10月20~22日、2023年MotoGP第16戦オーストラリアGPが行われました。土曜日決勝に変更され、日曜日に変更されたスプリントは悪天候で開催ができませんでした。しかし、決勝では最終ラップまでドゥカティ勢による戦いが繰り広げられ、ヨハン・ザルコが最高峰クラス初優勝を獲得しました。
そんな2023年のMotoGPについて、1970年代からグランプリマシンや8耐マシンの開発に従事し、MotoGPの創世紀には技術規則の策定にも関わるなど多彩な経歴を持つ、“元MotoGP関係者”が語り尽くすコラム第21回目です。
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--今回のオーストラリアGPは日曜日の天気が荒れるという予報にしたがって、急きょ土曜日にレース、日曜日にスプリントとスケジュール変更されました。こういうケースは過去にも有ったのでしょうか?
こういうケースは記憶に無いね。そもそもスプリントというイベントが増えたから入れ替えが出来たわけだし。過去には日曜日が大荒れでレースどころじゃなくて月曜日にやった例があったような気がするけど。あれはたしか、2009年の開幕戦のカタールだったかな。
結果的に、日曜日はウォームアップセッションを走行したのみで、予報通り大荒れの天候でスプリントがキャンセルされたので、適切な判断だったという事だね。
それにしてもネット視聴は問題ないとしても、TV放映の場合は時間枠が絡んでるのに、直前でスケジュール変更ができるとは驚いたよ。この時期のオーストラリアは冬が開けて春になるところで、気候的には不安定なんだよね。僕の現役時代は、ひたすら寒かった記憶しかないもの。
その昔、鈴鹿でGPが開催されていた頃も同じように春先なので、やはり天候が不安定で寒かった記憶しかないよ。北半球と南半球で季節が真逆になるのは、理屈ではわかっていても、実際に体験するとおかしなものだよ(笑)
--突然スケジュール変更になって、ライダーや運営側も対応が大変だったと思うのですが……
そもそも昨年まで土曜日は公式予選のみだったのに、今年からスプリントが追加されてライダーとチームの負荷が増えたところに加えて、今回のスプリントとレースの入れ替えは相当抵抗があったと思うよ。
ライダー側としては、体力的にきついというのはもちろん、スプリントの結果から更にマシンに調整を加えたり、タイヤ選択を見直したりというプロセスが省かれてしまうしね。
とはいえ雨の中を長時間走って、挙句に赤旗中断でドタバタした末にレースがキャンセルになったり、という事態を考えると、日曜日のスプリントが最悪キャンセルになっても、興行的にも理解が得やすいと判断したんだろうね。
--そういえば日本GPでは、ヨハン・ザルコ選手が赤旗中断の直前に5位走行中でクラッシュして、再スタートが出来なくてリタイア扱いになりましたよね。
あれはひどい話だったよね。再スタートしないでレース終了ならザルコ選手は5位になるはずで、悔しくて納得いかなかっただろうね。そのザルコ選手が今回は最終ラップのバトルを制してのMotoGPクラス初優勝だろ、なんか因縁めいたものを感じてしまうね。
主催者側もあのレースを教訓にして、今回のスケジュール変更に踏み切ったのかもしれないよ。
--それにしても、久々に見応えのあるレースでしたね。中盤までホルヘ・マルティン選手がリードを拡げていたので、今度はそのまま逃げ切りかと思ったんですけど。
レース中盤までは前回のインドネシアGPと同じで、後続に最大4秒くらい差をつけていたね。前回の轍を踏まないように、今回は慎重に後続と一定の距離を保って走行していると思ったら、どうもファビオ・ディ・ジャンアントニオ選手がブラッド・ビンダー選手を交わして2位に浮上してからどんどん差を縮まってきた。
それでまたペースアップするのかと思ったら、逆に彼の選択したリヤのソフトタイヤのデグラデーションが急速に進んで、最終的にミディアムを選択した2位グループに飲み込まれてしまった。まさか最終ラップで2位グループの全員に抜かれて、5位まで転落したのは彼にとっては悪夢のような展開だったろうね。
--ザルコ選手の後半の追い上げと、オーバーテイクは見事でしたね。まさに職人技を見せてもらった感じでした。
毎ラップ一機ずつ撃墜していく歴戦の戦闘機乗りみたいな感じだな(笑)僕の中では既に何回か優勝しているイメージが有ったので、MotoGPクラスでは初優勝というのは意外だった。
Moto2時代は優勝するとバク宙を披露する事で有名だったけど、今回6年ぶりに披露して無事に着地出来たのは良かった。これで怪我してレース出られなくなったら元も子もないのでね(笑)
オーバーテイクと言えばフランセスコ・バニャイア選手もなかなかのものだった。最終ラップにザルコ選手がマルティン選手をインから抜いた際にも、続いてディ・ジャンアントニオ選手とマルティン選手をスパッと抜いていったのはお見事。的確な判断力とピンポイントでラインが狙える、優れたマシンのアジリティの為せる業を見せてもらった。
--もうひとりのヒーローは、間違いなくディ・ジャンアントニオ選手でしたね。
前回、マルク・マルケス選手が抜けたスロットを埋める選択肢として、推しておいたの覚えてるだろ。今回のトップライダー達と互角に競り合っての3位表彰台は、マジで覚醒したと言っていいんじゃないのかな。
レース後のコメントでは、「タイトル争いをしているふたりのレースを台無しにしたくないので、インを突くのを控えた」と言っていたから、無我夢中と言うわけではなくて、冷静な判断が出来ていたようだし。
もたもたしてるとプライスタグが急騰するから、購入はお早めにと言っておきたいね。ちょっと性格が良さそうに見えるのが心配ではあるけどね(笑)
--ところで、プラクティスではKTMとアプリリア勢の好調ぶりが際立っていましたが、最終的にはドゥカティが表彰台独占という形になりました。何か要因として考えられることはありますか?
プラクティスでKTMがワン・ツーと言うのは出来すぎだと思うけれど、セッション毎に調子良かったり悪かったりで判断が難しいね。要因のひとつとして路面温度の差があるかもしれない。彼らの調子が良かった時は路面温度が43℃と高めだったので、マシンとタイヤのマッチングが良かったのかも。
FP2では路面温度が21℃とかなり低くて、全体的に1秒くらいタイムが落ちてる中で、KTMは特に落ち幅が大きかった。ま、公式予選振り分けに関係ないセッションだから本気で走ってないという見方もできるけれど、正直良く分からん(笑) アプリリアに関しては、マーベリック・ビニャーレス選手とアレイシ・エスパルガロ選手で傾向が異なるから、こちらも良く変わらん。
本来、高速コーナーが多いこのコースは、アプリリアやヤマハ向きだとは思うんだけれど、それほど際立って良かったわけでも無いしね。逆に、従来はドゥカティには不向きとされていたこのコースで、こういう結果を見せつけられると、もはやドゥカティには死角無しという感じだね。
オンボード映像を見ていると、多少コーナーで失速しても、ボトムから強力なエンジンのおかげですぐにリカバリーが出来ている。競り合いになるとそこの強さが際立つ感じだね。
--一方、ある意味安定した不調振りが際立っていたのがヤマハとホンダでしたね。
そこがねぇ、少し不可解なところなんだよ。本来、ここは高速コーナー主体のヤマハ向きのコースだと思うんだけどね。特にファビオ・クアルタラロ選手については前回のインドネシアで良い感じだったし、昨年もレースはリタイアしてしまったけれど、公式予選5位とまずまずだったから、今回も期待していたんだけどね。
直接比較はできないけれど、昨年より予選タイムが1秒遅いのは理解に苦しむね。マルケス選手も高速コースはプッシュできないからひたすらクルージング、低速コーナーでタイムを稼ごうとプッシュしたら2回も転倒してしまう有り様で、それでもQ1を勝ち抜けてQ2で7位は立派としか言いようがないよ。
--あれ、今回はマルケス選手を持ち上げますね、何か心境の変化とか?
そりゃあ、僕も人の子だからね。かつて隆盛を極めた日本のメーカーのエースライダー、それもチャンピオン経験者のふたりが、頑張った挙句に1ポイントとか2ポイントしかとれないのは、さすがに見ていて辛いし、何とかしてやれないものかと思うだろ。
--マルケス選手もマルティン選手同様に、リヤタイヤはソフトを選択したらしいですね。
マルケス選手は失うものが無いので、ペースの良いソフトタイヤで賭けに出た。一方のマルティン選手はどちらでも良いペースだったし、耐久性も心配ないと判断しての選択。結果的にどちらも選択ミスだったわけだけれど、これが通常スケジュールでスプリントの後のレースだったら、また違った結果になったかもしれないね。
--ところで、チャンピオンシップのポイント差が27と拡がりましたけど、予想の修正とか考えていますか?
従来の感覚でいうと、あと4レースも残っているわけだから、まだまだ何があるか分からないでしょ。マルティン選手としてはもう少しポイント差を縮めておくことだね。
ずっと圧を掛け続けて行って、最後に逆転するのが理想的な勝ち方と言うのは前回言ったとおり。マルケス選手も、今シーズンのチャンピオンはマルティン選手と予想しているので、間違いない(笑) まあ、スペイン人にチャンピオンになって欲しいという願望もあるかもしれないけれど、優れたライダーは、ライバルに対する嗅覚にも優れているのは確かだからね。
という事で、今シーズンのチャンピオン予想は、ホルヘ・マルティン選手で変更なし!!
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みんなのコメント
何でそんなに偉そうなんだ?
御意見番って普通意見が通る人の事を指すだろ?
誰なんだこいつ。
こいつのたわごとがMotoGPに通る訳がない。
勘違いも甚だしい。