■「レヴォーグ」に待望の「ストロングハイブリッドモデル」
スバルは2026年7月2日、ステーションワゴンSUV「レヴォーグ レイバック」に、新たに「e-BOXER(ストロングハイブリッド)」を搭載したモデルを発表しました。
その実力を、自動車研究家の山本シンヤ氏がレポートします。
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2025年10月開催の「ジャパンモビリティショー2025」で、「スポーツ」と「アドベンチャー」の強化を公言したスバル。加えて「お客様が本当に望んでいること=拡張性と柔軟性」を体現するための商品戦略に、現在大きな変化が起き始めています。
その1つが「レヴォーグ レイバック(以下レイバック)」に追加された「ストロングHEV(S:HEV)」です。今回、正式発表・発売に先駆けて、試乗をしてきました。
レイバックは2023年にステーションワゴン「レヴォーグ」の派生モデルとして登場。「アウトバック/フォレスター/クロストレック」のSUV三兄弟とは異なる「スポーツツアラー」と「SUV」を融合したキャラクターが特徴ですが、発売後にユーザーからこのような要望が…。
「クロストレック/フォレスターで評価の高いS:HEVモデルが欲しい」「都市型をうたうなら、タワーパーキング対応(全高1550mm以内)じゃないと」
これまでのスバルなら「次期モデルの参考させていただきます」でしたが、今のスバルは違います。前出の「拡張性と柔軟性」を実証するべく、まさに今あるアセット(資産)を上手に活用しながらスピード感を持って開発されたのが、このレイバックS:HEVなのです。
エクステリアはガソリンターボ車と異なるS:HEV専用のフロントマスクに変更。
具体的には、ヘッドランプからシームレスにグリルに繋がるデザインや横方向に広がりを見せるバンパー形状、女性からの要望が強かったというエアインテーク“レス”のボンネットなどにより、レイバックのスポーティさを損なうことなく「よりスマート」、「より滑らか」、「より洗練された」印象になっています。
鍵型のモチーフが連続するデザインのアルミホイールも、質感を高めるアクセントになっています。
上級グレードの「プレミアムS:HEV EX」は“ヒカリモノ”を上手に活用することで煌びやかで伸びやかな印象。普及グレードの「プレミアムブラックS:HEV EX」はヒカリモノを抑えた黒基調の加飾で引き締まった印象です。
車高は通常モデルの1570mmに対し、マイナス20mmの1550mmに変更することで、念願のタワーパーキング対応となりました。その一方で最低地上高は200mmから180mmに低下。たかが20mmですが、スバルではSUVの最低地上高は200mmがデフォルトのため、この変更は社内では喧々諤々だったそうです。
しかし開発陣は、「ユーザーが何を求めているのか?」を優先したと言います。ただ、SUVを名乗りながらも最低地上高がより低いライバルも多いので、性能的には十分以上だと筆者(山本シンヤ)は思っています。
インテリアは基本的には通常モデルと大きな差はありませんが、全車が本革シート仕様で上級グレードのプレミアムS:HEV EXでは、「レガシィアウトバック」でも好評だったタンカラーのナッパレザー、普及グレードのプレミアムブラックS:HEV EXはブラックの本革シートとなっています。
通常モデルに対する違いとして、細かいところではバッテリー搭載の関係により、リアシートのリクライニング機構の削除、サブトランクの容量減少などの違いがありますが、実用上はそれほど気にならないでしょう。
メカニズムはどうでしょうか。一言で言えば「レヴォーグにS:HEVをドッキング」ですが、実は言葉のように簡単ではありません。
実はレイバックを含めたレヴォーグは、開発初期の段階でS:HEVを搭載する計画はなかったので、フロントセクションに2.5リッター+S:HEVユニット、リアセクションに駆動用バッテリーを収めるスペースは用意されていませんでした。
そのためS:HEV化をするためには車台を大改修する必要がありましたが、それをやると開発期間が長くなり、スピーディに提供することができません。
そこで開発陣はレヴォーグのセンターセクションに、S:HEVを想定して設計されたクロストレックのフロントセクションとリアセクションをドッキングさせることで、この問題をクリアしました。
実はOEMモデルおよびトヨタと共同開発した「BRZ」「ソルテラ」「トレイルシーカー」を除く最新のスバル車は、全モデルでフルインナーフレーム構造の「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」を採用していますが、このSGPは完全共通ではなく「固定」と「変動」を上手に活用することで各モデル最適な車台を可能にしています。
そこで今回は「変動」の部分を「モジュール」として活用することで、莫大な専用投資を抑えながら、合理的に新しいパワートレイン搭載を成立させたのです。結果として開発期間も大幅に短縮できたと言います。
パワートレインはクロストレック/フォレスターと同じく、2.5リッターの水平対向4気筒+CVT内蔵2モーターのS:HEVにプロペラシャフト付きのメカニカルAWD(多板クラッチ式)を水平展開。
ちなみに通常モデルのレイバックには設定のない悪路や急な下り坂での走りをサポートする「X-MODE(ヒルディセントコントロール付)」も新たに装備されています。
フットワークはS:HEV化に伴い、バッテリーの搭載などで車両重量が約100kg重くなっていますが、サスペンションの再チューニングでカバーしています。
タイヤは通常モデルと同じ、225/55R18サイズの「ファルケンZIEX ZE001 A/S」を履きます。
■ワンランク上の「大人な乗り味」!? 走りの質はどうなのか
では、肝心な走りはどうだったのか。今回の試乗場所は長野県の「白馬八方尾根スキー場」、うさぎ平に向かう取り付け道路で、道幅が狭い上に路面に凹が多いタイトコーナーが続く急勾配。ニューモデルの初試乗としては厳しい走行環境でしたが、個人的にはむしろレイバックS:HEVの“良さ”が引き立ったと思います。
パワートレインは基本的にはクロストレック/フォレスターと同じ印象ですが、1.8リッターターボはもちろん、2.4リッターターボと比べても走りの余裕があります。
まず走り出しの瞬間からモーターアシスト効果で「もたつき」は皆無で、スッとクルマが進むのが嬉しい。そこからアクセルをグッと踏み込むとリニアでフラットな加速が気持ちいいです。
例えばトヨタの「THS II」はシステムの特性上、エンジン回転数と速度がリンクしない「ラバーバンドフォール」が欠点の1つですが、スバルのS:HEVはアクセルをベタ踏みしない限りは、ターボ車のCVTの「リニアトロニック」よりもドライバビリティは良いと感じました。
ちなみにドライブモード選択の「SIドライブ」で「S」を選ぶとより素早い応答とアシストにダイレクト感すら感じたほどでした。
欲を言えば、バッテリー満タンの時に、駆動モーターに加えて発電用モーターも加速時に駆動モーターとして利用するトヨタの「デュアルモータードライブシステム」のスバル版があったら、ターボとは違うスバルの新たなスポーツの提案もできるかなと思います。
さらに驚いたのは静粛性の高さで、通常モデルに対して確実にエンジン音やロードノイズが抑えられているのです。
エンジニアに聞くと「S:HEV用の遮音・吸音は特にやっていない」と言いますが、エンジン音はモーターアシストでエンジン回転を必要以上に上げなくてよくなった事、ロードノイズはリアにバッテリーを搭載した事で音の伝達経路が変わったことが要因だと筆者は分析しています。
フットワークは一言で言うと、レヴォーグの良さにアウトバックに片足を踏み入れたかのような動的質感がプラスされた、「大人の乗り味」に仕上がっています。
一番驚いたのは「フラット感」と、入力をいなすサスペンションの「しなやかさ」で、通常モデルと比べると「あれ、舗装が綺麗になった?」と思ってしまうくらいの差。とにかくクルマのバネ上が、レヴォーグと思えないほど落ち着きがあるのです。
それでいながら、レヴォーグの一体感あるハンドリングはそのままに、いい意味で「薄皮1~2枚」入ったような心地よい“穏やかさ”と“間”がプラスされた落ち着いたスポーティさが備えられています。
ノーズの入りはターボ車ほど機敏ではないものの非常に軽快で、約100kgの重量増を感じさせない身軽さ。旋回時はむしろターボ車よりも良く、4つのタイヤをより上手に活用したコーナリング姿勢となり、結果として「より自然」、「より楽に」に曲がれるハンドリングだと思いました。
これはHEV化による低重心に加え、マイナス20mmのローダウン、さらには重量バランスの変更も効いているはずです。
チューニングの方向性を聞くと、コイルスプリングは通常モデルと同じ。重くなったボディに対して相対的に「バネ下」が軽くなり、サスペンションが素直に動きやすい環境を構築しながら、重量増を受け止めるためにダンパー減衰力をアップ。
さらに車高を20mm下げたことによる縮み側のクッション性の確保のために、ダンパーのケース長やバンプストッパーの長さを変更と言った綿密なチューニングによって、「しなやか」だけど「落ちついた」走りを実現できたそうです。
ただ、ここまで行くと、もっと欲が出てしまいます。例えば、レヴォーグの「STIスポーツ」に採用の「電子制御連続可変ダンパー」を活用したらより乗り味の幅は広がりそうですし、「レオーネ」やレガシィ時代の「エアサスペンション」を活用したら、そもそもレヴォーグとレイバックが両立できるなと思ったり。
そろそろ結論にいきましょう。レイバックS:HEVはいい意味で通常モデルとは違うキャラクターに仕上がっています。通常モデルの軽快なフットワークに対して、電動化とマイナス20mmの専用サスペンションによって「0.5クラス上のクルマ」に仕上がっています。
それでいながら、424万6000円(消費税込)からという戦略的な価格設定なので、現在、スバルで最もコスパがいいクルマと言っていいかもしれません。
そして、筆者が声を大にしていいたいのは、クロスオーバーとしての実力を持ちながらもステーションワゴンの機動性を備えた、スバルの「スポーツ」と「アドベンチャー」のど真ん中に位置するクルマだと言うことです。
人によっては「中途半端」、「どっちつかず」と言う声もあるかもしれませんが、そもそもスバルの乗用AWDは「ジープの悪路走破性」と「乗用車の快適性」の掛け合わせであり、アウトバックを含め“何か”と“何か”を掛け合わせたクロスオーバーこそがスバルの原点なので、その組み合わせが増えただけの話です。
個人的にはユーザーの見方・使い方次第でクロスオーバーにもスポーツワゴンにもなれる万能なリリーフであり、ズバリ「クロスツアラー」と呼んでほしい1台です。(山本シンヤ)
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