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ポルシェでも失敗するのか? ポルシェフリークの間でいまだに議論を呼ぶ996型ポルシェ991の中身

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ポルシェでも失敗するのか? ポルシェフリークの間でいまだに議論を呼ぶ996型ポルシェ991の中身

 ボクスターのコンポーネント流用で価値が微妙に

 いつの時代もポルシェは「最新のモデルが最良のポルシェ」を標榜してきているが、その長い歴史のなかで「これは?」と疑問符のつくモデルが存在した。

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「タイプ996型911」

 ポルシェのラインアップで中心的な存在と言えるのが911だ。リヤエンジン・リヤ駆動のRRレイアウトであることを最大の特徴とし、現在もそれは受け継がれている。1964年に初代911と呼べる901型が登場してから最新の992型まで、半世紀に渡り基本設計を変えることなく、世界に冠たるスポーツカーの座を確立し続けていることは奇跡ともいえる。

 だが1997年に5代目911となるタイプ996型911が登場した時、世界中の911ファンが落胆したのも歴史上の事実として認めざるを得ないだろう。

 そのころポルシェ社は経営の危機から立ち直る過程にあった。1990年前後、北米マーケットでの販売不振から経営危機に陥っていた。販売上の主力モデルである911が当時世界一のマーケットであった北米で売れない。その頃世界中の自動車メーカーが北米市場を意識したクルマ作りを進め販売戦略をたてているなかで、歴史に固執するポルシェ911のクルマ作りでは一部のカーマニアに受けるだけだ。スポーツカーマーケットで勝ち残るために路線転換を余儀なくされていたのだ。

 そこでポルシェ社はまず廉価版ポルシェとも言える2シーターオープンスポーツのボクスターを開発。北米に投入すると一定の成功を収める。そのコンポーネンツを流用して開発費を抑えつつ北米マーケットで受け入れられる新世代911として996を仕上げたのだ。その目論みは当たり、996型911は北米販売で大きな成功を収めた。だが一方で従来の911を愛する世界中のフリークからは見放されてしまった。

 996型911は車体が大型化し流線型の未来的なボディデザインを採用した。それは空気抵抗を減少させ燃費向上など厳しさを増す燃費規制をクリアするためには不可避だった。そのため前モデルのタイプ993型まで半世紀に渡り踏襲されてきたクラシカルで独特なボディシルエットが失われ多くの911ファンの失望を招いた。またフロントセクションを価格的にも格下になるボクスターと共用したことで孤高の価値にこだわる層にも受け入れられないことになる。

 一方インテリアデザインにも酷評が目立った。伝統的な丸形5連のメーター配置は完全に廃されてしまい、ボクスターと統一感のある新デザインに変えられてしまう。その素材感は大衆車のように安っぽく、ポルシェの伝統的なクラフトマンシップによる手造り感と質感が消失してしまった。それまで911に興味を持たなかった一般ユーザーからは取っ付きにくさが薄れ販売上は成功したのは皮肉な出来事だった。

 エンジンを水冷化してもパフォーマンスは落ちず!

 だがポルシェは996に何もしなかったわけではない。メカニズム面においてエポックメイキングな進化を果たしていたのだ。まず911最大の特徴とも言える空冷フラット6のパワーユニットを水冷化したことだ。ボクスターですでに水冷フラット6を登場させていたため、911も水冷化されてしまうのではと予測されパフォーマンスの低下が危惧されたが、ポルシェは圧倒的な技術力を見せつけた。

 エンジンの冷却水がシリンダーヘッド下側で熱せられ上方に流れていくクロスフロー冷却を水平対向エンジンのレイアウトに上手く合わせて設計した。通常フロントに配置するラジエターはパフォーマンスが高まるほど大型となりフロント前面に大きなラジエターグリルが必要となるが、ポルシェは左右に2分割して車体前方下部に配置し低重心化とウェッジシェイプノーズを見事に実現している。多くの人がそのメカニズムに着目しなかったボクスターも996型911の登場でこうした高度な技術力が明らかとなって存在感を高められたと言える。

 RRレイアウトによる個性的で癖のあるハンドリングは911オーナーが911を乗りこなす醍醐味として運転の難しさとともに運転技術を極め達成感を与えてくれていたものだが、996型では新開発のマルチリンクリヤサスペンションを採用して誰でも操れる万能性すら手に入れていたのだ。

 こうしたことから996型911は失敗作でありながら成功作だったという微妙な評価が与えられ、今でも多くの論議を呼んでいるのだ。

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