■人気のコンパクトカー3台のルーツを振り返る
近年、日本の自動車市場で高いシェアを誇っているのが軽自動車です。また、世界的な人気の高まりと同様に、日本でもヒットを続けているSUVは各メーカーから続々と新型車がデビューしており、常に注目されています。
一方、古くから「大衆車」というポジションを担い、いまも登録車のトップセラーに君臨しているのがコンパクトカーで、ミニバンと同様に人気車種として定着しました。
コンパクトカーは文字どおり小さな車体ながら居住性に優れ、安価な価格と低燃費により経済性が高く、余裕ある走りなど、総合的に優等生なクルマといえます。
そこで、現在人気のコンパクトカー3台の初代はどんなクルマだったか、振り返ってみます。
●トヨタ「ヴィッツ」
長くトヨタを代表するコンパクトカーだった「ヴィッツ」は、1998年のパリモーターショーで「ヤリス」の名でデビューし、1999年1月に国内で発売されました。
「スターレット」の実質的な後継車として登場した初代ヴィッツは、プラットフォームをはじめ、エンジンに至るまで基本的なコンポーネントのすべてが新開発されたモデルです。
ボディサイズは全長3610mm×全幅1660mm×全高1500mm、ホイールベース2370mmと、現在の水準からするとかなりコンパクトで、ボディタイプは3ドアハッチバックと5ドアハッチバックの2種類を設定。
外観のデザインは曲面を多用して丸みを帯びた張りのあるフォルムを採用し、小さいながらも安定感のある印象です。
また内装ではクラスを超えた広い居住スペースを確保しつつ、外観と同様に曲面を多用したインパネまわりにはセンターメーターを配置し、収納スペースも多く、実用的かつ機能的なデザインとなっています。
発売当初、パワーユニットは70馬力の1リッター直列4気筒エンジンのみで、トランスミッションは5速MTと4速ATを設定。決してパワフルではありませんでしたが、すべてのグレードが800kg台の軽量な車体と相まって、キビキビとした走りを披露しました。
足まわりはフロントがストラット、リアがトーションビームというコンパクトカーでは標準的なサスペンション形式を採用し、コストダウンと優れた走行安定性を両立。
10・15モード燃費で22.5km/L(「B」MT車)と、クラストップの低燃費を誇り、価格(消費税抜)は83万円から、量販グレードでも92万8000円とリーズナブルで、高い経済性から日本のみならず、欧州でも大ヒットを記録しました。
欧州ではフランス工場でも生産され、2000年には日本車としては史上2番目となる「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。「1999-2000年 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の受賞と併せ、ダブルタイトルを獲得する快挙を成し遂げました。
後に、1.3リッター、1.5リッターエンジン車を追加し、スポーティな「RS」グレードが設定されるなど、バリエーションを拡充。
ビジネスユースから普段使い、スポーツ走行まで、あらゆるニーズに対応するコンパクトカーとして世代を重ねてもヒットし続け、2020年2月に4代目の登場と同時に、車名をグローバルで統一する「ヤリス」に改められ、現在に至ります。
●日産「ノート」
日産は2005年1月に、「マーチ」の上位車種として初代「ノート」を発売しました。爽快な走りと、使いやすい装備で自在に楽しめるクルマをコンセプトに開発。
ボディサイズは全長3990mm×全幅1690mm×全高1535mm、ホイールベース2600mmと、国内のコンパクトカーとしては標準的な大きさで、外観はミニバンを縮めたようなショートノーズの5ドアハッチバックを採用し、柔らかなルーフラインと、個性的なテールランプが印象的です。
室内はゆとりのある居住空間と十分な荷室を両立し、様々なシーンで使いやすい「2段マルチトランク」を採用するなど、実用性も高められていました。
発売当初、エンジン新開発の1.5リッター直列4気筒で最高出力109馬力を発揮。トランスミッションは2WDのFFがCVT、4WDが4速ATを設定し、余裕ある快適な走りを実現。
2008年には1.6リッターエンジン車を追加ラインナップし、最高出力は109馬力と1.5リッターと同一ながら5速MTを設定することで、スポーティグレードと位置づけられていました。
さらに2010年の改良では、発進・加速時にエコドライブのサポートを行うECOモード機能を2WD車全車に標準設定するなど、環境性能に対する取り組みでも注目を集めます。
また、人気アニメーション「The World of GOLDEN EGGS」とコラボレーションしたテレビCMが好評で、2009年には「低燃費少女ハイジ」のCMが話題となりました。
初代ノートはライバル車に対して決定的なアドバンテージが無かったことから、大ヒットするには至りませんでしたが、2代目で登場した「e-POWER」によって、クラストップのセールスを獲得するほどの大ヒットを記録したのは記憶に新しいところです。
2020年12月に発売された現行モデルの3代目では、全車e-POWERとなったことで、さらなるエコ性能の向上とモーターならではのパワフルな走りに磨きをかけました。
■クラストップの広い室内を実現したホンダの新世代コンパクトカー
●ホンダ「フィット」
ホンダは1972年に次世代のコンパクトカーとして初代「シビック」を発売しました。その後、エントリーモデルとして革新的なデザインだった初代「シティ」が誕生し、「ロゴ」へとバトンタッチ。
しかし、ロゴは単にコンパクトで安いだけのイメージで、取り立てて秀でたところは見受けられず、ヒットしませんでした。
そこでホンダは2001年に、シャシからエンジンまですべてを一新した新時代のコンパクトカー初代「フィット」を発売。
ボディサイズは全長3830mm×全幅1675mm×全高1525mm、ホイールベース2450mmと、旧態依然としたデザインだったロゴよりもひとまわり大きくなったのと同時に、ワンモーションのスタイリッシュなフォルムに変貌しました。
新開発のシャシは、燃料タンクを前席下に収める革新的な「センタータンクレイアウト」を採用したことで、クラストップの広い居住空間と荷室を実現し、同様のレイアウトは歴代フィットや派生車、「ステップワゴン」などにも受け継がれています。
発売当初、エンジンは1.3リッター直列4気筒「i-DSI」を搭載し、1トン未満の車体に86馬力の十分なパワーと、23km/L(10・15モード)の低燃費を達成。
初代フィットはスタイル、広い室内、優れた経済性と、コンパクトカーに求められるニーズすべてを高い次元でバランスさせたことで、発売直後から人気車種となり、2002年にはトヨタ「カローラ」を抜いて日本国内での年間販売台数トップに躍り出る大ヒットを記録しました。
2020年2月には現行モデルの4代目が発売されましたが、コンセプトは初代から継承し続けており、また世界各地でフィットから派生したモデルが販売されているなど、今ではホンダの基幹車種となっています。
※ ※ ※
今回、紹介した3車種の現行モデルは、すべて初代のイメージを受け継いでいます。
本文中に登場したシビックは、初代と現行モデルでコンセプトが完全に異なっていますが、グローバルで販売するには仕方のないことかもしれません。
しかし、ヴィッツ(ヤリス)、ノート、フィットは、代を重ねてもブレることの無いコンセプトを貫いており、そうした姿勢がヒットにつながっているといえるでしょう。
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みんなのコメント
ティーダはコストがかかるから止めた、と言うだけの話。
良い物をなるべく廉価でお客様への企業努力ではなく、とにかく簡単にコストカットで、
で生き残ったのがノートでした。