アメリカ市場向けに664台販売されたうちの1台
2023年8月17日~19日、RMサザビーズがアメリカモントレーで開催したオークションにおいてポルシェ「カレラGT」が出品された。今回はいくらで落札されたのか、同車について振り返りながらお伝えしよう。
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ボディパネルはカーボンコンポジット素材
スタイルはそれぞれに様変わりしてきたものの、現在でも世界各国で開催されるモーターショー。印象に残るモデルが多く発表されたなど、誰にでも忘れられないモーターショーというものがあると思うが、個人的にそのひとつとして挙げたいのは、2003年のジュネーブ・ショーだ。
ランボルギーニがV型10気筒エンジンを搭載して完成させたニューモデルの「ガヤルド」や、フェラーリの「チャレンジ・ストラダーレ」をはじめ、さまざまなスーパースポーツがお披露目された。
その中でも特筆すべき存在だったのが、ポルシェが2000年のパリ・サロンでコンセプトカーを発表し、2003年のジュネーブ・ショーでついに生産型を世界初公開するに至ったカレラGTである。そのエンジニアリングはまさに驚異の世界だった。
メカニズムの見どころに触れていけば、いくらでも話は進められるカレラGTだが、やはり個人的に最も興味を抱いたのは、センターモノコックのみならず、リアのサブフレームまでをも軽量なカーボン素材でシェル状に成型し、ここに搭載されることになったパワーユニットだった。
68度というバンク角を持つ5.7LのV型10気筒DOHC 40バルブ。これはそもそも1999年シーズンのル・マン24時間レースのために、ポルシェが開発を進めてきた5.5L仕様のV型10気筒エンジンがベースであり、FIAによるレギュレーション変更で、いわゆる行き場を失ったエンジンを、実用域でのトルク特性を魅力的なものとするためにボアアップして排気量を拡大している。カレラGT用に進化させたものというプロセスで完成されたエンジンだ。
2分割で着脱可能なルーフ
それだけにエンジン内部の構成部品もレーシングカーそのもののプロフィールだ。チタン製のコンロッドに軽合金製のシリンダーヘッドとクランクケースを持ち、吸気側には可変バルブタイミングシステムも採用している。シリンダー内部にはニカシルコーティングを施し、注目の最高出力はジュネーブ・ショーでの発表時点で612ps、最高回転数は8400rpmに設定された。このエンジンにはポルシェ製のカーボンセラミックコンポジットクラッチを備えた6速MTを組み合わせ、パワーは後輪に伝えられる。
ボディデザインでは、かつての「917」などポルシェ製コンペティションモデルの姿を彷彿させるディテールも盛り込まれたカレラGTは、もちろんエアロダイナミクスにおいても高性能なものであった。ボディパネルはやはりカーボンコンポジット素材によるもので、車重は1380kgと発表。
2分割で着脱可能なルーフはフロントのラゲッジ・コンパートメントに収納することができた。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式で、ダンパーとサスペンションアームはプッシュロッドで連結される。ブレーキはPCCB(ポルシェセラミックコンポジットブレーキ)。フロントに19インチ、リアには20インチ径のマグネシウム合金製センターロックホイールを装着する。
走行距離は約8800キロ
今回出品されたカレラGTは、RMサザビーズの調べによれば、1270台しか生産されなかった(当初の生産計画は1500台だった)カレラGTの中で、アメリカ市場向けとされた664台のうちの1台。実際に販売されたのは2005年2月のことだ。
コンディションの素晴らしさは画像からも十分に理解できるところだが、これは新車時からのマイレージが、わずかに5500マイル(約8800km)未満であることが大きな理由とされる。オークション直前の2023年8月にはポルシェ・サービス・センター・アトランタによるメンテナンスも受けており、オーナーズマニュアル一式や純正のラゲッジバッグセットも付属していた。
テコラッタ・カラーのオールレザー・インテリアに、GTシルバーメタリックという、典型的なカレラGTのカラーリングで仕上げられている。出品車両には、ル・マン24時間レースを1977年、1983年、1994年の3回にわたって制覇するなど、華々しいレース・キャリアをポルシェとともに築いたアメリカ人レーサー、ハーレイ・ヘイウッドのオートグラフも入れられている。149万ドル(邦貨換算約2億1605万円)という落札価格も妥当、といったところなのだろうか。
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