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将来のクルマ好きを増やしカートへの新たな入口に。TGRが安価な入門カート『GRカート』を開発へ

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将来のクルマ好きを増やしカートへの新たな入口に。TGRが安価な入門カート『GRカート』を開発へ

 5月30日、TOYOTA GAZOO Racingは、ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE第3戦『富士24時間レース』が開催されている富士スピードウェイで、モータースポーツを将来に渡って持続可能にするため、将来のクルマ好きを増やすため、そしてモータースポーツへの新たな入口として、安価な入門レーシングカート『GRカート』の開発をスタートさせたと発表した。商品化を大いに期待したいカートとなりそうだ。


●持続可能なモータースポーツ界の未来のために

2025年S耐初登場のTGRR GR Corolla H2 conceptは今季もさまざまなトライを実施。液体水素ポンプに超電導技術の活用も目指す

 TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、スーパー耐久参戦を通じて『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』、そして人材育成やカーボンニュートラルへの取り組みを進めている。スーパー耐久では水素エンジン搭載のGRカローラの投入や、GR86を使ってのカーボンニュートラル(CN)燃料のトライなどが行われており、2023年には、この新たなエネルギーを体験してもらうツールとして、水素、CN燃料を使った2種類のレーシングカートをお披露目し、イベント等で活用されてきた。

 今回TGRから発表された『GRカート』は、そのうちのCN燃料を使ったものを活かしたカートで、ガソリンとCN燃料を両方使える仕様となるが、水素仕様も継続して開発が進められているという。実際の商品化が実現した場合、世界的な自動車メーカーがレーシングカートを開発するという今まであまり例がないケースとなりそう。

 現在、まだGRカートは開発中であり、販売時期や価格、スペック等はまだ未発表だが、このGRカート開発の意義について、GR車両開発部の伊東直昭主査は「将来への種蒔きと言えます」と説明した。

 モータースポーツが未来に向けても持続可能であること、そして将来のクルマ好きを増やすためには、免許を取得する前の子どもたちに向け、メーカーが動いた“種蒔き”が必要だと伊東主査は説明した。とかく最近はスマートフォンの普及もあり、ゲームなどデジタルに興味が湧きがちだが、クルマ業界には“リアル”が必要だ。ドライブする楽しさは、“リアル”でなければ分からない。

 そしてTOYOTA GAZOO Racingは、2024年からF1にも参画している。カートからジュニアフォーミュラとモータースポーツにおける頂点への道筋が整えられつつあるが、「そこに行くためにはどうすれば良いのか」と夢を見てくれる子どもたちに向け「GRは道を示してあげられる存在でありたいと思っています」と伊東主査は語った。また、プロドライバーを夢見るだけでなく、カートに触れることで自動車業界の人材や、将来のクルマ好きを生むことも期待しているという。


●レーシングカートが「なぜ普及しないのか」を追求

 レーシングカートはモータースポーツの原点であり、ほとんどのプロドライバーがレーシングカートからそのキャリアをスタートさせる。ただ、実は近年レーシングカート界では競技人口の減少が叫ばれており、四輪レース界でもその声は多く聞かれていた。伊東主査は資料も使いつつ現状を説明し、1995年前後はJAFカートライセンスの取得数は9000以上だったが、現在はピークの半分になっていると語った。

 カートは乗れば誰しも楽しさを感じることができるものだが、TGRでは「なぜ普及しないのか」の原因を挙げ、これを追求した。「いちばんはコストです。また、輸送する手段がない不便さがある。さらにどう始めれば良いのか分からないなど、さまざまな理由が挙げられます」と伊東主査は説明した。

 最大の要因でもあるコストについては、近年のレーシングカートの車両市場価格は円安もあり、150万円ほどであると指摘する。もちろんレースに出場すれば、消耗品やタイヤ代などのコストが積み重なり、はじめから数百万円という金額がかかる。

「現在の日本の平均所得を考えると、150万円のカートを子どもに買ってあげられる世帯がそうないのはすぐ理解ができます。現状、レーシングカートをやっている子どもたちは、富裕層に偏っている状況です。これを少しでも広げていきたい……というのがGRカートの狙いです」

 ではいかにしてコストを下げるか。近年のカートは高性能化しているが、GRカートは良いところは継承しつつ、徹底してシンプルで親しみやすい設計に。また低いスピードでもドライビングを楽しめ、学ぶことができることをコンセプトとし、パイプ業界で最も安い規格材を使い、トヨタのロボット溶接を導入。安い素材でも楽しいと思える性能を、クルマの解析技術で実現することを目指して開発しているという。


●カートのネガティブな要素を多岐に渡って解決。門戸を広げる一助になるか

 また、せっかくカートを購入しても、サーキットまで運ぶ手間もある。一般的にはショップに任せたり、ハイエースのようなバンやトラックを購入して運ばなければならないが、この点もGRカートはこだわった。ファミリーカーの代表車種であるノア/ヴォクシーの後方に積むことができるサイズで設計された。ノア/ヴォクシーといった車種なら、ふだん使いもできる。

 さらに、大人ひとりでもスタンドに載せ、クルマに積み込めるようなスタンドやラダーもあわせて開発中だ。また初心者向けに、タイヤを含めた全体をカバーできるフルカバーも開発中。「『レンタルカートとして使いたい』といったニーズにも応えられるようにしています」という。

 その他にも、チェーン汚れを生まないベルトドライブの採用、油脂類を抜かないままでも自宅で立てておけるスタンドの開発など、“不便”、“面倒”、“大変”といったカートのネガティブな要素を30項目以上に渡って解決することを目指す。大人も子どもも乗れるポジション調整機構を採用することで、親と子どもが一緒に楽しめることをコンセプトとした。

 整備も、子どもたち自らが工具を持って取り組めるよう、安価な専用工具をメーカーとともに検討中。「『自分が整備したマシンで走った』ことが子どもたちの自信に繋がれば、子どもたちの将来を変えることができると思っています」という。

 今回企画されたGRカートは、既存のレーシングカート界と“争う”ものではなく、「あくまでも入門で、『今ないところ』をやるということです。モータースポーツが将来持続可能になるための、子どもたちとファミリー層への施策です。これに触れた子どもたちが、自動車業界の人材や、将来のクルマ好きに繋がれば、という目的でやっています」と伊東主査は説明した。

 現状を見ると、例えばカートコースでレンタルカートに乗ったり、町中で行われるカート体験などで子どもたちがレーシングカートに乗ることを夢見ても、最初のハードルは非常に高い。これはTGRが指摘するとおりだ。このGRカートの開発が成功し、「多少の無理をすればなんとか購入できる」金額でリリースされ、まずは入門することができれば、モータースポーツ界の裾野は大きく広がることになる。

 近年、TGRはモータースポーツ界の“困りごと”に対し、さまざまな解決のためのトライをみせている。このGRカートも、モータースポーツ界がもつ課題の解決に繋がるか。続報を心待ちにしたいところだ。

[オートスポーツweb 2025年05月30日]

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