毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
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しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はダイハツ 初代ロッキー(1990-1997)をご紹介します。
●【画像ギャラリー】 初代ロッキーの画像をギャラリーでチェック!!!
文:伊達軍曹/写真:DAIHATSU
■ボディとシャシーを分離 本格的な悪路走行時のポテンシャルを秘めたロッキー
決してデキが悪かったわけではないのですが、「時代のリズム」とうまく同期できなかったために人気薄となり、長らく消えていた小型クロカン。それが、国内では1990年から1997年まで販売された「初代ダイハツ ロッキー」です。
3ドアレジントップが採用され、ルーフを取り外してのオープンボディも楽しめた。オプションでソフトトップも用意
今年11月に発売された2代目ロッキー(といっても名前が同じなだけですが)は「シュッとした都会派クロスオーバー」だと言えます。
しかし初代ロッキーは「都会での使用を大いに意識してはいるものの、本籍地はオフロード」というニュアンスの小型クロカン四駆でした。
1990年当時は、1.6Lクラスにライトなクロカンがないことに目をつけたスズキが1988年にリリースした「初代エスクード」が人気を集めていました。このエスクードを追う形で発売されたのが、初代ダイハツ ロッキーです。
初代ロッキーのフレーム構造はモノコックではなく、本格オフローダーに採用されることが多いラダーフレーム。
そこに、当時販売されていた小型セダン「アプローズ」の1.6Lガソリンエンジンを改良したうえで搭載しました。
オフローダーであると同時に「都会派SUV」であることも目指した初代ロッキーは(まあ当時はSUVなんて単語はありませんでしたが)、フロントサスペンションに乗用車的な独立懸架式を採用。これによりオンロードでの回頭性を高めました。
ただしリアサスペンションにはリーフスプリングを採用し、これによって悪路走行時に必要なホイールストロークを確保しています。
駆動方式は、悪路走行に適しているパートタイム4WDと、センターデフを備えたフルタイム4WDの2種類。
トランスミッションは、最初のうちは5MTのみという硬派な設定でしたが、1992年には4速ATを追加しています。
しかしダイハツはこのとき、なぜか「パートタイム4WDではなくフルタイム4WDのほうを廃止する」という謎の動きを見せました。
後席部分のレジントップは脱着が可能で、クローズド、セミオープンが自在に楽しめた。なお海外仕様は「FEROZA」と名付けられた
ビジュアルおよび機構面での特徴は「車体後部を覆う取り外し可能なレジン製ハードトップ」の採用でしょう。
これは「ハードトップ装着時はクーペで、ハードトップを外した状態では後部がセミオープンになる。そしてオプションでソフトトップも用意される」という、なかなか遊び心あふれる素敵なモノでした。
しかしながら初代ダイハツ ロッキーのセールスは、類似車であるスズキ エスクードの好調っぷりを横目に「低空飛行」が続きました。
そして海外向けはその後もまあまあ長く生産されたのですが、国内販売は1997年に終了となったのです。
■エスクードとの勝負を分けたのは「山っぽさ」だった!?
スズキ エスクードはその後もフルモデルチェンジを重ねられ、現在は4代目が販売されています。
しかし「ある意味似たような車」とも言える初代ダイハツ ロッキーはなぜ、1代限りで終わってしまったのでしょうか?
ちなみに今年11月に発売された新型ロッキーは、2代目ロッキーというよりもどちらかと言えば「ロッキーという車名が付けられた、まったく別のシリーズ」です。
デビュー当初は5速MTのみの設定でしたが、1992年のマイナーチェンジにおいて、5速MTに加え4速ATを、フルタイム4WDを廃止し、パートタイム4WDのみの設定となっている
初代ロッキーが廃番となった理由は、「いい車なのだが、いろいろな部分が少しずつ残念だった」というフレーズに集約できます。
同じように「街乗りも悪路も両方OKなコンパクトクロカン」だった初代ロッキーと初代スズキ エスクードでした。
しかし初代エスクードには最初からATが用意されていたのに対し、初代ロッキーは最初の2年間、硬派な5MTのみでした。
「悪路もガンガン走りたい」と考えるマニアックなユーザーはそれでも構わなかったでしょうが、「主には都市部で気軽に乗りたい」と考えるユーザーには「MTしかない」というのはけっこう高いハードルだったはずです。
そして前述のとおり初代ロッキーは1992年3月の一部変更で4速AT仕様を追加するのですが、このときなぜか街乗りに適しているフルタイム4WDのほうを廃番にして、悪路走行に向いているパートタイム4WDを残しました。
もちろんいろいろな考えがあってのことでしょうが、正直ちょっとよくわからない行動です。
本来な持ち味となるはずのクロカンならではの武骨なエクステリアが仇となったか
またデザインも「初代ロッキーも初代エスクードもおおむね似たニュアンスである」とは思うのですが、今改めてまじまじと見てみますと、エスクードのほうに「都会っぽさ」を感じ、ロッキーからは「山っぽさ」を感じます。
このあたりのちょっとした加減も、悪路走行を趣味とする人の数がどんどん減っていった1990年代においては、商売の成否を分ける微妙な、しかし大きなポイントだったのでしょう。
しかし、ビジネス面では成功したと言い難い初代ロッキーは、マジメに作られたナイスな小型クロカンではありました。「好きな人はハマるタイプの車」ではあったのです。
そうであるがゆえに「ロッキー」という車名にネガティブなイメージは特にありません。そのため、今年11月に新発売となった小型クロスオーバーSUVに、ダイハツは躊躇なく「ロッキー」という車名を付けることができたのでしょう。
■ダイハツ ロッキー 主要諸元
・全長×全幅×全高:3705mm×1580mm×1725mm
・ホイールベース:2175mm
・車重:1270kg
・エンジン:直列4気筒SOHC、1589cc
・最高出力:105ps/6000rpm
・最大トルク:14.3kgm/3500rpm
・燃費:10.0km/L(10・15モード)
・価格:179万8000円(1990年式SXフルタイム4WD)
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