この記事をまとめると
■ラリーの必需品でありコ・ドライバーが読み上げるペースノートの実態に迫る
ル・マンを制した世界の荒 聖治がラリーに挑戦! 当日いきなりマシンに乗る「ぶっつけ本番」での気になる結果は?
■選手ごとに異なる距離やコーナー表現や英語・日本語・独自ワードが混ざり合う
■インカーが放送されることの多いラリー中継では注目したい
ラリーの生命線「ペースノート」に注目
全日本ラリー選手権・第8戦「第52回 M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ」が10月17~19日、岐阜県高山市を舞台に開催され、各クラスで激しいバトルが展開された。既報のとおり、国内外で豊富な実績をもつレーシングドライバー、荒 聖治選手がラリーデビューを果たすなど、大きなトピックスをもつ1戦となった。
ちなみに、抜群のドライビングスキルをもつ荒選手がもっとも苦労したのが、ペースノートの作成およびノートリーディングによるドライビングだったのだが、そもそもラリーで使われているペースノートには、どのようなことが書かれているのだろうか?
WRCのインカー映像を見ると、サイドシートに座るコ・ドライバーがインカムを通じて、ドライバーに何か、暗号のような言葉を話しかけているのだが、どのような内容をしゃべっているのだろうか?
というわけで、今回はラリー競技の必需品、ペースノートをクローズアップ。これさえ知っておけば、11月6~9日に愛知県・岐阜県で開催されるWRC第13戦「ラリー・ジャパン」のライブ中継も、5倍、いや10倍ぐらい楽しめるに違いない。
ペースノートの解説をお願いしたのは、LUCK with ROOKIE Racing RALLY Teamの1号車「GR YARIS Rally2」に勝田範彦選手のコ・ドライバーとしてサイドシートに搭乗していた保井隆宏選手で、国内外のラリーシーンで豊富な経験をもつ保井選手が、ペースノートの基礎知識を解説してくれた。
まず、ペースノートに記されている内容としては「距離」、そのコーナーの「向き」、「ベント」、「長さ」、「形状」、そして「注意喚起」などだが、その表現方法はドライバーによってさまざまである。
近年は全日本ラリー選手権に参戦するドライバーの多くが英語のペースノートを採用していることから、コーナーの向きは「L(レフト)/R(ライト)」、ベントは「ファイブ」など数字で表すことが多く、距離は50mの場合、「50(フィフティ)」といったように記され、かつ読み上げられていくのだが、「コーナーの向きについては、英語の場合、レフトやライトを使うことが多いけれど、勝田選手の場合は、エル/アールで読み上げています。
そのほか、距離について、100とか30とかメートルで表していますが、コーナーが連続するような短い距離の場合は“ソク”や“~(カラ)”などの補助語を使用しています。ステアリングを左から右に連続して切るのか、それとも左から1回、正面に戻して右に切るのか、少しの違いですが、距離によってドライバーの操作は違いますよね。このあたりはドライバーの“感覚距離”なので、それぞれに表現方法が異なります」と保井選手。
さらに具体的には、「勝田選手の場合、“クイック”が短くて、その次に“ソク”、その次に長い距離として“~(カラ)”といったように使いわけています。この距離の補助語はドライバーによって異なっていて“アンド”や“イントゥ”、“を使う人もいます」とのことだ。
そのほか、「コーナーの形状を表す言葉としては長いコーナーの場合は“ベリーロング”、奥できつくなっているコーナーは“タイトゥン”、あとはスピードをコントロールするためのワードもあって、勝田選手の場合、“スロー”、その次に遅いのが“スロースロー”、あとは“ブレーキ”、次に“ヤバイ”という言葉も使っています。コーナーのベントと同じように補助語も何段階にわかれていて、たとえばカットの場合は“ちょいカット”、“カット”、“大カット”などで表現しています」と保井選手は解説する。
ペースノートを作成する際の注意点について「ドライバーによって異なるので、固定観念にとらわれずに、そのドライバーに染まるようにしています。ベントの「3」も、距離の「100」も、人によって異なるので、その人のスケールをレッキで感じ取って擦り合わせるようにしています」と保井選手は語る。
ちなみに勝田選手のペースノートの特徴としては、「英語のノートとしてはオーソドックスな感じだと思いますが、“ヤバイ”とか“葉っぱ”とか日本語がちょこちょこ入ってきます。やはり、日本語のほうがパッと耳に入ってきてイメージしやすいですからね。可能な限りセンテンスを短くするようにしていますが、危険な場所を落とし込むための補助語も多いので、情報量の多いペースノートだと思います」とのことである。
選手が最良のパフォーマンスを発揮すべく創意工夫を凝らしている
一方、全日本ラリー選手権には多くの日本人ドライバーが参戦していることから、日本語のペースノートを作成。コーナーの向きについては「み/ひ」と表記し、「みぎ/ひだり」とリーディングしているが、なかにはユニークな補助語を使用しているドライバーも少なくはない。
たとえば59号車「SYE YARIS HEV」でJN-5クラスに参戦している清水和夫選手はレース経験が豊富なだけに、コ・ドライバーとしてコンビを組んでいる山本磨美選手は、清水選手のペースノートの特徴について「過去には同じコーナーが連続するようなところで、鈴鹿の“スプーン”といった言葉もありました。でも、ちょっとわかりづらいということで、最近は“コの字”を使用しています」と解説する。
さらに「今年のラリー飛鳥では、ゆるい右・左のコーナーを表す補助語として“レーンチェンジ”という言葉がありました。普通は“右3、左3”とか、特徴を付ける感じでもないんですけど、いきなりレッキ中にレーンチェンジといわれたのでびっくりしました」と付け加える。
そのほか、42号車「ミツバWMDLマジカル冷機スイフト」でJN-4クラスに参戦していた高橋悟志選手のコ・ドライバー、箕作裕子選手もユニークなペースノートに出会ったことがあるようで、「全日本ラリーでコンビを組んでいる高橋選手は、きちんとしたペースノートなんですけど、うちの旦那(箕作有俊選手)の補助語は変わっていて、“ここからウネウネ”とか、“くねくね”とか、“この先うねってる”とか“こわい”とかをよく使います。クレストでも “こわいクレスト”と“行けるクレスト”の2段階で表現。普通は“コーション”といった言葉を使うんですけど、“こわい”といったほうが思い出すんでしょうね。逆にいえば、日本語がわかる人なら景色をイメージしやすいペースノートになっていると思います」と語る。
ちなみに、2025年の全日本ラリー選手権でJN-1クラスのチャンピオンに輝いたヘイッキ・コバライネン選手は自身のペースノートについて、「日本のドライバーはコーナーの大きさを数字で表すけれど、僕は“スロー”や“ファースト”、“ミディアム”など言葉で表している。数字で表すのは距離だけ。これはフィンランドのスタイルで、向こうで学んだペースノートシステム」と解説。
さらに、WRCで活躍する勝田貴元選手によれば「マシンの絶対的なスピードが速くなると、コ・ドライバーのリーディングタイミングも、聞いているドライバーの処理もギリギリになってくるので、ペースノートの情報は可能な限り減らしたい。そのため、ワードを減らしたり、それまでふたつの言葉で表現していたものをひとつの言葉で表現したりと常に改善しています」とのことで、ペースノートも絶えず進化を続けているようだ。
このようにペースノートの内容は千差万別であり、ドライバーによって異なるものだが、いずれにしても各ドライバーは、コ・ドライバーのリーディングに合わせて、ブラインドコーナーでも果敢なアタックを披露。ラリー・ジャパンのライブ中継でもインカー映像が流れるだけに、ペースノートのリーディングを聞きながら、トップドライバーのアクションをチェックしたいものだ。
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みんなのコメント
コドライバーは齊田美早子さん。女性です。
この方がとにかく面白い。
巻き舌まで多用しながらナビゲートしていく。
ぶつかる時でも、一切悲鳴は上げない。