現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > モータージャーナリストが考えるマッチョなクルマ

ここから本文です

モータージャーナリストが考えるマッチョなクルマ

掲載 更新 1
モータージャーナリストが考えるマッチョなクルマ

クルマは楽チンがいちばん、なんて誰が言いましたっけ? 男がちょっとワルい女に惹かれるように、クルマもやや手強そうなのが魅力的に映る場合もありますよね。見かけはもちろんのこと走りも、かなりスポーティ──。そんなクルマを私、小川フミオが3台選んでみました。


いまどきのボーイズレーサー トヨタ『GRヤリス』

新型ロールス・ロイス ゴーストは“脱贅沢”という名の贅沢なクルマ

かつて「ボーイズレーサー」という言葉がありました。街乗りに使えるんだけれど、週末のサーキット走行まで楽しめちゃう。コンパクトな外寸とスポーティな走り、という意外性のある組み合わせが好まれたのですね。かく言う私もボーイズレーサー、嫌いじゃありません。で、最近、トヨタが『GRヤリス』を発売してくれて、たいへんうれしく思っています。全長は4メートルにも満たない2ドアハッチバックですが、トヨタか、ヤリスかと、ナメてかかると痛い目に遭う。これこそ、ボーイズマッチョ、弾丸マッチョであります。

GRヤリスは「トヨタが自らの手で造るスポーツカーが欲しい」という、同社のマスタードライバ−、モリゾーこと豊田章男社長のかけ声で開発が始まったモデル。これまでにも『86』や『GRスープラ』というよく出来たスポーツクーペはあったものの、前者はSUBARU、後者はBMWが開発の主導権を握っていたため、ピュアなトヨタ製スポーツカーとしてGRヤリスは久々の登場したのですね。

外観はコンパクトハッチ、ヤリスに似ています。名称だってGRヤリスだし。でも、よく見てください。2ドアはヤリスに設定がありません。しかもフェンダーが、これでもか! と膨らみ、より高い操縦安定性をもたらすためのワイドトレッドのタイヤを収めているんですね。それゆえに、見た目もしっかりマッチョなんです。

実際、シャシーはまったく別もの。むしろ世界ラリー選手権で活躍している『ヤリスWRC』に近い。高剛性を追求したシャシーに、フルタイム4WDシステムが搭載され、1.6リッター3気筒エンジンがしぼりだす200kWものパワーを、4つの車輪で受け止めています。

特にトップモデルの『GRヤリスHigh Performance』は、タイヤもハイグリップの専用タイヤ、サスペンションもサーキットがもっとも適しているかのような、ボディのロールを抑えて車体を前へ前へと走らせてくれるハイパースポーツタイプ。マニュアル変速機を操作して走りだすと、前方の消失点に向かって疾走していく感じです。

『ミニJCW』や『アバルト595』も乗り味からいうと、しっかりマッチョです。でも、あえてオシャレな雰囲気よりも走りに特化し、鍛え上げられた筋肉を思わせるボディを有するGRヤリスの求道的な雰囲気こそ、まさにマッチョの名にふさわしいように思います。


どこへでも行ける“頼りになる相棒” キャデラック『エスカレード』

次に挙げたいのが、GRヤリスの対極にあるともいえるキャデラックのSUV『エスカレード』。サイズは全長5195×全幅2065×1910mmというこのクルマ、たいへん味のある操縦感覚です。“本格ヨンク”の必須条件ともいえるセパレートフレームに、前後固定式のサスペンションシステム。ゆえに、ゆっさゆっさという感じで走ります。6153ccV8エンジンは、OHVというちょっと古いタイプではあるものの、623Nmもの最大トルクでまったく不足感はありません。


オフロードでは“足”、つまりサスペンションがよく伸びて、車輪を路面から離しません。いっぽう、高速でも意外なほど直進安定性にすぐれていて、どこへでも行けちゃう、頼りになる相棒なのです。この手のモデルとしてはトヨタのピックアップトラック『ハイラックス』も、しっかりした走りとともに、いい感じのミスマッチ感があるのでオススメしたい一台。でもとにかく、エスカレードのデカマッチョぶりは、図抜けていると思います。

そんなエスカレード、実は今夏にフルモデルチェンジを控えています。ホイールベースは166ミリも伸びて、より大型のフル3列シートモデルに。いっぽう、リアサスペンションは独立式となり、雰囲気もだいぶ洗練されたものに。

それはそれで、もちろん喜ぶべきことなんですけれど、たとえば『Gクラス』、『ディフェンダー』、それに『ジープ』と、好きになると、どんどん先代にさかのぼって乗ってみたくなるクルマがあるのは、クルマ好きの読者諸兄なら納得いきますよね。なぜかというと、ある目的のために作られたピュアなクルマだからだと私は思っています。エスカレードも、そうなっちゃうのかならないのか、まずはニューモデルをこの目で見てみたいと思います。


美マッチョ&価格もマッチョな ポルシェ『911ターボS』

さて、GRヤリスにはレーシングカーのような走りを求めて、エスカレードには米国メーカーが得意としてきた北米大陸の苛酷な自然をも克服できるようなオフロード性能を追求。そして、もう一台のマッチョとして、私はポルシェ『911ターボS』を挙げたいのです。

最初に911ターボが登場したのが1975年。それからモデルチェンジを繰り返しいまに至ります。911ターボがもっている最大の特徴は何かと聞かれれば、私は、常に最良のスポーツカーであること、と答えたいと思っています、はい。


現行モデルは2020年に日本発売が開始されました。どんなふうにマッチョかというと、これはもう、岩から削りだしたような剛性感のあるボディに、超をいくつつけても足りないようなスポーティな操縦感覚の組み合わせ、という点が思いつきます。

おそろしいほど速い。直線も速ければ、コーナーでも速い。ドライバ−が視線をちらりとやったほうへとノーズをさっと向け、4輪駆動システムゆえ、478kWものパワーを最大限に効率よく路面へのグリップ力に使います。ロケットもかくや、という速度感を味わわせてくれます。

もうひとつの特徴は、クルマとドライバ−のインターフェイス。ステアリングホイールへは路面からのフィードバックが繊細に伝わってきますし、左右いずれかに少しでも切れば、車体の動きがスローモーションとでもいうように、手にとるように伝わってきます。

ターボSはかなり硬めの足まわりなのですが、それでも少しはロールする。その車体のロール具合が実によくわかるので、ドライバ−は次の瞬間にどうアクセルペダルを踏んで加速すべきか、一瞬で判断できる。こんなにダイレクトなフィールのクルマは、そうめったにありません。このクルマをどこまで走らせるか。ドライバ−は自分との闘いを強いられます。それこそ、常に高みを目指す人に共通するマッチョイズムの権化でありますね。もちろん街乗りでも充分に楽しめます。その時は、美しいカーブをもったボディの美マッチョぶりを堪能していただければ。

その見た目はというと、前輪と後輪を覆うフェンダーが大きく張り出し、人間でいえば胴にあたるドアのあたりはギュッと絞られています。しかもクーペとともに、カブリオレまで用意されていて、サーキット以外でも、たとえば陽光を浴びながらの海岸線のドライブにだって使えばいいじゃないと思うわけです。その懐の深さにも感心させられます。

価格についても書いておかなくては。『GRヤリスHigh Performance』は456万円~。ただしGRヤリスは、すこしマイルドなエンジンに二輪駆動を組み合わせた「RS」(265万円~)もなかなか良いです。『キャデラック・エスカレード』は1377万円~。『ポルシェ911ターボS』は2892万円~であります。お値段もまた、いい感じにマッチョですなあ。



● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト


慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

こんな記事も読まれています

ホンダ新型「オシャレ軽商用バン」発売! エレガントな進化に早くも反響!? 130万円台で買える改良「N-VAN」が登場
ホンダ新型「オシャレ軽商用バン」発売! エレガントな進化に早くも反響!? 130万円台で買える改良「N-VAN」が登場
くるまのニュース
ヤマハの電アシ「PAS Brace」 日常使いしやすいスポーティコミューターの2024年モデルを発売
ヤマハの電アシ「PAS Brace」 日常使いしやすいスポーティコミューターの2024年モデルを発売
バイクのニュース
JSR、産業革新投資機構によるTOBが成立 2024年夏にも上場廃止
JSR、産業革新投資機構によるTOBが成立 2024年夏にも上場廃止
日刊自動車新聞
ゲレヴァー好きですか?レストアされたレアなオフローダー「メルセデス 300 GD」で冒険の旅へ、150万キロ感動の物語
ゲレヴァー好きですか?レストアされたレアなオフローダー「メルセデス 300 GD」で冒険の旅へ、150万キロ感動の物語
AutoBild Japan
アルピーヌF1、中国GPで新"軽量版"シャシー投入&フロアアップデートも実施……最下位脱出に向け奮闘中
アルピーヌF1、中国GPで新"軽量版"シャシー投入&フロアアップデートも実施……最下位脱出に向け奮闘中
motorsport.com 日本版
【最新スーパースポーツ試乗】世界限定2500台、オフロードも走れるポルシェ911ダカールのオールラウンド性能
【最新スーパースポーツ試乗】世界限定2500台、オフロードも走れるポルシェ911ダカールのオールラウンド性能
カー・アンド・ドライバー
渋滞へトラックが「ノーブレーキ突入」衝撃の映像!? NEXCO緊急の注意喚起が話題に「運転の上手い人はこんなことしません!」
渋滞へトラックが「ノーブレーキ突入」衝撃の映像!? NEXCO緊急の注意喚起が話題に「運転の上手い人はこんなことしません!」
くるまのニュース
ついにランクル250正式発表520万円から!! 争奪戦必至もやっぱり欲しいーー今日ランクルに新たな歴史が始まる
ついにランクル250正式発表520万円から!! 争奪戦必至もやっぱり欲しいーー今日ランクルに新たな歴史が始まる
ベストカーWeb
MINIの小型電動クロスオーバー『エースマン』がデビューへ…北京モーターショー2024
MINIの小型電動クロスオーバー『エースマン』がデビューへ…北京モーターショー2024
レスポンス
バイク「満タン航続距離ランキングトップ10 2024】10位でも500kmは余裕、1位は600kmオーバー!125から大型車までの大混戦に
バイク「満タン航続距離ランキングトップ10 2024】10位でも500kmは余裕、1位は600kmオーバー!125から大型車までの大混戦に
モーサイ
レクサスが「1泊10万円」のキャンプを発表! レクサス新型「GX」の展示&試乗もある非日常体験!? 6月に開催へ
レクサスが「1泊10万円」のキャンプを発表! レクサス新型「GX」の展示&試乗もある非日常体験!? 6月に開催へ
VAGUE
新車もセルフレジ的な販売にするしかない? トヨタのディーラー従業員に「一律1万円支給」に見る新車販売現場の深刻な現状
新車もセルフレジ的な販売にするしかない? トヨタのディーラー従業員に「一律1万円支給」に見る新車販売現場の深刻な現状
WEB CARTOP
レクサスが「LC500」「RC F」を販売終了!? ひっそり姿消していた…? 自然吸気V8・2ドアクーペに何が? 英国から欧州、日本に広がるか
レクサスが「LC500」「RC F」を販売終了!? ひっそり姿消していた…? 自然吸気V8・2ドアクーペに何が? 英国から欧州、日本に広がるか
くるまのニュース
小さくても手抜きなし! 全面進化した小排気量モトクロッサーKTM「65 SX」発売
小さくても手抜きなし! 全面進化した小排気量モトクロッサーKTM「65 SX」発売
バイクのニュース
[カーオーディオ 逸品探究]アルパインの自信作、「Xプレミアムサウンドスピーカー」の実力は…
[カーオーディオ 逸品探究]アルパインの自信作、「Xプレミアムサウンドスピーカー」の実力は…
レスポンス
ジープ グランドチェロキー SRT8は 圧倒的なオーラを放っていた【10年ひと昔の新車】
ジープ グランドチェロキー SRT8は 圧倒的なオーラを放っていた【10年ひと昔の新車】
Webモーターマガジン
スズキ「新型スイフト“セダン”」!? 精悍顔「コンパクトセダン」は意外と現実的! 次期型「ディザイア」なCGがスゴイ
スズキ「新型スイフト“セダン”」!? 精悍顔「コンパクトセダン」は意外と現実的! 次期型「ディザイア」なCGがスゴイ
くるまのニュース
「Try, Hyundai EV試乗会 KONA&IONIQ 5」の追加開催決定! 5月11日(土)から4都府県で順次開催
「Try, Hyundai EV試乗会 KONA&IONIQ 5」の追加開催決定! 5月11日(土)から4都府県で順次開催
カー・アンド・ドライバー

みんなのコメント

1件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

150.1235.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

93.5274.8万円

中古車を検索
ヤリスの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

150.1235.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

93.5274.8万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村