FCEV、PHEV、ディーゼルエンジンとパワートレインが異なるミドルSUVが集結。それぞれの特性や、世界的な視点から見た今後のパワーソースの動向などを含めて3車を比較してみた。各社がクルマの未来に対してどのようなスタンスをとっているのか? 今後のクルマ選びのヒントも見えてきた。
パワーソースは多様、現在は最適解を模索中
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自動車のCO2排出量削減は、今や世界中の自動車メーカーにとって喫緊の課題となっている。特にヨーロッパ市場でビジネスを展開するメーカーにとっては現在最大のテーマである。2021年からEU内で販売する新車の平均CO2排出量を95g/km以下とするという欧州委員会の目標値があり、これを超えると1g/km超過するごとに販売台数×95ユーロ(約1万2000円)という巨額の罰金が課されるからだ。
そのため昨年からヨーロッパの各メーカーは、PHEVやEVを続々と発表。平均CO2排出量を1g/kmでも下げようと必死になっているのだ。メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ・プレミアム御三家も同様である。
メルセデス・ベンツ GLC F-CELL
メルセデス・ベンツは、今後数年以内にEQSをはじめ10車種以上のEVを市場に投入する計画で、BMWも2023年までにiNEXTやi4など10車種程度のEVを発売する予定。アウディも、2025年までにEVを約20車種まで拡大する計画を公表している。
そう書くと、3社はどこもEVに注力しているような印象だが、実際には必ずしもそうではない。メルセデス・ベンツはすでに市販しているが、各社ともPHEVや水素燃料電池車の開発も抜け目なく進めている。未来がどの方向に進んでも対応出来るように、しっかり準備しているのである。
BMW X3 xドライブ30e
そればかりか、ICE(ガソリン/ディーゼルエンジン)の開発も継続している。ダイムラーは中国のジーリー・ホールディングス・グループと次世代ハイブリッド車向けガソリンエンジンの共同開発を発表。BMWもICEは今後30年は継続すると明言している。アウディに至っては、マルクス・デュースマンCEOが「ICEの開発へ大規模な投資を続ける。ICEは今後も長期間生き続けるだろう」と発言しているのだ。
このような発言の背景には、アウディが世界をリードして開発中のe-フューエルの存在がある。これは人工的に合成されたガソリン(e -ガソリン)と軽油(e-ディーゼル)で、再生可能エネルギーによって精製される。
このe-フューエルを使用すれば、ICE車でもCO2を大幅に削減可能どころか、生成方法しだいではEVよりもクリーンな乗りものになる可能性すらある。今後10年程度で現在のガソリンや軽油と変わらぬ価格で提供できるようになる見通しだというから、ICEの開発を止める理由はない。
アウディ Q5 40 TDI とはいえ現時点ではクルマのパワーソースの最適解は見えておらず、多種多様なパワートレインを搭載したクルマが存在している。ユーザーとしてはどれを選ぶべきか悩ましいところだ。そこで、異なるパワートレインを積んだミドルサイズSUV3台を集めて、それぞれの特徴を探ってみた。
乗り比べて気づいたそれぞれの面白さ
メルセデス・ベンツGLC F-CELLは、世界初の市販プラグイン水素燃料電池車だ。2020年春に日本上陸を果たしたこのFCEVは、水素タンクや燃料電池ユニットに加えて13.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、燃料電池を使わない状態で約41kmのEV走行も可能。駆動用モーターはリアアクスルのみに搭載し、SUVでありながら後輪駆動という一風変わったモデルだ。
メルセデス・ベンツ GLC F-CELL 車両重量は2150kgと重いが、低重心かつ後輪駆動ということで、走りは想像以上に軽快だ。最高出力200ps、最大トルク350Nmと特にハイスペックではないが、EVらしく発進時からとても力強い加速が味わえる。
現時点ではセンターディスプレイもタッチパネル式ではなく、レーンキープアシストが搭載されない(警告のみ)など、機能装備の面で最新メルセデスには見劣りするが、まるで背の高いFRスポーツセダンのような走りが楽しめて、ピュアEVのように充電時間を気にする必要がないというのは、正直かなり魅力的である。ただし、身近に水素ステーションがあれば、である。
BMW X3 xドライブ30e Mスポーツ エディション ジョイ+ BMWは、X3 xDrive 30eをエントリー。2020年春に日本上陸を果たしたX3で初のPHEVは、184psと300Nmを発揮する2L直4ガソリンターボに109psと265Nmを発する電気モーターを組み合わせる。基本的には電気モーター主体で走行するが、アクセルペダルを少し深く踏み込むと、瞬時にエンジンが始動してパワフルな走りを披露する。パワーソースの切り替わりがはっきり判るのは、今どきのハイブリッドでは珍しいが、逆にそこに運転している実感があって楽しめる。エンジンメーカーをルーツとするあえての演出なのかもしれない。PHEVとしてのウィークポイントはラゲッジスペースの容量が450Lと他のモデルより100L少ない点くらいである。
アウディは、本国にはPHEVも用意されているが、日本市場には未導入なので、今回は2L直4ディーゼルターボを積むQ5 40TDIクワトロを持ち込んだ。190psと400Nmを発揮するパワフルなエンジンに7速Sトロニックを組み合わせたパワートレインは、とてもパワフル&スムーズな走りを実現していて、細かいことを何も気にすることなく、快適な走りが楽しめる。個人的には熱烈なICEファンというわけではないのだが、慣れ親しんだ運転感覚に、思わず「やっぱりクルマはこうでなくちゃ!」と言葉が漏れてしまった。
アウディ Q5 40 TDI クワトロスポーツ メーカーもパワートレインもそれぞれ異なるだけに、良し悪しを直接比較することは出来ないが、各メーカーの未来に向けたスタンスを良く表した3台であることは間違いない。その点を踏まえてクルマ選びをすれば、もっといまの時代に対する理解が深まり、クルマのある生活が一層興味深く楽しめるようになるかもしれない。
PERSONAL CHOICE BMW X3 xDrive30e
エコと内熱機関の両立がベスト
今回の3台の中なら、クリーンなEV走行からパワフルな走りまで楽しめて、先進的でありながら従来のガソリン車と使い勝手が変わらないX3xDrive30eだ。ハイブリッドシステムの制御が体感できる乗り味もいい。
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