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【なぜ失敗作の烙印が?】BMW i8 惜別の辞 前編

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【なぜ失敗作の烙印が?】BMW i8 惜別の辞 前編

唯一無二の存在

初めてBMW i8を運転したのは2014年のことだった。

【画像】いま見ても新鮮? BMW i8【ディテール】 全52枚

初めてのドライブを終え、少しでもこのクルマに対抗し得るモデルを考えてみたが、「時代に先行し過ぎた実験的なモデルというだけでも唯一無二の存在」だという結論に落ち着いている。

そして、「他メーカーも追随するとともに、この完ぺきとは言えないi8を上回るモデルを創り出すかも知れないが、現時点ではこのクルマの独壇場であり、大成功は間違いないだろう」と記事にしたのだ。

だが、わたしは間違っていた。

他にi8のようなモデルが登場することはなく、いまもこのクルマは唯一無二の存在であり続けている。

i8の失敗などあり得ないと思っていたが、事実は残酷であり、BMWが後継モデルを登場させないことが何よりの証拠と言えるだろう。i8は登録後1年でその価値を半分失うのだ。

ある1台を深く愛していると思っていても、次々と興味深いクルマが登場する自動車世界では、ひとつのモデルが姿を消したからといってそれほど悲しむことなどないが、少なくとも個人的にはi8に関してはそうではない。

沸きあがるアドレナリン

長期テストを担当したクルマのなかで、もっとも別れを寂しく感じさせたのがマクラーレン720Sだったことは確かだが、次点がi8であり、マクラーレンとの差は決して大きくなかった。

i8との別れを寂しく思うのにはふたつの理由がある。

まずは何といってもこのクルマのパフォーマンスだ。

大陸横断のような冒険行から近所の買い出しまで、このクルマはどんなドライブも特別なものにしてくれるのであり、朝ガレージに停まっているi8を目にするだけでアドレナリンが沸き上がって来る。

スタイリングの見事さはいまも変わらず、その斬新なボディラインも色褪せることがない。

そして、このクルマのパフォーマンスは常に不当に評価されてきたと言えるだろう。

限界でのステアリング特性がオーバーステアであれアンダーステアであれ、このクルマはそうしたことを評価するようなモデルではないのだから大した問題だとは思えない。

適切なギア比を与えられた正確なステアリングとともに、i8には素晴らしく軽快な乗り心地が備わっているという事実のほうがより重要だろう。

見事なバランス

さらに、このクルマはパワートレインも素晴らしい。

見事なレスポンスとサウンドを備えており、もしi8のエンジン音を人工的だと批判するのであれば、他の現行モデルを見てみれば良い。

いまや多くのモデルが何らかの形でサウンドコントロールシステムを導入しているのだから、個人的にはまったく問題だとは思わない。

だが、i8のドライビングで何よりも素晴らしいのは、このクルマのシャシーとパワートレインとの見事なマッチングだ。

まったくオーバーパワーなど感じさせないこのクルマであれば、つねにブレーキングに気をとられることなく、ドライビングのリズムに集中することが出来る。

一方でアンダーパワーだと感じさせられることもない。

現代のクルマとは思えないほど細身のタイヤが、i8のドライビングを素晴らしく感じさせるもうひとつの理由であり、まさに見事なバランスだと言える。

だが、i8との別れを惜しむもうひとつの理由はまったく別のところにあるのだ。

感じる知性

このクルマが感じさせる知性がその理由であり、BMWはi8のために時代を先取りしてみせた。

強固なボディがこのクルマを素晴らしいモデルにするとともに、驚異的な軽量化によってドライビング性能を引き上げ、スーパーカーだというのに14.0km/L台に達する燃費性能まで確保することに成功している。

だが、このクルマに対するひとびとの評価は、「6桁ポンドのプライスタグを掲げ、ミニの3気筒エンジンを積んだBMWなど冗談でしかない」というものだったのだ。

これほど大胆なクルマを創り出したBMWを尊敬するとともに、彼らの勇気はもっと高く評価されるべきだったと思っている。

アルミニウム製シャシーとカーボン製ボディを組み合わせたこのミッドシップスーパーカーの終焉を決議したBMWの取締役会は、深いため息に包まれたに違いない。

ロードスターを除けば、おそらく同じプラットフォームを共有する派生モデルを創り出すことなど不可能だと知りながら、BMWでは莫大なコストを掛けてi8を開発している。

後編に続く。

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