見せ場満載のデビュー戦終えた小林利徠斗、“リクト節”も炸裂。切れ味鋭いオーバーテイクショーは「マッチポンプだから恥ずかしい」

　トヨタ期待の若手、小林利徠斗のスーパーフォーミュラ初レースが終わった。結果は16位と、そこだけ切り取ればあまり見るべきものがないように思えてしまうが、その中身を振り返ると予選・決勝共にインパクトのある走りだったと言える。

　小林は一昨年にFIA F4でチャンピオンとなり、昨年のスーパーフォーミュラ・ライツでランキング2位となった19歳。カートを卒業して4輪のレースを本格的に戦うようになって4年目と、経験値としてはまだまだ浅いが、代役という形ではあるが早くも国内最高峰のスーパーフォーミュラにデビューするチャンスを掴んだ。

　デビュー戦となった第3戦もてぎで小林は、予選Q1 B組でトップから0.510秒差の8番手（11台中）。Q2進出は果たせなかったが、その経験値、そして代役出場であることを鑑みると上々の結果だったと言える。

　15番グリッドから決勝を迎えた小林だが、スタートではアンチストールに入ってしまいグリッドで立ち往生。セーフティカーの出動に助けられたが、最後尾からの追い上げを強いられた。

　しかしここからが見せ場だった。5周目のヘアピンで三宅淳詞（ThreeBond Racing）のインに入ってオーバーテイクすると、6周目の3コーナーではチームメイトの高星明誠をパス、さらにはS字の飛び込みでJuju（HAZAMA ANDO Triple Tree Racing）も料理するなど、わずか1周で3台抜きをやってのけた。その思い切りの良さに、公式中継の解説を務めていた大津弘樹も「なかなかこんなことできないですよ」と感嘆の声をあげていた。

　ただ当の本人は冷静。というよりもレース中の“やらかし”の多さに反省しきりだ。レース後の取材でオーバーテイクについて話題を向けられると、「マッチポンプ※ですね」とバッサリ切り捨てた。

※自らマッチで火をつけて自らポンプで消火するといった様子から転じて、自作自演のことを指す

「（最後尾転落は）自分で引き起こしたことなので……」と小林。中継でもオーバーテイクショーがフィーチャーされていたことを伝えると「恥ずかしいですよね。ただのマッチポンプなので……（笑）」とはにかんだ。


　昨年末のルーキーテストでのスーパーフォーミュラ初走行の時は「怖かった」と率直にコメントした小林だったが、その果敢なオーバーテイクを見るに、むしろ怖いもの知らずなのではと思わさせる。その点について質問すると、彼はこう答えた。

「スーパーフォーミュラは限界を超えた時にすっ飛んでいきそうなので、そういう意味では怖さもありますが、逆に言えば限界点もすごく高いクルマです」

「だから自分がちょっと変な運転をしたとしても、クルマが許してくれる範囲の中であれば、落ち着いた挙動でいてくれます。接近戦であったとしても、自分の車の持つ（力の）限りの運転は全然不安にならないですね」

「（件のオーバーテイクは）“気合いの一発”という感じでは全然ありませんでした。あくまでも落ち着いてレースをするのが一番だと思っているので」

　その他様々な反省を活かして、日曜の第4戦では少しでも良いレースがしたいと語った小林。スーパーフォーミュラでは、本音をぶっちゃける山下健太の“ヤマケン節”がしばしば話題となるが、独特な言葉遣いを見せる“リクト節”も、近い将来スーパーフォーミュラを盛り上げてくれるかも……？