待望の2020年シーズン幕開けとなった富士スピードウェイでのスーパーGT第1戦は、デビュー戦のグリッドで最前列を獲得していたKeePer TOM'S GR Supraの平川亮/ニック・キャシディ組が、GRスープラの船出を飾るポール・トゥ・フィニッシュを達成。2位にau TOM'S GR Supraが入りトムスがワン・ツーを決めたうえ5位までをトヨタ勢が独占するなど、GRスープラが完璧な形でのシリーズデビューを飾っている。
DTMドイツ・ツーリングカー選手権との技術統合を目指して、最終段階となるClass1+α規定を導入したGT500クラスは、今季からLEXUS Racing改めTOYOTA GAZOO Racing(TGR)として参戦するトヨタ陣営が新型GRスープラを投入。そしてホンダもフロントにエンジンを積むFR駆動方式を採用した新型NSX-GTを開発し、ニッサンGT-R NISMO GT500の3車種ともに、特別性能調整のないガチンコ勝負の舞台が整った。
大規模なカレンダー改訂を強いた新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響を受け、予選決勝を日曜同日開催とするワンデーフォーマットとなった開幕戦は、午前の予選でKeePer TOM'S GR Supra平川がGRスープラのデビューに華を添えるポールポジションを獲得。その後方ではフロントロウ、セカンドロウともにGRスープラとNSX-GTが交互に並ぶ、トヨタvsホンダの直接対決構図が見て取れる予選結果となった。
天気予報は良い方向に裏切り、終始ドライで争われた予選に続き決勝前ウォームアップ走行時点でも降雨の気配はなし。雲の隙間から日差しも戻り、15時決勝スタート時には湿度58%、気温24度、路面温度39度まで上昇して、66周300kmレースのスタートを迎えた。
ポールの37号車KeePerはスタートをキャシディが担当、2番手の8号車ARTA NSX-GTはGT500ルーキーの福住仁嶺が第1スティントを受けもつ。以下、au TOM'S GR Supraのサッシャ・フェネストラズ、RAYBRIG NSX-GT山本尚貴、ZENT GR Supra立川祐路、DENSO KOBELCO SARD GR Supra中山雄一らが、フォーメーションラップから1コーナーに向けポジション争いを繰り広げる。
そこで先手を取ったのは山本尚貴で、順当にホールショットを決めた37号車、2番手8号車に続き、1コーナーで3番手au TOM'S GR Supraのインを差して早々にポジションアップを果たす。
その直後、車列後方では100Rの攻防で13番手発進のModulo NSX-GT伊沢拓也と14番手カルソニック IMPUL GT-R佐々木大樹が接触。ともにアウト側のランオフに弾き出された2台は、とくにインパルGT-Rのダメージが大きく、リヤ部が大きく破損し、右リヤタイヤは完全にマシン上方へと折れ曲がり、このアクシデントでいきなりのセーフティカー(SC)導入に。
その後、今季導入の新スポーティング規則で2周目にSCピリオド中ながらピットレーンがオープンとなると、左フロントを破損しながらも自走していたModulo NSX-GTがピットボックスへと向かい、そのままガレージインとなってしまう。
4ラップ目を終えたところでSCが去り、レースはリスタート。すると2番手ARTAの福住がKeePerキャシディの背後にピタリと張り付き、スリップストリームを活用して297km/hオーバーまで最高速を伸ばし、アウト側から首位奪取を狙う。
しかし、ここは元チャンピオンがルーキーに対して意地を見せディフェンスに成功すると、そのまま10周目を終える頃には3.654秒にまでギャップを拡大。対照的にARTA NSX-GTの背後にはRAYBRIG NSX-GT、au TOM'S GR Supraがテール・トゥ・ノーズにまで迫ってくる。
すると12周目に入ったところで4番手サッシャが動きを見せ、そのディフェンスを意識しながら山本尚貴も反応し、ターン1のTGRコーナーで2台揃ってARTAのルーキー福住を仕留めていく。
その後もGT300のトラフィックを処理しながら、RAYBRIG NSX-GTとau TOM'S GR Supraはコンマ5秒差圏内で2番手争いを繰り広げるのに対し、ARTA福住はタイヤが厳しくなったかジリジリと遅れ始め、18周目のホームストレートではZENT GR Supra立川にも飲み込まれてしまう。
20周を過ぎ、6番手を走行していたRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GT、これがスーパーGTデビュー戦の笹原右京は序盤にポジションを上げる力走を見せ、22周目に先陣を切ってルーティンピットに向かっていく。
■終盤に向けてレースでの強さを発揮するトヨタGRスープラ陣営。GT300クラスでも快挙
一方、長らくGRスープラ36号車を抑え込んでいた2番手RAYBRIG NSX-GTがここで厳しくなり、23周目のコカコーラ・コーナーでau TOM'S GR Supraを前に出し、ついにポジションが入れ替わる。
やはりNSX-GT勢はグリップダウンが厳しい傾向かそれともタイヤのピックアップ(タイヤかすが取れずにグリップダウンを起こす現象)が起きたか、25周目には5番手争いを展開していたARTA NSX-GTとKEIHIN NSX-GTが同時にピットイン。陣営内対決でピットでの逆転を狙った両チームだが、ともにミスなく作業を終えて静止時間33.6秒の同タイムでコースに送り出す。
28周目には4番手走行中だった立川祐路が石浦宏明にバトンタッチ、翌ラップには2番手au TOM'S GR SupraやWAKO'S 4CR GR Supraなどが続々とピットに入ってくるなか、ときを同じくしてコース上でARTA NSX-GTをかわしていた塚越広大のKEIHIN NSX-GTが力なくスローダウン。2コーナーでマシンを止め、戦列を離れる事態に。
さらに首位KeePerや2番手RAYBRIGもルーティンを終えた32周目には、武藤英紀にスイッチしていたRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTがトラブルかアクシデントか、100Rで左リヤタイヤがバーストするような形になり、コースサイドでストップ。立て続けに2台のNSX-GTが姿を消してしまう。
30周を過ぎた時点で路面温度は41度を記録し、セカンドスティントに突入した上位勢はより緻密なタイヤマネジメントが求められる中、35周経過で36号車、37号車のGRスープラがワン・ツー体制を維持。そのトムス勢2台をRAYBRIG NSX-GT、ZENT GR Supra、そしてARTA NSX-GTが追う展開に。
しかし38周目突入時点のターン13でGT300車両が絡むアクシデントが発生し、この日2度目のSC導入がコールされ、2番手のチームメイトに対し25秒以上のリードを築いていたKeePer TOM'S GR Supra平川にとっては、そのマージンが帳消しとなる最大の試練が訪れる。
41周目にホームストレート上での隊列整理を行い、43周目突入時点で再びリスタートが切られると、平川が盤石のダッシュでポジションをキープ。後続もウィービングを見せながら、大きな順位変動なくレースが再開していく。
続く周回にはWAKO'S 4CR GR Supraの坪井翔がARTA NSX-GTをかわして5番手へ浮上し、自己ベストを記録して4番手をいく先輩、ZENT石浦の背中を追っていく。すると49周目の最終コーナーに狙いを定めた坪井は小回りにインベタのラインを選択し、ホームストレートをサイド・バイ・サイドで駆け抜け、続く1コーナーでZENT GR Supraを抜き去り前へ。
そのままの勢いで続く最終コーナーでも3番手のRAYBRIG牧野任祐に仕掛け、51周目のホームストレート上でオーバーテイク。その攻防を見ていた石浦も続き、TGRコーナーで3ワイドに持ち込み、続くセクター1にかけてZENT GR Supraも4番手に進出する。
この攻防劇でGRスープラが首位から4番手までを独占する体制となり、やはりFR化初戦のNSX-GTはまだタイヤライフの管理にデータが乏しいか、SC再開直後に見せたウェービングからピックアップが激しいか、苦しい状況に追い込まれてしまう。
終盤に向けてさらに猛威を振るうGRスープラ勢は、3番手WAKO'S坪井がau関口に迫るものの、秒差圏内のバトルは最後までポジションを譲らなかった関口が2位を死守。
63周目にはDENSO KOBELCO SARD GR Supraを代打ドライブした2019年王者、山下健太がRAYBRIG NSX-GTを仕留めて5番手へ。これで優勝のKeePer TOM'S平川から5位DENSO KOBELCO SARDまでGRスープラが1-2-3-4-5を独占。関口の奮闘で、トムスがワン・ツー・フィニッシュを飾っている。
GRスープラはGT500クラスの優勝に加え、GT300クラスでもJAF-GTのGRスープラ、52号車の埼玉トヨペットGB GR SupraGTが優勝を果たし、GRスープラがデビュー戦でGT500、GT300クラスそれぞれ優勝を果たすという快挙を達成している。
一方、苦戦が予想されたニッサン陣営は、CRAFTSPORT MOTUL GT-Rの千代勝正が64周目にARTA NSX-GTをかわしての7位入賞が最上位。23号車MOTUL AUTECH GT-RはGT300マシンとの接触もあり、11位に沈む厳しい開幕戦となっている。
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