セパンにシンデレラボーイ現る！ 代役デビューのグッドスマイル奥本隼士が表彰台手繰り寄せる好走。背景には猛烈な野心

　セパンがひとりのルーキーの走りに釘付けになった。第3戦で代役という形でスーパーGTデビューを果たした奥本隼士が、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGをGT300クラスの3位表彰台に押し上げて見せたのだ。

　グッドスマイルは今回、レギュラードライバーの片岡龍也と谷口信輝が小林可夢偉と共にスパ24時間に参戦する関係で、スーパーGTセパン戦には代役を立てることになった。そこに選ばれたのがベテランの中山友貴と、新人の奥本であった。

　10代の頃はラジコン競技で鳴らし、カート経験のない状態から4年前にレースを始めたばかりという、異色の経歴を持つ奥本。昨年はスバル／STIに飛び込み営業をかけてスーパーGTテストドライブの機会を得るなど、そのガッツも目を見張るものがある。

　スバルではチームに帯同して貴重な経験を積んだ奥本。しかし、当然彼が目指していたのはドライバーとしてのレースデビューだ。「自分の走りでどうにかしないと未来は変わらない」——そう思っていた中で、念願のスーパーGTデビューのチャンスが巡り込んできた。

「できる限りの準備は全部してきたつもりです」

　そう語った奥本。「スタートラインで遅れてはダメだ」との思いから、別カテゴリーのレース当日の深夜便でマレーシアに渡り、レンタル車両を使ってのスポーツ走行でセパンを走るという“日帰り練習”も敢行したという。

　迎えたレースウィークでも走り出しから好調。「今週末、行けるかもしれない」という思いの下、8番グリッドからレースに臨んだ。

　スタートドライバーはセパンでの経験もある中山が担当し、ライバルに先んじてピットインして奥本に交代。そこから奥本はハイペースで飛ばし、3番手を走る0号車VENTENY Lamborghini GT3の小暮卓史に迫った。小暮は昨年のGT300王者でもあり、GT500でもタイトル経験のある実力者だ。

　その小暮が苦しんでいると見るや、奥本はピタリと背後につけてプレッシャーをかけた。「行く気満々でしかなかったですよ」という彼の意気込みは、時にダートにタイヤを落として砂塵が舞うほどのアグレッシブな走りからも感じ取れた。

　ただ奥本はいたって冷静に、クレバーにレースを進めていたようだ。最終的には残り5周のターン1でアウトから並びかけ、イン側のポジションに変わるターン2で小暮の懐に飛び込み攻略した奥本だが、当時の戦略をこう説明した。

「もちろん相手がいてこそのバトルですから、常に尊重をして、無茶することはないようにしていました。その中で、自分が乗っているAMGとヨコハマタイヤ、そして今までやってきたセットアップの強みを常に探していました」

「でもそれ（強み）を知られてしまうとそこを抑えられてしまいますから、自分が『こうしよう』と思ったことを慎重に数周かけてやっていきました」

「セパンは路面が特殊で、ラバーがのった時のグリップの変化も特殊です。そこをレース中に試したことが、あのオーバーテイクに繋がりました。あれはたまたまではなく、自分の中で色々組み立ててやった結果です」

　デビュー戦で大きなインパクトを残した奥本。良いアピールができたのではないかと声をかけると、「やれるアピールは全部やったと思います！（笑）」と表情が崩れた。

「本当にこれ以上は、自分の中では見つからないくらいです。GT500のマシンを先に行かせるタイミングなどは課題として出ましたが、それも後半に修正することができました。また別のチャンスをいただけた時には、同じようなところでつまずかないようにしないといけませんね」

「ただ今日のレースに関しては……後悔はないです。やり切りました！」

Comments

[LVG Inc.]

この選手ののし上がり方は凄い

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ワンメイクレースの86BRZカップで奥本さんはデビュー戦で予選は不運だったが、あえてファステストラップを狙いに行く姿を見て速さがあるんだなと思いました。
スーパーGTでも活躍を見せるのは嬉しいですね。