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ハイパフォーマンスの「ベンチマーク」 996型ポルシェ911 GT3(1) GT1用エンジンのヘッドを水冷化!

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ハイパフォーマンスの「ベンチマーク」 996型ポルシェ911 GT3(1) GT1用エンジンのヘッドを水冷化!

911 GT3の誕生25周年に当たる2024年

サプライズが苦手だったり、記念日を忘れがちなら、ポルシェ本社での仕事は向いていないかもしれない。ドイツ・シュツットガルトに拠点を置くスポーツカーメーカーは、節目節目での特別なモデルの考案を、欠くことはない。

【画像】ハイパフォーマンスの「ベンチマーク」 ポルシェ911 GT3 996型と992型 GT1も 全119枚

2023年には、911の誕生60周年がお祝いされた。ブランドにとっても、75周年という記念すべき年だった。2024年は、911 ターボの生誕50周年に当たる。祝賀イベントに参加した、という読者もいらっしゃるかもしれない。

だが今年は、もう1つ、911ファンにとって重要な節目でもある。911 GT3の誕生25周年に当たるからだ。当時996型だった911に、GT3が初設定されたのは1999年。それ以来、ハイパフォーマンスのベンチマークであり続けている。

これをお祝いするため、ドイツ・シュツットガルトのポルシェ・ミュージアムは、英国編集部をオーストリアへ招待してくれた。アルプス山脈へ、初代GT3を持ち込んで。開発プロジェクトを牽引した、ローランド・クスマウル氏にもお会いすることが叶った。

クスマウルは、40年間もポルシェで才能を発揮し続けた、生粋のエンジニア。パリ・ダカールラリーへの挑戦に、ワンメイク・カップカーの技術開発、プロトタイプマシンの908/03から956のテストまで、彼の功績は枚挙にいとまがない。

同社のGT部門を率いる現任のアンドレアス・プロイニンガー氏は、彼の実質的な後継者。「自分が持つクルマに関する知識はすべて、911に関する殆どは、彼から学んだものです」。と認めるほど。

水冷の3.4L水平対向エンジンを搭載した996

クスマウルとともに911 GT3の開発をリードしたのは、マーケティング部門のハルトムット・クリステン氏と、モータースポーツ部門のハーバート・アンフェラー氏。企業文化的な側面で、かなり挑戦的なプロジェクトだったらしい。

1980年代から1990年代初頭にかけて、ポルシェ(正式名称: Dr Ing hc F ポルシェAG)は、クリエイティブ・ワークショップのような体制にあったという。限定生産の高性能仕様は、生産効率を殆ど考慮せずに生み出されていた。

実際、964型の911 RSや、993型の911 GT2は、手作りに近い状態だった。生産コストは信じられないほど高く、価格も上昇した。それが、今でも特別なオーラを放つ理由の1つといえるだろう。

しかし、それは収益性と相反するものといえた。ポルシェのCEOへ、ヴェンデリン・ヴィーデキング氏が就任したのは1993年。彼は、非効率との戦いに挑み始めた。

部品の互換性を高め、生産の合理化が図られた。コスト削減が新たな指針の1つになった。同時に環境負荷の低減が求められ、水冷エンジンへの変更が決定。その頃、モータースポーツでの活躍は優先事項の低い位置にあった。

1997年に登場した996型では、水冷の3.4L水平対向エンジンを搭載。DOHC化され、4バルブ構成になっていたものの、ドライサンプ方式での潤滑は想定されていなかった。

911 GT1用ユニットのヘッドを水冷化

FIA GT3レース用のホモロゲーション・モデル開発に当たり、アンフェラーは戦闘力を疑問視した。そこで996用ユニットのアップデートではなく、レーシングカーの911 GT1用エンジンへ手を加え、ヘッドを水冷化するというアイデアをひらめく。

公道用モデルとの結びつきを強化することで、ブランド力の向上が期待できた。GT1マシンのユニットは、空冷の993用ユニットとエンジンブロックやクランクシャフトの設計を共有。996型の911 ターボ用としても利用可能だと、彼は考えたようだ。

また当時のGT1はトップカテゴリーといえ、大幅な改良が認められていた一方で、相当な予算が求められた。さらに、エンジンブロックにドライサンプ・タンクを固定するなど、GT3用ユニットを生み出すには、相応の開発費も必要だった。

複数の量産モデルへ応用することで、コストの分散化が見込めた。最終的には、若干評判の良くなかった996のイメージ向上にも繋がった。

1999年に、AUTOCARは996型の911 GT3へ初試乗。ステアリングホイールを握ったクリス・ハリス氏は、「最新の911が、快適性を求めて魂を売ったという批判があります。このGT3は、それに対するポルシェからの回答でしょう」。とまとめている。

アウトバーンで必要な優雅にうねるウイング

今回お借りしたのは、完璧な状態にあるガーズ・レッドの1台。ポルシェ・ミュージアムの所蔵車両だ。アルプスの鬱蒼とした山肌と、見事な補色関係を織りなす。

991や992型の911 GT3と比較すれば、容姿はだいぶ保守的。996型では、通常の911 カレラにもGT3と同じデザインのホイールとボディキットが提供されており、特別感は強くない。それでも、最新の技術が投入されたという孤高の雰囲気を漂わせる。

10スポークの2ピース・アルミホイールが、タイトにフェンダーへ収まる。フロントスプリッターは、歩道への乗り上げを躊躇するほど低い。モータースポーツ部門によってセットアップされた、凛々しさがある。

優雅にうねるリアウイングは、ボディと同色。最新のスワンネック・デザインほどシリアスではないが、クスマウルによる上層部への説得がなければ、量産には至らなかった。

「CEOは、ウイングが好きではありませんでした。醜いと感じたようです。ポルシェの顔とはいえません。付ける必要はあるのでしょうか。と反論されました」

「自分は、アウトバーンには必要だと主張しました。300km/hで車線変更するには、安定性と安全性のために、ダウンフォースは不可欠だと」。グレーのポロシャツを着た、クスマウルが目を細めながら振り返る。

空力的なバランスを整える、ガーニーフラップも実現させた。「これは、カレラ用のボディキットには設定がありません」

この続きは、996型ポルシェ911 GT3(2)にて。

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