ピレリが2025年以降もF1のタイヤサプライヤーを継続して務めることが決まった。契約期限は2027年までで、2028年に延長することも可能とされている。
このピレリと次期タイヤサプライヤーの座を争ったのがブリヂストンだった。ブリヂストンは1997年から2010年にかけてF1に参戦。最初はグッドイヤーと、その後はミシュランと激しいタイヤ戦争を繰り広げた。その間、ミカ・ハッキネン+マクラーレンのタイトル獲得をサポートし、ミハエル・シューマッハー+フェラーリの黄金期も足元から支えた。単独でもタイヤサプライヤーを務めた時期もあった。
■F1復帰が叶わなかったブリヂストン……2028年以降のタイヤサプライヤー入札に参加する可能性は?「様々な可能性を継続検討する」としつつも、F1再挑戦は明言せず
今回の交渉に際し、ブリヂストンはタイヤの技術面はもちろん、商業面でもかなりの好条件をF1側に提示したのではないかと言われる。それもあってか、F1がピレリとの契約延長を発表したプレスリリースに寄せられたコメントには、F1のCEOであるステファノ・ドメニカリからブリヂストンへ向けた賛辞が語られていた。
ブリヂストンは2010年限りでF1から撤退した後、2015年にはスーパーフォーミュラへのタイヤ供給も終了。モータースポーツ活動を、著しく縮小させる傾向にあった。しかし最近ではスーパー耐久のオフィシャルタイヤサプライヤーとなり、そして今回はF1復帰を目指した。モータスポーツ活動を復活させる、そんな傾向にある。
この動きについて、2010年までのブリヂストンのF1活動を率いていた浜島裕英氏は、「ぜひ(契約を)取って欲しかった」と語った。
「技術を発展させるという意味でも、F1の世界は非常に有益だったんです」
浜島氏はそう語る。
「以前F1をやっていた時から、もう10年以上経っているので状況は変わっているかもしれませんけど、あれだけF1に特化している人たち、1年365日24時間F1のことだけ考えて仕事をしているというプロ中のプロたちと、タイヤメーカーのサラリーマンが付き合うと、触発されて更に勉強しなければいけないという意識を持つようになります。そういう部分でも向上するんです」
「ワンメイクだとしても、全20台に23戦にわたって均質なタイヤを供給するという技術を得られれば、ブリヂストンの品質を上げることにも繋がると思います。しかもそれを、最新技術を用いて、F1というトップカテゴリーに供給していくわけですから、権利を取れていたらよかったなと思います」
■F1をやることで、市販タイヤにも応用できる
かつて自身が所属し、その全精力をかけてF1を戦ったメーカーがF1に”戻ろうとした”ことに、嬉しい気持ちはあるか? そう尋ねると、浜島氏は次のように語った。
「一時ブリヂストンは、一切F1はやりませんって宣言していました。でも最近では、モータースポーツをやることは大事だと言っていますから、それは良いことじゃないかと思います」
「極限の世界で使われるタイヤをエンジニアが味わえるというのは、非常に有益です。そして僕らがやっていた時もそうだったんですが、F1をやると、特に欧州でリクルート時の人材のクオリティが上がるんです。F1のステータスは、欧州ではものすごく高いですからね。その上、市販車のOEMタイヤに使っていただける機会が増えるようになり、PRなどにF1を足元から支えているという事実を訴求できる。そういう部分も、タイヤメーカーとして美味しいんじゃないかと思います」
F1をやることによって技術力が上がる……その技術は市販車用タイヤにどう活かされるものなのか? 浜島氏はこれについて、次のように説明する。
「レース用タイヤが目指すところは、グリップが良くて、摩耗しないということです。それは、相反する性能です。モータースポーツでは、この二律背反を解くために技術力を上げるんです。そうすれば、使い始めから使い終わりまで性能落差の小さいタイヤを作ることになり、性能優位性が出てきます。」
そう浜島氏は解説する。
「二律背反を解決する技術を、以前はF1だけに使っていたように見えていましたが、実はエコタイヤの基礎技術力向上に繋がっていました。そういう副産物が、実は結構あります。クルマの重量も出力も違うので、そのものズバリというモノはありませんが、ゴムの技術などは二律背反を達成するために開発するので、応用技術として市販車に転用できると思います」
■次回の入札にも参加してほしい
今回はF1タイヤサプライヤーとしての権利を取ることができなかったブリヂストン。しかし2028年、もしくは2029年からの権利を取るべく、再び挑戦して欲しいと浜島氏は語る。
「ぜひ挑戦してほしいですね」
実は2025年からの権利を取ってしまっていたら、まず2025年向けのタイヤを開発し、その後テクニカルレギュレーションが大きく変わる2026年用のタイヤを開発し直さなければいけなかった。逆に2028年以降の契約となれば、1年限りでレギュレーション大変更を迎えるということは少ないだろう。
「本当は、次の機会の方が狙い目なんじゃないかと思います。ぜひ次の入札にも参加して、権利を勝ち取ってほしいと思います」
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