2020年6月15日に、北米で日産「新型ローグ」(日本名:エクストレイル)が発表された。「ローグ」は、日本でお馴染みのエクストレイルの北米における車名であり、歴代ローグはそのまま日本ではエクストレイルとして販売されている。
国内ではトヨタ「ハリアー」や「RAV4」という強力なライバルもモデルチェンジし、好調な販売を記録している。世界的にも好調な売れ行きのSUVなだけに、日産も屋台骨となる車種で失敗は許されない。
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日本市場には2020年秋ごろの投入といわれる「新型エクストレイル」だが、どのようなラインナップであれば期待が持てるか? 再びカテゴリートップに返り咲くためにはどういった戦略が必要となるのか? 自動車評論家の渡辺陽一郎氏が考察していく。
文/渡辺陽一郎
写真/NISSAN、TOYOTA
【画像ギャラリー】強力ライバルと真っ向勝負! 次期型エクストレイルを詳しくチェック!!
■新型エクストレイルはサイズ感は変わらず日本にもフィット
2011年以降の日産は、日本国内において、1~2年に1車種しか新型車を発売しなかった。しかし、今後は流れが変わりそうだ。
日産は2020年3月期の連結決算において、6712億円の最終赤字となった。その理由のひとつに、車種の高齢化が挙げられ、若返りを図ることになったからだ。
2020年6月に国内で発売された「キックスe-POWER」もそのひとつだが、北米では同じ6月にSUVの「新型ローグ」もデビューした。日本でも「エクストレイル」として、2020年秋に発売される予定だ。
北米で先行公開された新型ローグ。従来型のローグ/エクストレイルと比較するとシャープな顔つきとやや武骨でSUVらしくなったフォルムが印象的
新型ローグは、全モデルに「ニッサン・セーフティ・シールド360」を標準装備した最新の日産車として登場。歩行者検出機能を備えた自動ブレーキ、ブラインドスポット警告、リアクロストラフィックアラート、車線逸脱警告、ハイビームアシストなどを搭載する
日産の販売店に尋ねると「今のところメーカーから次期エクストレイルに関する情報は来ておらず、現行型の注文も従来通り入れられる。そうなると次期エクストレイルの発売は10月以降だろう」という。
ただし北米で新型ローグが披露されたので、事前の告知や予約受注は8~9月に開始するかも知れない。今はトヨタ「RAV4」の販売が好調で、トヨタ「ハリアー」も2020年6月にフルモデルチェンジした。これらの売れ行きを抑える意味でも、エクストレイルがいわゆるティザーキャンペーンを行う可能性は高い。
北米で発表された新型ローグのデータは、全長4650×全幅1840×全高1700mm、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)2705mmになる。現行型と比較すると、全長は40mm短く、全幅は20mm広がり、全高は40mmほど低い。ホイールベースは等しく、ボディサイズはおおむね現行型を踏襲する。
そうなると前後席の広さ、荷室容量なども、現行型と同程度と考えてよい。現行エクストレイルの場合、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半を確保した。床と座面の間隔も十分にあるため、後席も広々としている。これだけの余裕があれば、車内をさらに広くする必要はない。
新型ローグ(エクストレイル)のサイドビュー。前後のオーバーハングが切り詰められてシャープな印象になっている
現行型エクストレイル(ローグ)のサイドビュー
国産ミドルSUVのサイズ比較表。従来型に対して全長が42mm短くなったローグ。一方、ライバルのRAV4やCR-Vよりは約40mm長い
■電動化戦略がカギ! 日本では求めやすいグレードも重要に
現行エクストレイルのエンジンは、直列4気筒2Lのノーマルタイプとハイブリッドだ。車両のイメージはミドルサイズだが、ボディは前述の通り意外に大きい。次期型の全長は現行型より40mm短いが、それでもホンダ「CR-V」やマツダ「CX-5」よりは長く、ハリアーとの中間的な大きさだ。
北米で発表されたローグのエンジンは、直列4気筒2.5Lとされる。このユニットは、おそらく日本仕様には用意されない。次期エクストレイルの主力はe-POWERだ。日産に尋ねると以下のような返答だった。
「今は国内で売られるノートの内、大半がe-POWERで占められる。セレナでは、e-POWERの売れ筋価格帯が350万円前後に達するから、S(スマートシンプル)ハイブリッドも堅調だ。それでもe-POWER比率が35~40%と多い。しかも今は(各種のコストを節約する必要もあり)、車両開発でも選択と集中を求められる。そのためにキックスのパワートレーンもe-POWERのみにした」
北米仕様のパワートレーンは、2.5Lの直噴ガソリンエンジン搭載車一本となっている
2019年度(2019年4月から2020年3月)に国内で売られたデイズ+ルークス+ノート+セレナの台数を合計すると、日産の国内販売総数の66%に達する。日産の小型/普通車では、ノートとセレナが圧倒的に多く、その中心技術がe-POWERだ。
また日産では、ハイブリッドに比べて販売の難しい電気自動車の「リーフ」を堅調に売っており、7月には電気自動車でSUVの「アリア」も加わる。将来のクルマでは電動化が大切な技術になることもあり、日産はアリアを新たなイメージリーダーに据える。
2020年7月登場予定の日産「アリア」。EVに力を入れる日産の新たなイメージリーダーとなることを目指している
これらの流れを踏まえると、次期エクストレイルの主力パワーユニットはe-POWERで確定だ。従来もハイブリッドはあったが、4WDのJC08モード燃費は20km/Lだった。ノーマルエンジンは15.6km/Lだから、ハイブリッドの燃費比率は128%と伸び悩む。e-POWERを使う次期型なら、25~27km/Lに向上するだろう。エクストレイルは、国内向けのセレナと違って海外でもローグとして販売するため、プラグインハイブリッドを加える可能性も高い。
キックスのようにノーマルエンジンを用意しない方法もあるが、エクストレイルになると、e-POWERの価格はセレナと同じく350万円前後から400万円に達する。2LのノーマルエンジンやマイルドタイプのSハイブリッドも300万円前後で用意するだろう。エクストレイルは現行型や先代型も堅調に売れたので、求めやすい価格のグレードがないと、乗り替え需要を逃す心配も生じる。
■SUV=オフロードは古い 先進安全装備の進化にも期待
2000年に登場した初代エクストレイルと2007年の2代目は、後輪駆動ベースのオフロードSUVを思わせる野性的な外観に特徴があった。サイドウィンドウの下端が低い水平基調のボディは、運転席に座ると視界がよく、ボンネットがキッチリと視野に収まる。四隅の位置もわかりやすい。当時販売されていた2~4代目「ランドローバーディスカバリー」のような独特の雰囲気があった。
それが2013年に登場した3代目の現行エクストレイルは、タフな雰囲気を残しながらも都会的な方向に発展した。フロントマスクやフェンダー付近も、丸みを伴うデザインに変わった。
次期エクストレイルの外観を見ると、この流れが初代と2代目の路線にある程度回帰したように受け取られる。フロントマスクやリヤビューが直線的に戻り、現行型に比べてシンプルだ。RAV4に似たところもあるが、エクストレイルは派手さを抑える。
この次期エクストレイルの特徴を考えると、オフロード色の強い、RAV4のアドベンチャーに相当するグレードがあってもいいだろう。
ライバルであるトヨタ「RAV4」の「アドベンチャー」。フロントロアガーニッシュなどを装着し、オフロード色を強くしている
現行型エクストレイルで設定されている「エクストリマーX」。専用のダーククロム&ダークメタリックの外装パーツを装着することで、よりタフなギア感を演出している
逆にオンロードに向けたエアロパーツを装着するスポーティなシリーズとして、ハイウェイスターを用意する方法もある。悪路の走破を視野に入れたSUVのエクストレイルに、ハイウェイスターを設定するのは禁じ手のように思われるが、今のSUVはもはや悪路とは結び付けられない。
ワゴンの実用性(居住性+積載性)と、力強い外観のカッコよさが特徴だから、エアロシリーズのブランドになったハイウェイスターがあると効果的だ。ノートやリーフはNISMOを設定するが、ハイウェイスターのほうがユーザーがイメージしやすい。
安全装備では、現行エクストレイルも衝突被害軽減ブレーキを進化させ、単眼カメラとミリ波レーダーを併用するタイプになった。2台先を走る車両を検知できる。運転支援機能のプロパイロットも採用した。次期型に期待される進化は、現行型では80km/hとされる衝突被害軽減ブレーキの作動上限速度を100km/h以上に高め、自転車の検知も可能にすることだ。
今はSUVが人気のカテゴリーだから、キックスに続いてエクストレイルも商品力を高めると、日産が国内需要を回復させる突破口になり得る。最近の日産のメーカー別国内販売ランキング順位は、トヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位だが、2007年頃までは2位を安定的に保っていた。優れた商品を国内に積極的に投入して、以前の輝きを取り戻して欲しい。
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みんなのコメント
フロントとライトはもう少し改良して欲しい。Vモーションはカッコ悪い。ライトも普通でいい。
あとは、値段かな。ラブフォーは、カッコいいが高い。昔並みは、無理だとしても4WD.2000cc.レギュラーの平均モデルが250万位なら。
デザインに関しては後方が何だかトヨタに寄せてる感じがするのと、フロントはVモーションとライトの位置が気持ち悪い。