かつて流線形デザインがとにかくカッコいい時代があった
近現代の歴史を振り返れば、産業革命やベル・エポックの時代、アールヌーヴォーの隆盛など、文化や芸術、あるいは機械技術の分野まで含めた大きな変革のうねりがいくつも現れた。とくに第一次世界大戦以降から1930年代にかけ、欧米では消費社会の拡大と大量生産技術の向上によって、工業デザイナーという新たな職種が生まれつつあった。当時、そんな彼らが好んで取り上げたテーマのひとつが「流線形」である。もともとは鉄道車両や自動車の空気抵抗削減・性能向上のためのものであったが、それはやがて時代性を語るひとつの記号となり、家電製品から日用雑貨まであらゆるものが「流線形デザイン」になっていくのである。
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クライスラーの直6エンジンをミッドシップしたワンオフモデル
こちらでご紹介するクルマは、そんな「流線形の時代」に造られたホッペ&ストレアー・ノーベル「ストリームライナー」(以下、ノーベル・ストリームライナー)というワンオフモデル。カリフォルニア州はロサンゼルス出身のジャック・ノーベルが考案し、ハリウッドのアレン・ホッペとアリン・ストレアーが製作したといわれている。
なんといってもその特徴は、まるで魚のような究極の流線形ボディだろう。前後の車輪まで完全にカバーされた車体の長さは18フィート(約5.4m)。フロントシートに2名、後部座席には3名が乗車でき、その後方にエンジンが搭載されたミッドシップのクルマである。そのパワートレインには1930年型「クライスラー66」の直列6気筒エンジン(3.2L/65psもしくは3.6L/68ps)が使われている。ホイールやステアリングなどのパーツの多くもクライスラー66のものが流用されているようだ。
航空機メーカーの社員たちも製作に協力
ロサンゼルス周辺は古くから航空機産業が盛んな地域で、その地の利を活かしてノーベル・ストリームライナーのボディ外板には航空機用の高品質なアルミが使われている。ちなみにかの地には、PBYカタリナ飛行艇やB-24リベレーター爆撃機の製造で知られるサンディエゴの航空機メーカー、コンソリデイテッド・エアクラフト社も本社を構えていた。当時同社の社内報『コンソリデーター(Consolidator)』誌の1937年3月号にこのクルマのトピックが紹介されていて、同社の社員たちも製作を手伝ったと伝えられている。
ちなみにベースとなったクライスラーの車名「66」は、最高速度が時速66マイル(約106km/h)ということから命名されたものだが、このストリームライナーはそれをはるかに上回る131マイル(約210km/h)で走ったとも言われている。数字の信憑性についてはともかく、空気抵抗の少ないボディが高速走行に有利に働いたことは間違いないだろう。
戦後も少しだけ注目されるも、歴史の波に消えてしまった
ボディにはドアが見当たらず、当時の画像を見ると乗員はサイドの窓から乗り降りしているようだ。ボディ後半左右の開口部の奥にはラジエターが設置されている。
このノーベル・ストリームライナーは前出の『コンソリデーター』誌以外にも、さまざまな雑誌の記事に取り上げられた。第二次世界大戦を挟んで終戦の翌年、1946年には科学技術雑誌『ポピュラー・メカニクス(POPULAR MECHANICS)』でも紹介され、全国的に知られるようになった。
しかし多くの文献が残されている他の類似コンセプトカーとは異なり、このノーベル・ストリームライナーの製作者がどういった意図でこのクルマを制作したのか、何を目指していたのか、今となっては判然としない。
科学技術の発達が必ずしも全ての人類を等しく幸せにするとは限らず、むしろ地球環境にとってはマイナスの側面があることすら知られてきた昨今では、「科学の進歩だけが全ての問題を解決する」と無邪気に信じる人もいないだろう。しかし、かつては確かに科学技術に対する牧歌的な信頼もあったことを思い起こさせてくれる「流線形」の時代。そして、そんな時代の徒花とも言えるノーベル・ストリームライナーではある。
* * *
ちなみに今回ご紹介したミニカーはAuto Cult(オートカルト)というドイツのブランドからリリースされている1/43スケールのレジン(樹脂)製モデルだ。同社からは他にも知られざる名車(迷車?)の数々が模型化されているので、気になる向きはぜひそちらもチェックされたし。
■Auto Cult(オートカルト)1/43 車名:HOPPE & STREUR NORVELL STREAMLINER(USA, 1946) 型番:04038(品切れ) 問い合わせ:国際貿易 https://www.kokusaiboeki.co.jp
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