この記事をまとめると
■レクサスESはEVとハイブリッドを同じ790万円に設定している
レクサスの新型ESと新型RZが日本でお目見え! 素直に惚れ惚れする新世代レクサスの中身とは
■130万円のCEV補助金を活用すればEVの実質価格はさらに下がる
■この価格戦略はトヨタがEVを現実的な選択肢として普及させる狙いを示している
「EVは高い」という常識を打ち破る事件
「EV(電気自動車)はハイブリッドを含むエンジン車より価格が高い」というのは、クルマ好きの共通認識になっているだろう。
たとえば、ホンダの軽自動車「N-ONE」。ガソリンターボの価格帯は217万3600~227万8100円(FF)となっているが、同じ名前のEVである「N-ONE e:」の価格帯は269万9400~319万8800円となっている。いずれも47kW(64馬力)の最高出力は共通であることからパフォーマンスが同等だとしても、EVが50万~100万円も高価であり、たとえ58万円のCEV補助金を考慮したとしてもコスパ的には割高と感じてしまう。
しかし、とあるクルマの登場により、EVはエンジン車より高価という認識を改める必要が出てきた。それがトヨタの高級ブランドであるレクサスのミドルセダン「ES」だ。
2026年6月に発売開始となったレクサスESのスターティングプライスは790万円。その価格で「ES350h」と「ES350e」という2グレードが並んでいる。グレード名の数字からパフォーマンスが同等であることは想像できるだろうが、注目すべきは末尾のアルファベットだ。
レクサスのネーミングルールを知っている人ならわかるように、ES350hはハイブリッドであり、ES350eは電気自動車である。
より具体的にいえば、2.5リッターハイブリッドシステムから182kW(248馬力)のシステム最高出力を絞り出すES350hと、フロントを駆動するシングルモーターから165kW(224馬力)の最高出力を発生するES350eのメーカー希望小売価格は同一なのだ。
ちなみに、ES350eの一充電走行距離は670kmと、平均的なユーザーであれば1カ月の走行距離をカバーするほど余裕があり、十分に実用的といえる。けっしてバッテリーをケチるなどして価格を抑えたとはいえないスペックとなっている。
さらにレクサスESには「ES500e」という前後モーターを合わせて252kW(342馬力)を叩き出すハイパフォーマンス系EVもラインアップされている。さすがに、こちらの価格帯は830万~920万円とハイブリッドより高くなっているが、だからといってハイブリッドのコスパがよいとはいい切れない。
マルチパスウェイ戦略の本気が表れている
レクサスESが期待できる国のCEV補助金は130万円。つまり、EVのエントリーグレードの価格は実質660万円となるし、前後にモーターを積む最上級グレードでも790万円となる。そう、ハイパフォーマンスなES500eも、補助金を前提にするとES350hと同等のコストで手に入るのだ。さらに地方自治体の補助金を考慮すると、EV版のコスパは際立ってくる。よほど長距離移動を頻繫に行うユーザーでもない限り、ハイブリッドのES350hという選択は優先順位が下がるだろう。
もちろん、こうした主張に対しては「補助金でブーストしているだけだ」と批判も出てくるが、補助金がなかったとしてもレクサスESのエントリーグレードは、パワートレインを問わずに790万円の同価格であることは前述のとおり。
現在のガソリン補助金が終了すれば、ガソリン価格は200円/Lを超えるといわれている昨今において、ランニングコストを抑えられるEVを選ぶことには一定の経済合理性がある。レクサスESのように、EVがハイブリッドカーと同価格なのであれば、なおさらだ。
だからこそ、“いま”という時代感において、レクサスESの価格設定は非常に意味がある。レクサスESは「EVはエンジン車より高い」という時代の終わりの始まりといえるのだ。
おそらく、コストを積み上げていったら、たまたま同じ価格になったということではない。ハイブリッドカーとEVで同価格に設定したことは、非常に戦略的といえる。とはいえ、EVを赤字覚悟でハイブリッドカーと同価格にするほどの戦略的値付けをするとは考えづらい。EVのコストがハイブリッドカー並みに下がった、もしくはハイブリッドカーのコストがEV同等に上がってきたと捉えるべきだ。
ともすれば、レクサスを含めたトヨタの「マルチパスウェイ戦略」はエンジンを使い続ける経営戦略と理解されがちだが、マルチパスウェイの基本理念は「カーボンニュートラルの実現に向けて、地域やユーザーの現実に合わせた多様な選択肢を提供する」ことであり、その選択肢の中心にEVがいることは変わっていない。
あるユーザーにとっての最適解がEVだとしたら、EVを高価に設定しておくことは選択肢から外してしまうことであり、マルチパスウェイ戦略の理念からは外れてしまう。
レクサスESにおいて、ハイブリッドカーとEVのスターティングプライスを同一にしたというのは、まさしくマルチパスウェイ戦略の矜持であり、それを実現できるだけ電動化に対する開発・調達・製造コストを抑えることを実現したことを、レクサスESの価格設定は示している。トヨタ、恐るべしだ。
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みんなのコメント
やはり実際に乗るひとは航続距離の差なんてあまり関係ないんだな。
乗らないひとほど、航続距離と充電の話をしてくる。