今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代の輸入車ニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「スマート クーペ」だ。
スマート クーペ(2001年)
発表前から「スウォッチカー」などと呼ばれ、メルセデス・ベンツが初めて手がけたコンパクトカーが、1995年に発表された「スマート」だ。日本には、これまでにも並行輸入ではかなりの数が輸入されているスマートだが、メルセデス・ベンツ車同様にダイムラー・クライスラー日本(DCJ・当時)によって、いよいよ正規輸入されるようになった。
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並行輸入車では、日本でリアのフェンダーとタイヤ&ホイールを交換し、車幅を1480mm以下にして軽自動車登録しているものもあるが、正規輸入車は小型車扱いとなる。ただし、DCJでも本国で日本の軽規格に合わせた仕様を現在製作中だそうだ。
ハンドル位置は左ハンドルのままだが、助手席パワーウインドーのスイッチをセンターダッシュ下に設けたり、日本仕様独自の変更点はいくつかある。だが、最大の違いは6速のセミATにオートマチックモードが付いたことだろう。並行輸入車ではクラッチペダルがないとはいえ変速はマニュアル操作しなければならなかったが、これは普通のATのようにも使える。こうしたマニュアル操作もできるセミATは最近の国産/輸入車にもいろいろ登場しているが、「ソフタッチ」と呼ばれるスマートのそれは、かなり出来がいい。
インテリアのスペースは、左右幅こそ少し狭いので隣のパッセンジャーを意識してしまうけれど、前後方向はそこそこゆとりがある。シートのすぐ後ろにあるラゲッジスペースには、2人分のカバンとかコート程度なら載せることはできるから、大きな荷物を載せる必要がなく街乗り中心で使うのなら、おとな2人で乗っても何の不満もないだろう。
リアのラゲッジスペース下に搭載されるパワーユニットは、日本の軽自動車より小さいわずか0.6Lの直3 SOHCターボで、最高出力は55ps/最大トルクは8.2kgm。スペックから見れば軽自動車よりもアンダーパワーだが、車重は750kgしかないから、走りっぷりはそこそこパワフルに感じられる。
RRではあるがステアリングの舵力は少し重めだが、非力な女性でも普通に扱えるだろう。ホイールベースは1.8mちょっとしかない短さだから、高速走行ではピッチングもけっこう多い。それでも、タウンスピードではそれほど気にはならないだろう。
何よりも、スマート クーペの最大のポイントは、そのデザインにある。他に類を見ない、色使いも大胆でポップな内外観は一見オモチャっぽく思えてしまうが、それでも安っぽさはまったく感じさせない。シートの出来は国産高級車並みで、しかもホールド性はけっこう高い。
2人しか乗れないとか荷物が積めないとかは、このクルマの購入を考えている人には気にならないポイントだろう。軽自動車よりサイズもエンジンも小さいけれど、走りっぷりは元気いっぱい。130万円という価格以上の価値を感じさせてくれる。シティユースのセカンドカーには最適の1台だ。
■スマート クーペ 主要諸元
●全長×全幅×全高:2560×1515×1550mm
●ホイールベース:1810mm
●車両重量:750kg
●エンジン形式:直3・SOHCターボ 横置きRR
●排気量:598cc
●最高出力:40kW(55ps)/5250rpm
●最大トルク:80Nm(8.2kgm)/2000-4500rpm
●トランスミッション:6速セミAT
●タイヤ:前145/65R15、後175/55R15
●車両価格(当時):130万円
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