世界のスーパーカーに比肩する存在感
「クルマの憧れを復活させる」。そんなメッセージとともに平成18(2006)年10月に富山県の『光岡自動車』社員が全力投球をしてデビューにこぎつけたミッドシップのスポーツカーが「オロチ」だ。
光岡自動車は、既存のクルマをベースとしてハンドメイドで仕上げるカスタマイズカーや「おくりぐるま」と名付けられた葬祭車両など特殊車両の生産、販売が主力だが、平成6(1994)年に発表したロータス・スーパーセブンのレプリカ車「ゼロワン」が組み立て車と認可されたため、国産乗用車メーカーとしての顔を持つ。平成18年に登場したオロチは光岡自動車2番目のオリジナルカーである。
オロチが一般に公開されたのは平成13(2001)年の東京モーターショー。当初は初代のNSXをベースに特装された完全なるショーカーで、市販の予定はまったくなかったという。ところがスタッフの予想を覆す反響の高さがあり、大いに賛辞を受けたことで市販に向けて本格的に動き出すことになった。
そして、平成15(2003)年の同モーターショーには市販に向けたプロトタイプ、平成17(2005)年にはオープンモデルを出展。その間に市販に向けた試行錯誤は続けられ、初お披露目から5年の歳月を掛けて販売にこぎつけたのだ。
オロチの魅力はスタイリングに尽きる。開発はすべてが「まずデザインありき」で進められている。大蛇(オロチ)をモチーフとした有機的なエクステリアデザインは生命の息吹さえ感じるほど強烈。空力などを無視したディテールはフェラーリやランボルギーニと並んでも負けずと劣らない存在感がある。
これこそが、オロチの生命線であり、最大の特徴だ。純粋に誰もが一度は乗ってみたい、と思うクルマだと思う。ちなみに全幅は2035mm(全長は4560mm、全高は1180mm)もあり、これは日本の乗用車のなかで一番広い。
性能はいたって普通で誰でも操れるスペック
車体はフェラーリ512TRを参考にしたというオリジナルのスペースフレーム構造で、なんとリヤはツインショック。ボディはデザイン再現性を優先したためFRPを選択。グラスクロス6枚重ねで厚さ5mmもあるもので、ボディパネルの製作には1週間もかかるという。
パワートレインはトヨタのSUV用3.3リッターのV型6気筒DOHCエンジンとアイシン製5速ATを組み合わせ、ブレーキ関係はローターとキャリパーがホンダ・レジェンド用で、マスターバックはホンダ・シビック、マスターシリンダーはホンダ・ストリームというように、ホンダから供給を受けている。内装もトヨタやマツダから調達しているが、ゼロから作ったものも多いという。
誰もが振り返る異端系のディテールを持ちながら、性能を追求していないのがオロチの面白さでもある。日本の道路環境や社会事情を考えると、過大なパフォーマンスは不要であるし、使い切れない。また、性能を高めていくと乗りにくくなる。
そこで、開発陣は「誰にでも乗れるスーパーカーにしたい」と考えたという。エンジンスペックはこの手のスーパーカーとしてはやや貧弱な233馬力/33.4kg-m。このことからもオロチが性能を追求していないことがよく分かる。ただし、35cmもあるサイドシルがもたらす乗降のしにくさ、傾斜したウインドウ、囲まれ感あるタイトなコクピット。低くセットされたシートに座った景色は完全にスーパーカー。ワクワク感は半端ない。
300色以上のボディカラーと25色のインテリアが選択可能だった
走りはスーパーカーというよりもスポーティカー。必要にして十分な動力性能とATがもたらすイージーさは魅力。元マツダの開発ドライバーのトップガンが時間を掛けて仕上げた足まわりは前=245/45ZR18、後=285/40ZR18という偏平タイヤを装着しているが乗り心地も悪くなく、隣のパートナーから苦情が出ることはまったくない。スーパーカーの雰囲気と実用性のバランスを取られており、ファッションスーパーカーというコンセプトとじつにマッチしている。
また、インテリアが25種類、ボディカラーは300色以上から選べたのもファッションスーパーカーらしい特徴。光岡自動車の威信をかけたフラッグシップモデルであり、完全受注のハンドメイド生産だからできるオーナーに向けたスペシャルなおもてなしだといえる。発表当時の販売価格は1110万円だった。
400台完全受注の少量生産と決められたことにもこだわらず、オロチはイヤーモデル制を導入。平成20(2008)年には華飾を抑えた廉価版オロチ・ゼロ、翌年には鎧兜をイメージしたカーボン製エアロパーツを装着したオロチ・カブトをリリースした。
さらに平成22(2010)年には豪華仕様のゴールドプレミアムを発表するなど、新たなバリエーションを追加(限定数)して停滞することなく精力的に手を加えていたが、保安基準への適合と社外からの部品供給が難しくなったため、平成26(2014)年に生産終了が発表され、光岡自動車のオロチ伝説は8年間で幕を閉じることとなった。
機能的なパフォーマンスをスタイリングが凌駕したオロチ。富山県の小さな自動車メーカーが精魂込めて製作したオロチは「クルマに夢を抱く」という意味で一石を投じたクルマであることは確かだ。
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