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最強!?の助っ人が今年はST-5Fクラスに殴り込み! S耐 富士24時間レースはやっぱりドラマに溢れていた!

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最強!?の助っ人が今年はST-5Fクラスに殴り込み! S耐 富士24時間レースはやっぱりドラマに溢れていた!

 毎年数々のドラマが生まれるスーパー耐久富士24時間レース。もはやチーム毎にドラマがあると言っても過言ではない。2025年は大井貴之氏がST-5Fクラス「DXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2」に緊急参戦! その模様をレポートしていただいた。

文/写真:大井貴之

最強!?の助っ人が今年はST-5Fクラスに殴り込み! S耐 富士24時間レースはやっぱりドラマに溢れていた! 

【画像ギャラリー】ドキュメントS耐24時! トラブルに見舞われても最後まで可能性を捨てない! ST-5Fクラスの強豪DXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2(9枚)

今年はプライベートチームで助っ人参戦!

今回ドライブすることとなったST-5Fクラス17号車 DXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2

 今年で8年目となる富士スーパーテック24時間レースに急遽、助っ人として参戦した。
 マシンはST-5クラスで3連勝中のディーゼルエンジンを搭載するMAZDA2。ディーゼルエンジンというと働くクルマ用のエンジンというイメージだが、ル・マン24時間レースではAUDIが無敵の速さで黄金時代(2006~2016)を築いたように、ロングディスタンスになればなるほどディーゼルエンジンの戦闘力は上がる。FSW 24h耐久レース4連勝を賭けた闘いをチームの内側からレポートする。

 正式なエントリー名はDXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2。NOPRO(ノガミプロジェクト)は、マツダディーラーのマツダオート東京が立ち上げたモータースポーツ部門「MAZDA SPEED」設立メンバーで、最初はメカニックとして、1989年と1990年にはマツダワークスが放出した3ローターエンジンを搭載するプロトタイプレーシングカーMAZDA 757(IMSA GTP)ではドライバーとして参戦! 

 現在はチューニングショップとしてナンバー付きのマツダ車ユーザーを支えながらレース活動を続けている野上敏彦氏が運営するプライベートチームだ。

1.5Lディーゼルターボの17号車はST-5Fクラスで好調!

クラスが多い分、さまざまなクルマが混走するおもしろさがある

 世界の自動車メーカーがしのぎを削るGT3カテゴリーのレーシングカー(ST-X)やGT4カテゴリーのレーシングカー(ST-Z)、そして研究開発中の水素エンジンなど自動車の未来のためにメーカーの開発車両が走るST-Qと、年々華やかになっていくスーパー耐久シリーズ。

 このレースにおいて、日常的に街で見かけるクルマばかりのST-5はビジュアルもスピードも地味な100%脇役的存在ではあるが、今回のFSW24hのエントリー分布はST-X(GT3)が6台、ST-Z(GT4)が9台、ST-TCRが2台、ST-Qが6台、ST-1が2台、ST-2が8台、ST-3が4台、ST-4が9台、ST-5が14台。

 ST-5は他のカテゴリーに比べて参戦コストが安く年々エントリー台数が増加傾向。2025年からFWD車両がST-5F。FR車両がST-5Rという形で2つのクラスに分けられた人気のカテゴリーなのだ。

 今回ドライブしたMAZDA2ディーゼルは、1.5Lのディーゼルターボ。1.5L、NAのガソリンエンジン車に対しトルクは圧倒的で燃費的にも有利。

 しかし、性能調整のため最低重量は985kg。同クラスのガソリンエンジン組に対して65kg重い設定(GK5 / GS4型FITは960kg)。ちなみにロードスターはFWD勢との性能調整が必要なくなったことで最低重量が1015kgから1005kgに10kgダウンとなった。

初めてのクルマを運転するには!?

整備中の17号車

 急遽参戦が決まったこともあり、NOPRO MAZDA2を初めてドライブしたのは予選前日の木曜日。ドライバーが6人もいるため一人当たりの練習時間は短い。

 予選アタックをしないFドライバーとしては、木曜日の走行、そして予選日の最後に行われるE・Fドライバーのフリー走行で走りを整えて決勝レースに臨めばよいのだが、助っ人ドライバーとしては可能な限り短時間でマシンを理解し、燃費などのデータ取りや慣れていないドライバーの練習時間を作ることも重要な役割となる。

 そもそもエンジンも駆動系もすべてがフロントにフロントヘビーなFFのディーゼルエンジン車はスーパーフロントヘビー。ごくごく普通に走る分にはドシッと重たいフロントの接地は安定していて直進安定性も優れているのだが、フットワークという面ではハンディキャップを背負うことになる。

 しかもST-5クラスはFFもFRもタイヤサイズは190-570R15に統一されている。ちなみに190-570R15というのはレーシングタイヤのサイズ表記で、190はタイヤ幅。570はタイヤ外径。195/50R15とほぼ同じサイズイメージだ。

 マシンスペックから想定されるハンドリングはひたすらアンダーステア。100%我慢のドライビング覚悟をしていたのだが、NOPROのエースドライバー大谷選手が中心となって育て上げたMAZDA2のハンドリングは想像とは違ってコントローラブルなものだった。

いざ実走! 17号車の実力見せてもらおうじゃないの!

急遽参戦となったものの車両の特性を理解し即応していく必要がある

 アウトラップからピットインまで、ノーカットの映像をYouTube(@ohisan)に公開しているので是非観ていただきたい。タイム的には2分9秒台から始まり8秒台、7秒台と毎Lapごとに1秒ずつタイムを縮め計測4Lap目に6秒台。

 レースを走るための基本的な情報は収集出来たところでピットイン。そのハンドリング特性が映像的にもよく分かるのがコカコーラコーナーと名付けられた80Rのターン3。ステアリング操作とペダル操作の連携次第で弱アンダーからオーバーステアまで思い通り。

 もちろん、動画の3~4Lap目のようにラリーのようなオーバーステア進入を繰り返していたらリアタイヤを痛めてしまうが、絶妙な足回りセッティングによりリアタイヤのグリップは破綻することがない。このハンドリングがNOPRO号の強さを支えているのだと実感した。

 しかし、慣れが必要だと感じたのは静かさ。ターボとディーゼル用の触媒装置の効果によってびっくりするほど静か。ヘルメットを被り通信のためのイヤフォンをしているので、街を走るMAZDA2と同レベル?と思える程静かに走る。

 ディーゼルターボのトルクはとても低い回転で発揮されるため、回し過ぎはダメ。だからと言って回転を落としすぎてはダメ。エンジン音が静か過ぎるNOPRO号の場合は、常にタコメーターを気にする必要がある。

N1耐久時代にとった杵柄! 御覧じろ!

ドライビング技術については「クルマで遊ぼう! 大井貴之のSports Driving Labo.」で解説中!

 NOPRO号最大の武器は燃費。そのメリットを活かすためには、ライバルより長い距離をハイペースで走り続けるタイヤに優しいドライビングが求められる。しかもMAZDA2は根っからのファミリーカー。5速と6速は燃費のための巡航ギヤ。優しく扱わないと過給圧が引き上げられた大トルクに耐えられないのだという。

 しかもディーゼルエンジンはエンジンブレーキの効きが弱い。ということはブレーキの負担も大きくなる。兎にも角にも機械に優しく走らせなければならないという厄介な面を持っている。こうなると改造範囲が狭かったN1耐久時代に培った耐久テクニックの見せ所。

 ちなみに筆者は、2018年に開催されたFSW24hの第1回大会にトヨタ86で参戦し激戦のST-4でクラス優勝! その後BMW M2CS Racingで連続表彰台(3台しか居なかったが)、2023年はST-5にロードスターで参戦しポールポジションを獲得!(決勝は4位)と、まあまあ自慢出来る戦歴。

 今回もチームの4連覇に貢献することが出来そうな雰囲気だ。 

まさかのトラブル発生!? その時ドライバーは……

クルマにトラブルが起きたらどうするか? サーキット以外でも必要なっていく知識。後学のためぜひ視聴をオススメする

 しかし、午後の走行でトラブル発生! ピットアウトして1コーナーまでの加速中に突然パワーを失った。まるでカットオフスイッチを作動させたようにストンと……電気系のトラブルだと思った(その時の一部始終も公開しているので是非。特にトラブル発生後の対応については、サーキット走行をしているならもちろんだが、自動車専用道でトラブルが発生した時にも役に立ちます)のだが、実際はターボトラブル。

 痛かったのはこの時に通信トラブルも発生。トラブル発生と同時に開始したピットへの連絡が届いていなかった。結果、タービンが破損している状態でキルスイッチをON/OFFしてみたり、燃料ポンプを切り替えてみたり何度も再始動を試みたことが仇となり、破損したパーツの破片を吸い込んでしまいエンジン本体までダメージが及んでしまった。

 しかし、長年このディーゼルと付き合っているNOPROチーム、動揺も見せず手際良く各部をチェックしエンジン交換を開始した。

いよいよ予選! よみがえれ17号車!

予選前の17号車

 そして金曜日、予選。スーパー耐久の予選はAドライバーとBドライバーの合算タイムでグリッドが決まる。決勝レースは24時間の長丁場。予選のポジションなどハッキリ言って大した問題ではないのだが、特に木曜日の午前のセッションしか走れなかったNOPROチームとしては、決勝レースに向けて6人のドライバー全員の走りを整えるための重要な時間なのだ。

 まずはAドライバー予選。NOPRO号のAドライバー加藤選手は前日の練習走行を走っていないので、これがこの週末の初走行。新しいエンジンの調子を確かめながら優しくウオームアップ。次第にペースを上げクラス3番手のタイムをマーク! NOPRO号は見事に蘇った。

 続いてBドライバー予選。小西選手がコースインした直後、再びトラブル発生! どうやらまた同じ問題が起きてしまったようなのだ。トラブル発生のタイミングもコースイン直後のアウトラップ。結局タイムを残すことが出来たのはAドライバーのみ。

 嘆願書によって決勝レースへの出走は認められたのだが、まだ原因が分かっていないことが大問題。症状としてはターボの過給圧制御が上手くいかずタービンが自爆してしまうトラブル。考えられるのはセンサー不良やアース不良。こうなったら交換出来るパーツを片っ端から交換するしかない。

最後の最後まであきらめない、それがレース

残された時間のなかでできる限りを尽くす。まさにプロの姿なのだ

 そして決勝日の朝、30分間のフリー走行で再び息を吹き返したNOPRO号は、ウエットコンディションの中、小西選手のドライブでトップタイムをマーク! 続いてEドライバーの近藤選手がコースインするが、また同じトラブル発生。トラブルが出るタイミングはいつもコースイン直後。今回は、センサー類はもちろんエンジンを制御するECUも交換していたため万事休す。

 しかし、NOPROチームのメカは諦めず、部品を調達し作業に入った。

 昼を回った頃から雷雨となりスタート進行が1時間ディレイ。NOPROチームはグリッドに並ばずピットスタートを選択。最後の最後、時間が許す限り電気系をチェック。チーム全員が祈る気持ちでピットロード出口へと送り出した。

 この時点でも筆者は諦めていなかった。原因不明の状態のままで走らせればまた同じトラブルに見舞われる可能性は高いが、交換作業によって直ってしまう可能性もゼロではない。直ってくれさえすれば……。

無念の0Lap、それでもドラマがある

無念の決勝0Lapで終了。しかしだからといって無駄だったわけではない。この経験はつぎのラウンドで活かされる

 まあ、そんなミラクルな話はそうそう起きるものではありません。ということで2025年のFSW24hは0Lapにて終了。応援してくださった皆さまを楽しませることが出来ず残念無念! 

 優勝候補を失ったST-5Fは、予選で異次元の速さを見せたTHE BRIDE FITが圧倒的なスピードでトップを快走していたが、他車との接触アクシデントにより後退。SCスタートのタイミングでいち早くメインテナンスタイムを消化するという勝負に出たYAMATO FITが好走を見せるが失速。

 後半はSAKAE MOTORSPORT FIT(公団ちゃん)とアンドリーガルMoty’s FITという北海道チームの一騎打ちという展開となったが、アンドリーガル号が2Lapの差をつけて優勝! ロードスターが走るST-5Rクラスは村上モータースが制した。

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文:ベストカーWeb ベストカーWeb
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