そういう部分も大きかった気がします」
それらの結果、不安定な気象コンディションも味方につけて優勝を飾った第6戦SUGOは「タイヤのパフォーマンスが驚愕だった」という。
車両のセットアップ面に話を戻すと、手を入れられる範囲が広いGT300規定車両だけに、「同じ車両を使っていても言えない部分は結構あり、(他2台を)見ると『あ、そんなことしているんだ』と思うことは結構あります」と渡邊エンジニア。
「(aprからの)持ち込みの推奨セットアップというのがあるんですが、うちはもう最初の時点でそこを大きく崩してしまって、全然違うものにしていました。ただ、それが大きな間違いにはならず、ちゃんと走ってくれていたので良かったなと思っています」
また、“細かい煮詰めができていない”ことが、逆説的に不得意を生み出していないのかもしれない、と渡邊氏は指摘する。
「いまは特化していないセットアップなので、“なんとなく・ぼんやりと”どこのサーキットでもいいのかもしれません。自分がやりたいことを盛り込んでいくと、もっと苦手な部分なども出てくるのかもしれないですね」
まだまだ生まれたばかりとも言えるGR86。その車両を『煮詰める」作業はこのオフ、そして2023シーズンの課題となっていきそうだ。
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