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最新の環境性能か有無を言わさぬ戦闘力か? 958型ポルシェ カイエンのベストバイを探る 【Playback GENROQ 2017】

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最新の環境性能か有無を言わさぬ戦闘力か? 958型ポルシェ カイエンのベストバイを探る 【Playback GENROQ 2017】

Porsche Cayenne S E-Hybrid × Cayenne GTS

ポルシェ カイエンS Eハイブリッド × カイエン GTS

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カイエンの“柔”と“剛”

ハイエンドSUVの先駆けであり、ポルシェの躍進を支えてきたカイエン。現行の958型へと進化し、さらにマイナーチェンジから3年を数え、その完成度はこの2017年型モデルで頂点に達している。熟成極まった958型カイエンの、好対照な2台を試乗に連れ出した。

「“スポーツマインド”と“最先端技術”。ポルシェブランドの柱を体現する2台」

昨年あたりから新たなカイエンのスパイショットをちょくちょく見かけるようになり、パナメーラは生まれ変わってしまった。そんな2017年の春にあって、モデルライフ後期を迎えたカイエンを選ぶとしたら、ベストバイはどのモデルなのだろう?

この期に及んでベーシックなカイエンやカイエンSでは、わざわざ手を出すほどの個性が感じられないのは筆者だけだろうか。一方、見た目のインパクトとか圧倒的な動力性能追求、というコトならターボやターボSが俎上に上がるが、だったら新型が出るまで待つことが賢明だろう。

しっかりと熟成の跡が感じられ、なおかつキャラが際立っていそう、という理由によって今回はカイエンS  Eハイブリッドとカイエン GTSの2台をチョイスしてみた。

「久しぶりにカイエンをドライブしてみると、想像以上に取り回しがしやすい」

箱根に至る道中、最初にドライブしたのはEハイブリッドである。サテンプラチナ仕上げの専用ホイールを備えたプラチナムエディションというお洒落な1台だ。こちらはプラグイン・ハイブリッド車なので、充電器でバッテリーを満タンにすれば30kmほどの距離を電力だけで走ることができる──と謳われているが、この手の公称スペックは大袈裟である場合が多い。今回の試乗で実感したEVモードの航続距離は23km程度であることを先に記しておこう。

最近マカンのステアリングを握ることが多かったこともあり、久しぶりにカイエンをドライブしてみると、想像以上に取り回しがしやすいことに気づいた。着座位置が高く扱いやすいカイエンと、低姿勢だが思いの他デカくて小回りが利かないマカン、という意外な図式である。

「ハイブリッドならではの静かな立ち振る舞いに感心させられた」

ごくごく常識的なペースで箱根に向かう道中、感心させられたのはハイブリッドならではの静かな立ち振る舞いだった。発進の際は必ず電気モーターによる加速から始まり、気づかないうちにガソリンに切り替わっているという所作がいい。これがアイドルストップ車だと、発進前にブルンッとエンジンが掛かって騒々しい。一方ハイブリッド車はスロットルを閉じると回生による減速Gが急に立ち上がるクルマも少なくないが、カイエンS Eハイブリッドは減速の具合も実にナチュラル。微かにブレーキペダルに足を置くと、さらに強く回生が行われ、グングンとバッテリー残量が増えていく。減速の度に得をしたような気分になれるのはハイブリッド特有の感覚である。

優等生のEハイブリッドだが、ワインディングでは勝手が違った。コーナーの立ち上がりでパワーが思うようについてこないし、アウディ由来の3.0リッターV6スーパーチャージドエンジンも高回転域ではザラついた印象に終始する。トランクルームの床下にスーツケースほどのバッテリーが入っている重みが軽快感をスポイルしていることもヒシヒシと感じる。おおよそ「ポルシェ」という響きから想像するスポーティな乗り物ではないのである。

「これぞポルシェ! という胸のすくような走りを披露してくれたGTS」

山道の途中で乗り換えたカイエン GTSの守備範囲はEハイブリッドとは完全に異なり、これぞポルシェ! という胸のすくような走りを披露してくれた。かつてGTSを名乗るポルシェは自然吸気の最上級という不文律があったのだが、ダウンサイジング全盛の昨今なので、カイエン GTSが搭載する自社開発の3.6リッターV6はもちろんターボ過給されている。とはいえスロットルアクションに喜々として応えるレスポンスはまるで自然吸気のそれだ。

カタログスペックによれば、エンジンとモーター合わせて416psを発生するEハイブリッドの0-100km/h加速は5.9秒、440psのGTSは5.2秒となる。直線加速の結果でしかないこのタイム差から両車のドライバビリティの違いを看取することは難しいのである。

「2017年モデルのカイエン GTSはいよいよ完成の域に達している」

GTSはパワーのツキがいいのでハンドリングにも生気が漲っている。ステアリングを切り込めば、塊り感の高いボディはミシリとも言わず軽やかに旋回し、とても2トン超えのSUVをドライブしている気にさせない。

以前に試乗した、デビューしたてのカイエン GTSは不器用な走りをパワーでごまかすような部分が無きにしも非ずで、ここまでの走りのクオリティは持ち合わせていなかった。スポーツカーひと筋としてやってきたポルシェがSUVを造るのであればかくあるべし。2017年モデルのカイエン GTSはいよいよ完成の域に達しているのである。

「2台の熟成具合はテッパンで、個性もしっかりと際立っている」

ここまで読み進めると、勝負でもないのにGTS圧勝の雰囲気濃厚なわけだが、実際に自らのアシとして考えた場合に気になるのはカイエンS Eハイブリッドの方だ。これはつまり、ポルシェというブランドに何を求めるのか、という部分に繋がってくる。伝統的なスポーツカー・ブランドとしてのポルシェと、先端技術のポルシェとでも言うべきか。

前者はスポーツカーライクな走りを楽しみたくて、そしてカイエン GTS1台で全方位的にコトを済ませてしまいたい人向き。一方、Eハイブリッド推しの後者は平日の買い物や駅への送り迎えなど近場の用事をEV走行でこなし、週末に家族で遠出するような人向け、ということになる。実際にそうやって利用せず、自宅に充電設備がないのであれば、Eハイブリッドはちょっとだけ燃費のいい、おとなしいカイエンに過ぎないのである。

個人的にはおとなしくていいのである。2トンオーバーのSUVで家族を乗せて山道を飛ばすことも、たぶんしないだろう。ライバルよりクオリティが高くて洗練されているハイブリッド車と、頭を使いながら付き合いたいのだ。それに山道でスポーツカーライクな走りを楽しみたければ、それはスポーツカーで享受すればいい、というタイプなのだ。と言ったらカイエンというクルマの沽券に関わるだろうか。

ともあれ、今回の2台の熟成具合はテッパンで、個性もしっかりと際立っている。今一度ステアリングを握ってみる価値は十分にあるはずだ。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/小宮岩男(Iwao KOMIYA/iZM)

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ カイエンS Eハイブリッド プラチナムエディション

ボディサイズ:全長4855 全幅1940 全高1710mm
ホイールベース:2895mm
トレッド:前1655 後1670mm
車両重量:2380kg
エンジン:V型6気筒スーパーチャージャー
ボア×ストローク:84.5×89mm
圧縮比:10.5
総排気量:2994cc
最高出力:245kW(333ps)/5500-6500rpm
最大トルク:440Nm(44.9kgm)/3000-5250rpm
モーター:永久励磁型同期モーター
最高出力:70kW(95ps)/2200-2600rpm
最大トルク:310Nm(31.6kgm)/1700rpm
バッテリー:リチウムイオン
容量:10.8kWh
システム出力
最高出力:306kW(416ps)/5500rpm
最大トルク:590Nm(60.2kgm)/1250-4000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後255/55R18(8J)
最高速度:243km/h
0-100km/h加速:5.9秒
環境性能(JC08モード)
ハイブリッド燃料消費量:11.9km/L
一充電走行距離:29.9km
車両本体価格:1257万円

ポルシェ カイエン GTS

ボディサイズ:全長4855 全幅1955 全高1690mm
ホイールベース:2895mm
トレッド:前1660 後1680mm
車両重量:2170kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
ボア×ストローク:96×83mm
圧縮比:10.5
総排気量:3604cc
最高出力:324kW(440ps)/6000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1600-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後275/45R20(9.5J)
最高速度:262km/h
0-100km/h加速:5.2秒
環境性能(JC08モード)
燃料消費率:9.9km/L
車両本体価格:1424万円

※GENROQ 2017年 5月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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