2011年6月、アウディのフラッグシップモデル「A8L」に、FSI化された新開発の6.3L W12エンジン搭載モデルが設定された。2010年12月にフルモデルチェンジされて3代目へと進化した「A8/A8L」は、美しいスタイリングと先進的なテクノロジーで「新しい価値のラクジュアリーセダン」を謳って注目されたが、真のフラッグシップモデルとして12気筒モデルの登場が待たれていた。そんな中で登場したA8 L W12 クワトロはどんなモデルだったのか。ここでは上陸後間もなく行われた試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年9月号より)
LボディにW型12気筒エンジンを搭載したフラッグシップモデル
保守的と言われる日本の高級車市場だが、とくにこのクラスになると、その傾向はさらに顕著になる。メルセデス・ベンツ、BMWの牙城は堅牢で、人気上昇中のアウディをもってしても、そう簡単に崩すことはできない。しかし、アウディは手を緩めることなく進化、クワトロや軽量化技術、FSIエンジンなどによる先進技術で、これまでの価値観や常識を覆そうしている。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
実際、過去のしがらみがない新興国の高級車市場などでは、アウディのシェアは高く、日本市場でも変わり始めると状況が一変する可能性は高い。
そんな市場にアウディが満を持して投入したのがA8L W12。Lボディに最新のW型12気筒エンジンを搭載したフラッグシップモデルだ。
W型12気筒エンジンは3気筒を4つ組み合わせたユニークなレイアウトが特徴で、極めてコンパクトで、単体重量は247kgと軽量でもある。同じ12気筒エンジンであっても、メルセデス・ベンツやBMWなどのV型との違いは明確だ。しかも、すでに定評のあるこのエンジンは今回新たに開発し直されている。ボアを84mmから86mmに拡大して6298ccに排気量アップ。さらにFSI化することで、より効率の良い燃焼を実現しているのだ。
組み合わされるトランスミッションは8速ATで、ここでも効率向上が期待できる。従来の6速ATと同等の重量で多段化が実現できれば、当然効率は上がることになり、しかもスムーズで快適な乗り味を生み出す。
そのパワーを伝える駆動方式はもちろん4WD。通常走行時の前後駆動力配分を40:60とした新世代クワトロシステムで、後輪に大きなトルクを伝えることによりダイナミックな走りを実現しながら、走行状況にあわせて4輪に効率よくトルクを配分する。これもアウディの大きな強みだ。
沸き起こるトルクとパワー、軽々と高速巡航に入る
3120mmのホイールベースとなるLボディは、全長5275mmとやはり大きい。ここに12気筒エンジンやクワトロシステムをはじめとした先進メカを搭載しながら、車重が2080kgに抑えられているのは、アウディの軽量化技術による大きな成果だ。
運転席に乗り込むと、シートに座った瞬間に、贅を尽くした空間に包まれる。入念に磨き上げられたウッドパネルやレザーは、高品質で知られるアウディの中にあっても特別なもの。フラッグシップモデルならではの、最上の仕上げを感じさせる。
ボディの大きさからすると、とても小さく見えるエンジンだが、そのパワー/トルクは凄まじく、いとも簡単に軽々とスピードを乗せる。しかし、エンジンは唸りをあげるでもなく、加速中でも室内は静かでいたって平和。強烈な加速Gを感じることもなく、あっと言う間に高速巡航に入る。存在感をことさら主張しないのも、このクルマに合っている。
ワインディングを攻めるなんて、このクルマには似合わないと思われるだろうが、その気になれば、俊敏な走りも見せる。リアにスポーツディファレンシャルを標準装備し、安定したトラクション性能とハンドリング性能を発揮する。まるでコンパクトなスポーツセダンに乗ったような感覚だ。
左右独立のリアシートは広大で快適そのものだ。電動リクライニング、ヒーター、ベンチレーションに加え、マッサージ機能、バング&オルフセンのオーディオ、エンターテイメントシステムも備わるなど、まさに至れり尽くせり。とくに助手席の後ろはフットレストも用意される特別席だ。
エアサスペンションのセッティングは、アウディドライブセレクトで変更することができる。基本的にはスピードを上げるほどに安定感が増す高速マシンという性格だが、このドライブセレクトによって全域で快適性が保たれる。
パドルシフトや19インチタイヤを装備し、アクティブクルーズコントロール、アクティブヘッドライトをはじめとしたアシスト機能も搭載するなど、ドライバーズカーとしても運転を楽しめるクルマに仕上がっているが、後席の快適性こそやはり最大の魅力だろう。
ちなみに、10・15モード燃費は7.0km/L。今回300kmほど走った実燃費は7.2km/Lであったから、このクラスとしては極めて優秀と言っていいだろう(メルセデス・ベンツS600ロングの10・15モード燃費は5.9km/L、BMW760Liは6.3km/L)。アウディは歴史を積み上げながら、伝統の殻を破ろうとしている。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘)
アウディA8 L W12 クワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:5275×1950×1465mm
●ホイールベース:3120mm
●車両重量:2180kg
●エンジン:W12DOHC
●排気量:6298cc
●最高出力:368kW(500ps)/6200rpm
●最大トルク:625Nm(63.7kgm)/4750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:2061万円(2011年当時)
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