ホンダが投入した新世代のホットハッチ、新型「スーパーワン」は、オモシロかった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
新型ホンダ スーパーワンの特徴
1.導き出された70kW2.ブーストモードの魅力3.現実的かつ戦略的な価格帯1.導き出された70kW
(前のページか続く)しかし、延々と上り坂が続く場面に差し掛かると、ブーストモード起動時の最高出力70kW(95ps)の限界線も見えてくる。
アクセルペダルを床まで深く踏み込み続けても、上り坂での加速は緩やかだ。ちなみに、最高速度は135km/hでリミッターが作動して頭打ちとなる。
テスラや日産「アリア B9」といった大パワーのマルチモーターを積む上級セグメントEVのような、どこまでも際限なく加速が伸び続けていくようなパワー感を期待すると、登坂路の長いセクションではやや物足りなさを感じるのも事実。
だが、これ以上のパワーや最高速を求めれば、モーターの大型化や冷却システムの強化、それに伴うバッテリーの増大が必要となり、スーパーワンの武器である「軽快なフットワーク」と「誰もが手の届く現実的な価格帯」が失われてしまうだろう。
開発陣が語るように、70kWのスペックは、ハードウェアの限界を見極めつつ、日本の道路環境やワインディングでの楽しさを純粋に引き出すために導き出された、「塩梅」の着地点なのだ。
2.ブーストモードの魅力
さて、走行性能において、スーパーワンの魅力を最も味わえるのが、新開発の「ブーストモード」を起動した瞬間だ。
通常のノーマルモードからブーストモードへ切り替えると、クルマのキャラクターは一変。最高出力は軽自動車の自主規制枠である47kWから、一気に70Kw(95PS)へと向上する。
アクセルペダルをわずかに踏み込んだ瞬間から、モーター特有のトルクがダイレクトに立ち上がり、出だしからパワフルで鋭い加速が身体をシートへと押し付ける。抜群のレスポンスの良さは、内燃機関のホットハッチとは一線を画すEVならではの特権であるが、スーパーワンの真骨頂は単なる直線スピードの速さだけにとどまらない。
BOSEプレミアムサウンドシステム(8スピーカー)を介して車内へ響き渡る「アクティブサウンドコントロール(仮想エンジンサウンド)」と、ステアリング裏のパドルシフトで操作する「仮想7速ギアシフト制御(変速制御)」の協調システムによる新感覚の走りだ。
エンジン音の演出は、一般的な4気筒エンジンの官能的な回転音である2次音や4次音、さらには回転数が高まるにつれて心地よく響く不協和音の成分までを計算して合成したもの。
EVに疑似的なエンジン音を付加することに対して、世の中で賛否両論あることはホンダの開発陣も十分に認知しているという。彼らがこだわったのは「意のままに車を操る楽しさ」を達成するために、耳から入る情報(フィードバック)が不可欠であることだ。ドライバーがメーターを見ずとも、加速Gとシンクロした音の変化によって車の状態を直感的に察知し、クルマとの深い一体感を得るための機能として、BOSEのシステムは重要な役割を果たしているのだ。
BOSEのサウンドシステムと連動するのが、ソフトウェア上で緻密に構築された仮想のギアシフト制御。ステアリング裏のパドルを指先で弾くと、あたかもステップ変速を持つマニュアル車やデュアルクラッチトランスミッション(DCT)車を操っているかのように、エンジン回転数の音がキレよく上下する。
驚くべきは、音の変化だけでなく、変速の瞬間に発生するわずかな加減速Gの「揺らぎ(シフトショック)」や、レブリミッターに当たったときのフューエルカット(燃料遮断)のような不連続な挙動までもが、電気的なモーター制御によって物理的に再現されている。
さらに、ドライバーがパドル操作を行わないオートマチックモード(Dレンジ)であっても、システムが加速状況に応じて自動的に7速ステップ変速を行い、DCTらしい歯切れの良い変速フィールとサウンドを絶え間なく伝えてくる。
これにより、ドライバーはあたかも内燃機関のピュアスポーツハッチを自らの手で高回転まで回し切っているかのような、エモーショナルな感覚に包まれる。
ホンダが過去のスポーツモデル開発で培ってきたAT制御技術や走りのノウハウが、EV上で昇華されているのだ。
3.現実的かつ戦略的な価格帯
ワインディングでの熱い走りをひと通り堪能し、走行モードを通常の「ノーマルモード」へ切り替えると、スーパーワンはそれまでの荒々しいホットハッチの表情を潜め、静かで洗練されたプレミアムなシティコミューターへと表情を変えた。
ここでも真価を発揮するのが、専用チューニングされたBOSEプレミアムサウンドシステム(8スピーカー)。ラゲッジルーム下に配置された13.1リッターの大容量ボックスを持つ大型サブウーファーをはじめとする計8個のスピーカーシステムは、コンパクトな室内の特性を引き出すよう配置されている。
乗員の耳元に近い位置にスピーカーがレイアウトされている恩恵もあり、ボリュームを絞った状態でも音が濁らず、クリアで輪郭のハッキリとしたボーカルや、力強い重低音を響かせる。静かなEVの車内空間がそのまま上質なリスニングルームへと変わり、ワインディングロードからの帰路のクルージングを心地よい時間へと演出してくれる。
さらに、日常の利便性や実用性についても抜かりがない。インパネ中央にはGoogle搭載システムが標準装備され、GoogleマップによるナビゲーションやGoogleアシスタントによる音声操作、Googleプレイを介したアプリの利用がスマートフォン感覚でシームレスに行える。
安全運転支援システムである「ホンダセンシング」も最新世代のものが網羅されており、高速道路や渋滞時における運転負荷を大幅に軽減するトラフィックジャムアシストなどが緻密に作動し、ロングドライブでの疲労を抑えてくれる。
また、EVとしての実用的な機能性も高く評価できる。充電性能は普通充電で6kW、急速充電(CHAdeMO)で50kWに対応しており、このクラスのバッテリーサイズとしては必要十分以上のスピードを確保。
さらに、外部給電機能である「パワーサプライコネクター」を充電口に接続すれば、車内から最大1500Wの電力を取り出すことができ、アウトドアシーンや災害時の非常用電源としても安心感をもたらす。
これらすべての先進装備や快適・安全機能が凝縮されていながら、国や自治体(特に手厚い東京都など)のEV補助金をフルに活用すれば、実質的な購入価格は200万円台、場合によっては100万円台後半になる。ガソリン車の軽スポーツと変わらない現実的かつ戦略的な価格帯に収まるというから驚くほかない(車両本体価格は¥3,390,200)。
箱根の公道で実力を知ったスーパーワンは、単に環境性能をクリアするためだけの退屈な移動手段としてのEVではなかった。ホンダの熱いスポーツマインドが息づく本物のホットハッチだったのだ。
EVの未来に大きな希望と操る歓びを提示してくれるスーパーワンは、日常の移動に純粋な刺激と楽しさを求めるドライバーにとって、待ち望んでいた理想のコンパクトスポーツEVであると言えるだろう。
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ってことね。やたら見るもんな。