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モータースポーツ復活の鍵は? 現役ドライバー&監督に訊く!(前編)

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モータースポーツ復活の鍵は? 現役ドライバー&監督に訊く!(前編)

モータースポーツの頂点、世界最高峰のレースといえばF1である。かつて日本グランプリは30万人以上の観客数を誇り、2006年には過去最高の36万人以上を記録した。しかし、その後、地上波のテレビ放送がなくなったとか、日本人選手がいなくなったとか、などの理由で徐々に観客数は減り、2017年には過去最低となる13万7000人にまで減少した。2006年に比べると半減である。

しかし2018年、ホンダが「スクーデリア・トロロッソ」にエンジンを供給することで本格的にF1に復帰すると、観客数は若干増え、2018年は16万5000人になった。

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F1 Grand Prix of Abu Dhabiホンダがパワーユニットを供給するレッドブル・レーシング。いっぽう、日本国内のフォーミュラ最高峰である「スーパーフォーミュラ」の富士スピードウェイ開催時の観客数は、2017年が3万4600人、2018年は3万1400人、2019年は2万5500人と減りつづけている。とはいえ、スポーツランドSUGOなど場所によっては増えているところもある。

日本国内でもっとも観客を動員する4輪レースである「SUPER GT」は、毎年8月に富士スピードウェイで開催するレースの場合、2011年は4万3600人、2017年に5万5100人、2018年は6万400人、そして2019年は6万600人と緩やかに増えている。

SUPER GTは日本国外でもレースをおこなう。2019年度はタイのチャーン・インターナショナル・サーキットでおこなわれた。というのが数字で見るモータースポーツ人気のおおおまかな現況である。もっとファンを増やすにはどうすべきか? を、SUPER GTに参戦中の現役ドライバー&監督に訊いた。取材したのは8月3日の「2019 AUTOBACS SUPER GT ROUND5 FUJI GT 500mile RACE」の会場だ。

メーカー合同イベントの必要性まずは、SUPER GT GT500クラス「TEAM MUGEN」の武藤英紀選手(37歳)。

「たしかにモータースポーツに興味を持つ人は減っているように思います。以前は、たとえば、クルマ好きのお父さんに子供が(レースに)連れて行かれ、間近でレースを見ることでモータースポーツに憧れる……というケースがよくありました」

武藤選手は続けて、「今はクルマ好きのお父さん自体が減ってしまったように思います。都市部では駐車場代が高いうえ、バスやタクシーも便利なせいか、クルマに興味がない人が多いようですし……」と話す。では、武藤選手が考えるモータースポーツの人気復活案とは?

「極論をいえば、クルマがないと生活できないぐらい不便にしたらどうか? それは冗談としても、ターゲットを絞って(モータースポーツの面白さを)広めていくのが良いと思いますし、サーキットではより女性が過ごしやすい場所を作るといいと思います。あと、都市部にカート場を作り、(モータースポーツに)触れ合えるよう、レンタルカートに乗る機会を作ればいいと思います」

次に、SUPER GT GT300クラス「Modulo Drago Corse」の大津弘樹選手(25歳)。

「モータースポーツはチケット代が高いうえ、サーキットは都市部から遠い場所にあるケースが多いので交通費もかかります。そのため、とくに若者が(レースに)足を運びにくいと思います」

チケット代や交通費のことを考えると、大津選手もおいそれと同世代の友人をレースへ誘いにくいという。

「Modulo Drago Corse」の道上龍選手(46歳)は「ほかのスポーツ、たとえば野球などに比べて敷居が高いと思います。どこでも(レースは)できるわけではないですし、サーキットにわざわざ行かなくてはなりませんから」と、話す。

道上選手は続けて「なによりクルマに触れる環境を作ることが、モータースポーツのさらなる普及に結び付くと思います。たとえば私たちは、カートスクールを開いたり、『エンジョイ ホンダ』(ホンダのモータースポーツイベント)でモータースポーツを気軽に楽しめたりする機会を作っています。こうしたイベントを、メーカーと一緒になってさらに増やしたいと思っています。また数年前、トヨタなどとともに合同でイベントを開催しましたが、このときのように各メーカーが一緒に(普及活動に)取り組むのが大切では? と、思います」

快適に過ごせる場所がもっと必要SUPER GT GT500クラス「LEXUS TEAM LEMANS WAKO’S」の大嶋和也選手(32歳)はいかに?

「サーキットに来た人への情報が少ないように思います。また、せっかくサーキットに来ても“居場所”がない場合も多い。サーキットは、夏暑く、冬寒く、そして雨も降る……どんな天候になっても快適に過ごせる場所がもっと必要であると思います」

たしかに、サーキットのほとんどは屋外。観戦スタンドも屋根がある程度だ。真夏のサーキットに長時間いるのはたしかに辛い。

「単純にレースのルールを知らない人が多いのも課題かもしれません。でも、実際のレースを見たらハマる人も多いです。僕はそのためのきっかけ作りが必要であると思うし、友人などには(観戦に来ないか)声をかけています」

ホンダ、トヨタ(レクサス)に次いで日産のドライバーにも話を訊いた。SUPER GT GT500クラス「NISMO」のロニー・クインタレッリ選手(40歳)と松田次生選手(40歳)のふたりである。

ロニー・クインタレッリ選手は「(モータースポーツの人気再燃は)難しいと思います。自動車メーカーのみならず、タイヤメーカーも(考えを)変えないといけないと思います」と、述べる。ただし、「SUPER GTはそれなりに高い人気を集めていると思いますよ」とのこと。

「SUPER GTは、ドライバーの努力がわかりやくあらわれるし、レース展開が面白い。2つのカテゴリー(GT300クラス&GT500クラス)のマシンが同時に走るため、サイド・バイ・サイドなどをたくさん見られるのも魅力です。ドライバーもトップクラスのメンバーだしね。もっと多くの人に見て欲しいと思います」

松田次生選手も「SUPER GTは魅力的なレースですよ」と、話す。

「SUPER GTは我々、日本のレーシングドライバーたちが目標とするレース。したがって参戦するドライバーは、“主役”が揃っています。年齢も幅広く、20代の若い子もいれば40代のベテランもいます。世代を超え、一緒に戦っているのは面白いと思いませんか? とくにGT500クラスは、国産3メーカー(トヨタ&日産&ホンダ)がしのぎを削り、タイヤメーカーの争いも熾烈。このアツい争いこそがSUPER GTが盛り上がっている要因だと思います」

以上がSUPER GTに参戦するレーシングドライバーの考えである。現場で見ているからこそ、良い面および悪い面を把握し、それらを踏まえ、より多くの人にモータースポーツを楽しんでほしい……そんな、“強いモータースポーツ愛”がひしひしと伝わってきた。

彼らの話から筆者が思うに、モータースポーツのさらなる普及のためには、自動車メーカーが垣根を超えて協力し合ってイベントやモータースポーツに触れる機会を増やす。そして、サーキットではもう少し観客が快適に過ごせる場所を増やしたり、より多くの情報を提供したりすることが必要だ。そうすれば、都市部から離れたサーキットでも、足を運びたくなるのではないか? と、思った(後編に続く)。

文・吉田由美 写真・安井宏充(Weekend.)

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