シャシーの完全再設計で名車の弱点を克服!アウディ「スポーツクワトロ」進化系の本気度
ドイツのミュンヘンを拠点とするHSR Manufaktur(HSR = Homologation Specials Reimagined)は、ハイエンド自動車マニュファクチャーのレストモッドメーカーだ。同社がアウディ「スポーツクワトロ」をオマージュとした「Type 859」を発表した。このモデルは、標準的なレストモッドや単純なレストア車両ではない。かつてグループBラリーを席巻した名車をベースとしている。ところが「Type 859」は、弱点だったシャシーの再設計から行われた「グラウンドアップ・エンジニアリングの進化系」として注目を浴びているという。
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伝説のグループBマシン「スポーツクワトロ」が抱えた宿命
Type 859の真価を知るには、オリジナルモデルの背景を知っておきたい。
1980年代前半のWRC(世界ラリー選手権)を熱狂させたカテゴリーが「グループB」だ。連続12カ月間に200台を生産すれば参戦資格を取得できる。この極端な規定により、各メーカーはパイプフレームにモンスターエンジンを積んだバケモノマシンを次々と闘いの場に送り込んで来た。
当時、アウディはフルタイム4WD「クワトロ」を武器にラリー界を席巻していた。しかし、強力なライバルたちが立ちはだかる。ランチア「ラリー037」のようなミッドシップ軽量マシンだ。さらにプジョー「205ターボ16」など、「ミッドシップ+4WD」という理想的なマシンも現れた。
ライバルに対抗するため、アウディは1984年に「スポーツクワトロ」を投入する。俊敏な旋回性能を極限まで高めるべく、強引な手段に出た。ベースとなるアウディ「クーペB2」のホイールベースを320mmも短縮したのだ。
しかし、この極端な短縮化が致命的な弱点を生む。重い直列5気筒エンジンは、フロントアクスルより前方にオーバーハングしたままだ。これにより極度のフロントヘビー状態に陥った。結果として高速域での直進安定性を大きく損なう。非常に操縦の難しいじゃじゃ馬マシンとなったのだ。
Type 859は、この歴史的名車へのオマージュ作品だ。当時のアウディが実現できなかった「理想のジオメトリー」を現代の技術で解決するプロジェクトとして立ち上がったものだ。ちなみに「Type 859」というネーミングは、当時のアウディにおけるスポーツ・クワトロ開発コード名にちなんで命名されていると言う。
高速安定性を克服するシャシーの完全再設計
プロジェクトの最大の特徴は、再設計されたシャシー構造にある。オリジナルのスポーツクワトロが抱えた高速時の不安定さ。これを根本から解消するため、ホイールベースを延長した。
ベースはクーペB2のシャシーだ。これを320mm短縮したうえで、フロントアクスルを10~15cm前方へ移動。さらにリアアクスルを10cm後方へとずらしている。この思い切った変更により、重量配分と高速安定性が劇的に向上した。
外装パネルは航空宇宙グレードのカーボンファイバーで製作されている。片側65mm(計130mm)のワイド化を果たした。それでも車両重量は1200kg未満に抑え込まれている。
現行の直5横置きエンジンをあえて「縦置き」へ変換する変態的アプローチ
心臓部にはアウディ製「DAZA」2.5リッター直列5気筒ターボエンジンを選んだ。アウディのモータースポーツの伝統に敬意を表した選択だ。
驚くべきは、本来横置きのDAZAエンジンを「縦置き」に変換して搭載している点だ。オリジナルのスポーツクワトロの構造に合わせた変態的とも言えるアプローチを見せる。
このパワーユニットは鍛造パーツなどでリビルドされている。ドライビングモードに応じて500~600HPという強烈なパワーを発揮する。さらにモータースポーツグレードのドライサンプ潤滑システムを組み込んだ。サーキットでの極限の横Gに対応しつつ、エンジンの重心を下げている。
駆動系は「デジタルを排除した純粋なメカニカルグリップ」重視で、世界84台限定8000万円也!
駆動系は「アナログな機械的対話」に特化している。現代のデジタル制御を嫌い、ドライバーの感覚を研ぎ澄ます仕掛けだ。
トランスミッションには、アウディ「S4」(B8.5型)用のマニュアルギアボックス(0B4)を採用。これに美しいゲート式のシフターを組み合わせた。
さらに、電子制御式のAWDシステムを排除している。トルセンT-3センターデフによる機械式のパーマネントAWDシステムを構築した。リアにはメカニカルLSDを搭載している。これにより、極限状態でもドライバーの操作にダイレクトに反応してくれるだけでなく、圧倒的なメカニカルグリップを実現した。
生産台数は世界限定84台のみ。アウディがWRCでダブルタイトルを獲得した「1984年」にちなんだ数字だ。ベース価格は50万ユーロ(約8000万円)に設定された。
単なる懐古主義にとどまらない。根本的なエンジニアリングの進化によって名車の弱点すらも克服した。純粋なドライビングの喜びを渇望するエンスージアストにとって、究極の選択肢となるはずだ。
■スペック
HSR Manufaktur「Type 859」
◇ベースシャシー:アウディ「クーペB2」(修復・短縮・補強済み) ◇エンジン:アウディ DAZA 2.5L TFSI 5気筒(縦置き変換・ドライサンプ化) ◇最高出力:500~600HP(ドライビングモードで選択可能) ◇トランスミッション:アウディS4(B8.5型)用マニュアルギアボックス(ゲート式) ◇駆動方式:機械式パーマネントAWD(トルセンT-3センターデフ+リア機械式LSD) ◇ボディパネル:航空宇宙グレード・カーボンファイバー ◇目標車両重量:1200kg未満 ◇生産台数:世界限定84台 ◇ベース価格:50万ユーロ(約8000万円 ※カスタマイズ、税金、配送料を除く)
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みんなのコメント
スポーツクワトロにしろデルタS4にしろ
勝つための必然から生まれた異形は
それはそれである種の機能美だと思うんだが