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「ホンダ・アヴァンシア」って覚えていますか? 意欲作だったのに見事に「空振り」した上級ワゴン

掲載 更新 42
「ホンダ・アヴァンシア」って覚えていますか? 意欲作だったのに見事に「空振り」した上級ワゴン

パッセンジャーのための上級ワゴンとして新ジャンルを提案

 1999年9月、ホンダの上級ワゴンとして2.3L 直4と3L V6を搭載した「アヴァンシア」がデビューした。販売店はアコードやレジェンドを取り扱うクリオ店で、6代目アコードにワゴンが設定されていたが、5ナンバーサイズであったこともあり、ひとクラス上の『リムジン空間&リムジン・インテリア』を新たに提案。これまでにない商品力として押し出したモデルであった。 特徴はホンダが「アーチキャビン・フォルム」と呼ぶ、かつてのアコード・エアロデッキを彷彿とさせるスタイリングだ。快適空間+上質空間+運転空間を合わせたものをリムジン空間=クラブデッキと称し、荷物を積むツーリングワゴンというよりも乗員のための居住性にこだわった新しいジャンルとして登場した。

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高速道路走行時に車速/車間を保持するクルコンも装備

 インテリアの特徴は、前後席4人が平等にゆったり寛げることを目指した快適空間。前席用の大型アームレストと移動可能かつ開放感あるセンターウォークスルー&フラットフロア、リヤシートのテーブルを装備する。さらに、スライド&リクライニング機構を持つ後席、そして後席用ベンチレーションシステムなど、乗員すべてのためのコンフォート性を確保した。

 トップライト・ウィングハッチと名付けられたリヤゲートは、ルーフ部分から大きく開くことで積載性を高めており、当時のコンパクトミニバン並みの室内空間と積載性の良さを上質空間としている。

 運転席は少し高めのアイポイントとホンダ初のゲート式インパネシフト5速AT、厚板ガラスや上級モデルの防音処理なども注目ポイント。加えて先進の車速/車間制御システムの「IHCC(インテリジェント・ハイウェイ・クルーズ・コントロール)」も装備され、エグゼクティブな仕上がりであった。

オーバーフェンダー採用のクロスオーバー的モデルもラインアップ

 スタンダードモデルのボディサイズは全長4700mm×全幅1790mm×全高1500mmだ。さらに、現在のクロスオーバーSUV的な「L-4」(4速AT)グレードも設定されていた。このモデルには専用バンパーやワイドフェンダー、16インチタイヤやリアルタイム4WDが採用され、こちらは4795mm×1810mm×1545mmというボディサイズ。例えるなら、現在のフィットやフリードに設定される「クロスター」のご先祖様的存在であったとも言える。

 また、搭載エンジンは主要部品を新設計したF23A型2.3L VTECで、ピストン形状を変更したほか新表面処理を施したことで圧縮比を向上。EGRの採用で排ガスと燃費を向上させ、最高出力150ps/5800rpm、最大トルク21.0kg-m/4800rpmの性能を発揮する。J30A型V6は共鳴付高慣性吸気マニホールドなどで最高出力215ps/5800rpm、最大トルク27.7kg-m/5000rpmを発揮するなど、十分な性能を確保していた。

 サスペンションはフロントにダブルウィッシュボーン式、リヤは5リンク・ダブルウィッシュボーン式。ブレーキは前後ともベンチレーテッドディスク式ながら、リヤにサイドブレーキ用のドラムインディスクを奢っている。後席には3席すべてに3点式シートベルトを装備したほか、衝突時にワイパーが脱落して衝撃を吸収する歩行者障害軽減ボディを採用。多方面での安全性に考慮した設計がなされていた。

販売は堅調にスタートするもその後苦戦で一代限りで絶版

 こうして新ジャンルを切り開こうとしたアヴァンシア。ホンダらしさを感じさせるルックスと上質なインテリア、広い室内空間によって、大柄なボディながら取り回しの良さとバランスに優れた走りで大人気になるはずだった。メディアの評価は非常に高かったのだが、月間目標台数は3000台と控えめで大ヒットとはならなかったものの、堅調に販売台数を伸ばしていた。

 発売から半年後の2000年2月にはV6仕様にも4WDを追加し、同年9月にはプレミアム・サウンドシステムやボディ同色グリル、本革巻きステアリングホイールを標準装備した特別仕様車「フリーウェイ」を設定。2001年9月のマイナーチェンジでは車高を15mm下げてストラット・タワーバーやパフォーマンス・ロッドを追加して、走りや空力を高めた「ヌーベルバーグ」を追加した。

 後席用液晶モニターやエアロパーツ、木目調パネルの採用拡大などが図られ、商品力が一段と向上。だが月間目標台数は800台と空振りに。2003年には装備を充実させながらも価格を値下げした「プライベート・スタイル」を設定するも、アヴァンシアはこの一代限りで終了となる。

コンセプトは間違ってなかったが時代を先取りし過ぎた!? 

 冒頭でも触れたが、このアヴァンシアはスタイリングだけを見ていくと、かつてのアコード・エアロデッキの進化型と感じさせるホンダらしさが詰まっていた。インテリアを見れば、本木目を使ったインスパイアなどからは後退しているとも見られるが、木目調パネルのあしらいも良く、合成皮革カブロン+ファブリックのシートは上質感があるものを採用。

 センターウォークスルーや後席リクライニング機構などの使い勝手にも優れ、静粛性を高めた室内は上質であり、最高出力を追わずに実用性重視のエンジンはキャラクターにあっていて走りの質も申し分なかった。

 最低地上高を高めた「L-4」や、低重心ローダウン・サスペンションの「ヌーベルバーグ」はスポーティかつエレガンスで先進性が満載。あと少しだけ時代が違っていれば、現在もアヴァンシアというモデルが売られていたに違いない。アヴァンシアはそれほど意欲的で先進的なモデルであった。

ミニバンブームが確立され人気はワゴンからミニバンへ

 ただ時代はオデッセイやステップワゴンが売れていて、2000年10月に初代ストリームが販売開始。ミニバンブームがひと段落しそうな時代に、ホンダは5ナンバーサイズのヒンジドア仕様のプチミニバン「ストリーム」で新時代を切り開いた。 その流れは現在のホンダ・フリードとトヨタ・シエンタにつながるわけだが、それはまた別の話。新しきコンセプトや走行性能、優れた商品力であっても時代の流れや流行りに乗り損なうと『名車だったのに……』となってしまう。

 自動車ビジネスの難しさを物語る代表格の1台が、ホンダ・アヴァンシアだったと言っても過言ではないだろう。

■ホンダ・アヴァンシア L(TA1型)主要諸元

◯全長×全幅×全高=4700mm×1790mm×1500mm

◯ホイールベース=2765mm

◯トレッド 前/後:1555mm/1540mm

◯車両重量:1500kg

◯乗車定員:5名

◯最小回転半径:5.6m

◯室内長×室内幅×室内高:2055mm×1480mm×1215mm

◯エンジン:F23A型SOHC直列4気筒16バルブ

◯総排気量:2253cc

◯最高出力:150ps/5800rpm

◯最大トルク 21.0kg-m/4800rpm

◯ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク

◯サスペンション 前後:ダブルウィッシュボーン式

◯タイヤサイズ  前後:195/65R15

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みんなのコメント

42件
  • 初期のローバー800から、オペルのシグナム、ルノーのヴェルサティスなどのような大型ハッチバックデザインの上級車が日本市場では受け入れられず………なだけで、はじめはワゴンとは言ってなかったような?
  • 車検で100万コース、故障パーツも製造終了在庫なし、他車パーツ流用するにも情報がないから現物合わせ、、、泣く泣く手放したら、こんな記事出してまた未練が、、、
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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