2022年1月13日、トヨタはミドルサイズミニバン「ノア」と「ヴォクシー」のフルモデルチェンジを発表、同日より発売開始した。先代の80系ノア/ヴォクシーがデビューしたのは2014年1月、2021年はモデル末期ながら、ノアは4万4211台、ヴォクシーは7万0085万台も売れていた超人気モデルだ。
ミドルサイズミニバンといえば、つい先日の1月7日、ホンダの「ステップワゴン」の新型が初公開されたばかり。また、日産の「セレナ」も2022年内のフルモデルチェンジが噂されている。
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2021年はトヨタヴォクシーの勝利となった、ミドルサイズミニバン界。フルモデルチェンジ後もトヨタの天下が続くのか、新型ノア/ヴォクシーの詳細をお伝えしていこう。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、ベストカーWEB編集部/撮影:中里慎一郎
[gallink]
エクステリアに目が行きがちだが、中身が大きくブラッシュアップ
歴代4代目となる新型ノア/ヴォクシーの最大のポイントは、クルマの骨格となるプラットフォームにカローラシリーズやプリウスにも使ってきた、TNGAプラットフォーム(GA-C)を採用したこと。これによって、軽量でありながら高剛性化したボディとなり、上質な乗り心地を引き出すことに成功したという。
また、優れたパッケージングや、使い勝手のよさといった、従来モデルのいいところを引き継いだうえで、最新の先進装備の数々を投入したことで、ミニバンとしての魅力を更に引き上げてきた。ユーザーの声を真摯に聴き、2列目のストレート超ロングスライドや、ユニバーサルステップ、フリーストップバックドア、3列目ワンタッチホールドシートなど、課題を克服し、「真っ当な正常進化」をしたという印象だ。
新型では、全長(4695mm)とホイールベース(2850mm)は維持したまま、全幅を1730mm(先代型の標準仕様は1695mm、エアロ仕様は1735mm)で統一、全高は1895mm(先代は1825mm)と、70mmも上げてきた。フロア面の地上高も20mmほど上がってはいるが、車内高もしっかり広がっており、さらにボディサイド面を立たせたことで、頭部の左右クリアランスも片側で35mmも広がり、開放感が増している。特に2列目シート、そして3列目シートから見たときの視界が、半端なく広くなったことは、すぐに体感できた。
プラットフォーム更新と併せて、ハイブリッドの高出力モーターやパワーコントロールユニット、ハイブリッド用バッテリー、E-Fourシステムも一新させている。「貴重なモデル更新のタイミングでしたので出来ることはすべてやり切りました」(トヨタ開発担当者)というように、燃費や走りの上でも、飛躍的に性能向上させてきた。チャレンジングなエクステリアデザインに目を奪われてしまうが、中身の変化の方が、圧倒的に進化度は大きいようだ。
正統派のノア、過激さを極めたヴォクシー
新型ノアのキーワードは、標準モデルが「堂々・モダン」、そしてエアロモデルが「王道・アグレッシブ」。新型ヴォクシーは「先鋭・独創」。エクステリアデザインは、まさにそのとおりの仕上がりとなっている。
新型ノアは先代と同様、標準モデルとエアロモデルを用意。標準モデルは、フロントグリルがボディ同色となり、落ち着いた印象を受けるが、エアロモデルは、フロントバンパーからサイドのグリルまでが、メッキ化とブラックアウト化されたことで、アルファードのエアロモデルのようになった。先代よりも新型ノアが大きく見えたのは、プラス70mmされた全高が原因だろう(とはいえ実寸で高くなった部分はほぼ「シャークフィンアンテナ部分」とのこと)。横にアルファード(全高1935mm)が並んでも、まったく引けを取らない迫力だ。
新型ノアの標準モデル。フロントバンパーのグリルデザインが異なり、大人しくクリーンなイメージとなっていた
新型ノアのエアロモデル。4695×1730×1895(全長×全幅×全高)mm、ホイールベースは2850mm。5ナンバーサイズ仕様はなくなり、全車3ナンバー化した。「5ナンバーだから購入する、というお客さんは少ない」という話だが…ちょっと残念
また、新型ヴォクシーの、プレデターのような独創的なフロントマスクは、これまでのトヨタ車の中でも随一といっていい、攻め込んだデザインだ。標準モデルがないので全車がこのデザインとなる。
歴代ノア/ヴォクシーの開発を担当してきたチーフエンジニアであるトヨタ車体開発本部長の水澗英紀氏(基幹車種のチーフエンジニアがトヨタ車体所属というのも異例。それだけ今回の新型ノア/ヴォクシーの車体開発には気合が入っているということ)は、「新型では、さらにお客様の間口を広げていきたい。新型ノアは王道を極める道で攻め、新型ヴォクシーではあえて好き嫌いが分かれそうなチャレンジングなデザインとして、人とは異なるモデルを求める若者や新たな顧客へも届けていきたい」と話す。かなり驚かされたが、そういう意図ならば、これは正解なのかもしれない。
新型ヴォクシー。ボディサイズは新型ノアと同一。フロントバンパー、ヘッドライト、テールランプ、ホイールのデザインなどがノアと異なる。「あえてアグレッシブなフロントフェイスとしており、好き嫌いが大きく分かれるがそれこそが狙い」とのこと
先代では縦長だったテールランプは、新型ノアはL字型、新型ヴォクシーでは2本の水平ライン形状となった。ぱっと見、アルファードやヴェルファイアのように見えるのは、リアガラスの面積が広がったことが要因だ。リアスタイルからも、クルマがひと回りほど大きくなったように見え、明らかに迫力が増している。
各所に工夫が凝らされたインテリアは「お見事」
先代では、従来のメーター類の他に、ダッシュボードの中央上部にサブモニターがあったが、新型ではサブモニターを廃止。代わりにインパネの最上段には、10.5インチの大型ディスプレイオーディオが配置された。このレイアウトの方向性は、基本的にはヤリスやアクアと同じだ。コネクティッドといったインフォテイメントが一層重要となってきたことで、一等席にモニターが鎮座したかたちとなった。
その右側に、大きなスタートスイッチがあるのは意外だったが、元々スタートスイッチがあったステアリング右側後方には、常設のドリンクホルダーが新たに設定されており、優先順位はドリンクホルダーだった、ということだろう。
スタリングホイールは手触りがよく、非常に上質な印象。シフトノブは、ガソリン仕様ではゲート式だが、ハイブリッドではプリウスと同タイプのセンターリターン式(Dレンジに入れるには右へ倒して下に落とす)だ。シフトノブの左側にあるスペースにはスマホを立てかけるエリアが設けられていたり、助手席にはティッシュを置くスペースも。全体的にシンプルなレイアウトなので、直感的に使いやすい印象だ。
2列目のストレート超ロングスライドでは、これまで前後左右にもスライドしていたタイプから、前後方向のみに絞ったことで、サイドテーブルを展開していても動かせるようになった。シートレールに複雑な動きを持たせるよりも、シンプルな動きの方が誰でも使いやすい、という考えから決めたそう。シートフレームを設計しなおし、後輪のホイールハウスとのクリアランスをギリギリまで攻めたことで、実現できた。
また、バックドア開閉のスイッチが、バックドア側からボディサイド側に移動しており、バックドアの開き具合を見ながら開閉できるというアイディアも秀逸だった。担当者によると、バックドアは70cmくらい開けば、大抵の荷物は載せ降ろしできる。後ろのスペースが狭いところでは、横から操作するのが最適だと考えたそうだ。
さらにはスライドドアのユニバーサルステップ(助手席側のみ)や、フリーストップバックドアなど、工夫が凝らされており、軽い力で跳ね上げて、固定までできる3列目ワンタッチホールドシートの出来は、跳ね上げタイプの「最終形態」と言ってよいだろう。3列目を床下収納できるタイプもいいのだが、荷室下の広大な収納スペースがある分、コチラの方が便利かもしれない。補器バッテリーをエンジンルーム内に移動したことでハイブリッドでも収納スペースが丸空きとなったのは嬉しいところだ。
ライバルを圧倒する、驚異的な低燃費
パワートレインは、2.0リッター直列4気筒ガソリンエンジンと、1.8リッター直列4気筒シリーズパラレルハイブリッドの2種類。前者はハリアーなどにも使っているエンジンであり、ダイレクトシフトCVTを組み合わせることで、ガソリン車としてクラストプレベルのWLCTモード燃費15.1km/Lを達成する。だが、今回注目すべきはハイブリッドの方。ノア/ヴォクシーを頭出しとして、E-Fourを含めた電動パワーモジュールを、すべて新規開発したという。
トヨタ社内では「第5世代の新パワーユニット」と位置付ける本機は、モーター出力16%向上というバッテリー出力拡大と、徹底したユニット・制御の効率化によって、ダイレクトで心地よい加速フィールと、クラストップレベルの低燃費23.4km/L(WLTCモード燃費)を実現。ちなみに日産セレナe-POWERは18.0km/L、ホンダステップワゴンe:HEVは20.0km/L。これらが今後登場する新モデルで、どのくらいの燃費性能を実現してくるかは楽しみなところだ。
バッテリーに関しては、アクアで世界初投入したバイポーラ型ニッケル水素電池ではなく、従来型のリチウム電池を改良したものだという。パワートレイン製品企画部主査の杉山正隆氏によると、「(バイポーラ型も)候補としてあったが、質量(バイポーラよりも同容量で15kg軽量)、電気回生、そしてコストの面で比較した上で、従来のリチウム電池のほうが、新型ノア/ヴォクシーに適していると判断し、適材適所とした」とのこと。
さらに、ユニット刷新だけでなく、使用するモーターオイルの粘度特性も踏み込んで専用開発している。従来は踏み込まなかったところまで突っ込んで、徹底的につくりこんでいるようだ。
MIRAIやLSの高額先進装備を、ノア/ヴォクに破格で!!
全車速追従型レーダークルーズコントロールやLTA(レーントレーシングアシスト)といった、先進支援技術は標準装備。新型ノア/ヴォクシーではさらに、緊急時操舵支援(アクティブ操舵)や、レーンチェンジアシスト(自動車専用道でウィンカー操作をきっかけに車線変更)、そしてアドバンスドドライブ(自動車専用道での渋滞時にハンズオフが可能)までもが用意されている。
MIRAIやレクサスLSで、60万円でオプション用意されているような新技術が、最量販ミニバンに搭載、しかも13万4000円(パッケージオプション)という破格の価格で用意されているのだから驚きだ。
また、アクアにも搭載された、シフト操作も制御してくれるアドバンスドパークも採用。駐車スペースの横に停車したあとは、「起動」と「開始」の2プッシュするだけで、クルマがステアリングや後退へのシフトチェンジまで操作してくれるので、ドライバーはブレーキ操作のみすればよい。
このような「駐車支援システム」は、これまでいろんなメーカーのものを何台も試してきたが、どれも動作が遅く、満足いく出来ではなかった。だが、今回のシステムは、驚くほど動作が早く、積極的に使いたくなる出来だった。駐車が苦手な方にとっては、心強い味方となるだろう。
最強のモデルに仕上がった!!
目標台数はノアが8100台/月、ヴォクシーが5400台/月とのこと。トヨタとしては、ノアをミドルクラスミニバン販売の主力としたいようだ。だが、ブランド力はヴォクシーの方が強い。狙い通りに売れてくれるかは未知数だが、目標販売台数は余裕で越えてくるだろう。
見た目の変化以上に、中身の進化が想像を超えている新型ノア/ヴォクシー。新世代ミドルクラスミニバンの更新の一番手は、最強のモデルに仕上がった。これに対抗するホンダステップワゴン、日産セレナも、生半可な改良では追いつくことはできないだろう。2022年のミニバン大戦争が、いよいよ幕開けする。
先代型のヴォクシーZS 煌 III (8人乗り)が290万円だったから、かなり値上がり(約30万~40万円か)した計算になる。装備内容や技術進化を考えると妥当な価格ともいえる
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