一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表している2021年2月のSUV販売台数を見てみると、1位:トヨタ『ヤリスクロス』9490台、2位:スズキ『ハスラー』8217台、3位:トヨタ『ハリアー』8006台となっている。
2代目ハスラーの発売は2020年1月(発表は2019年12月)、初代が圧倒的な人気を誇っていたとはいえ、SUV人気でライバルとなるモデルが続々登場する中でも、安定した高い人気を誇るワケは何なのか? 考察していきたい。
電動化推進で高額に!? 生活必需品としての軽自動車を守るために必要な戦略
文/渡辺陽一郎
写真/編集部
【画像ギャラリー】「タフ&力強さ」を強調した2代目『ハスラー』を写真でチェック!!
■鈴木修元会長の提案から生まれた『ハスラー』
カジュアルなアウトドア感がおしゃれで人気のスズキ『ハスラー』。写真左が初代で写真右が現行の2代目
今は軽自動車の売れ行きが好調だ。2020年度(2020年4月から2021年3月)には、国内で販売された新車の内、軽自動車が38%を占めた。
また小型/普通車では、SUVの売れ行きも伸びている。SUVは存在感の強い外観デザインと、快適な居住性や優れた積載性を両立させたことで、小型/普通車の20~25%を占める。
そうなると軽自動車サイズのSUVを開発すれば、売れ行きを伸ばせるだろう。スズキ『ハスラー』は、このような考えに基づいて開発された。
ただし最初の出発点は、鈴木修元会長の提案だった。外出先で知り合った人から「私はスズキの『Kei』(1998年から2009年まで製造されていたSUV風の軽自動車)を使っているが、後継車種がなく、乗り替えできずに困っている」と言われた。この話を鈴木修元会長が持ち帰ったことで、初代ハスラーの企画が持ち上がった。鈴木修元会長の優れた能力を物語るエピソードだ。
■初代から現行型まで一貫して好調な売り上げを継続中!
ハスラーの初代(初代)モデルは2014年1月に発売され(発表は2013年12月)、一躍人気車になった。居住空間の広さや基本的なメカニズムは『ワゴンR』とほぼ同じだが、外観はSUVの特徴を取り入れてカッコイイ。荷室の広さとシートアレンジも、ワゴンRと同じく実用的で、先代ハスラーには汚れを落としやすい素材も使われる。屋外で使用したキャンプ道具なども気兼ねなく積めた。
ワゴンRをベースとして開発された初代『ハスラー』。最低地上高を上げるなどして「軽クロスオーバーSUV」という新たなジャンルを切り開いた
2014年における先代ハスラーの届け出台数は、1カ月平均で約8700台であった。同年の販売1位になったダイハツ『先代タント』は、1カ月に2万台近くを販売したから先代ハスラーは半分以下だが、生産規模も影響していた。先代ハスラーは生産規模が小さい割に受注が好調で、一時は納期が約8カ月まで伸びている。つまり2014年の1カ月平均で8700台という届け出台数は、控え目な数字であった。
2019年にモデルチェンジした4代目のダイハツ『タント』。人気のスーパーハイトワゴンとして好調な売上を記録している
先代ハスラーはその後も売れ行きをあまり下げず、2020年1月に2代目の現行型へフルモデルチェンジされた(発表は2019年12月)。基本的な機能は先代型を踏襲したが、燃費性能を向上させ、衝突被害軽減ブレーキも進化させた。
2020年に発売開始された2代目『ハスラー』。マイルドハイブリッド搭載で燃費が向上し、WLTCモードで25km/Lに改善した
ターボエンジン搭載車には、車間距離を自動制御できる運転支援機能のアダプティブクルーズコントロールが採用され、作動中にはドライバーのペダル操作が軽減される。先代型の特徴を継承しながら、メカニズムを中心に進化させた。
そのために現行型の売れ行きも好調だ。2020年度の登録台数は、ホンダ『N-BOX』、スズキ『スペーシア』、ダイハツ『タント』、日産『ルークス』といった全高が1700mmを超える人気のスーパーハイトワゴンに次いで多かった(届け出台数は『ムーヴ』が上まわるが、この数字には『ムーヴキャンバス』も含まれる)。
また直近となる2021年3月のSUV販売ランキングは、1位:トヨタ『ヤリスクロス』(1万2890台/ヤリスとGRヤリスは除く)、2位:トヨタ『ライズ』(1万2272台)、3位:『ハスラー』(1万1147台)と続く。
ちなみにハスラーのライバル車となるタフトは、2020年6月に発売された。ハスラーよりも設計は新しいが、2021年3月の届け出台数は7123台であった。販売比率に換算すると、ハスラーの64%に留まる。
■『ハスラー』人気の理由をスズキ販売店に聞いてみた
ハスラーが人気を高めた理由をスズキの販売店に尋ねると、以下のように返答した。
「ハスラーの人気は高く、昨今の半導体不足も影響して、納期が長引いている。メーカーオプションのメモリーナビを装着すると3カ月近くに達する。人気の理由は、まず外観が人気車のジムニーに似てカッコイイこと。車内も広く実用的で使いやすい。そしてハイブリッドの低燃費も人気の秘訣だ。そのために従来型からの乗り替えも多い」
現行型の外観は先代型の路線を踏襲したが、従来以上に水平基調に近づけて、ボディ側面のウィンドーを3分割させた。SUVらしい力強さがさらに強調され、ピラー(柱)やサイドウィンドーの上に向けた絞り込みも抑えたので、ボディが少し大きくなったように見える。車内の広々感も増している。
現行の2代目『ハスラー』のエクステリアはアウトドア感を強め、より角ばった力強いスタイルになった
丸型ヘッドランプは従来型に似ているが、ジムニーと同様、ほかの車種とは違う個性を表現している。もともとSUVには、サイズや価格に基づくヒエラルキーに捕らわれない魅力があるが、ハスラーは個性的な外観と相まってその傾向が特に強い。
現行型ではハイブリッドの搭載も注目される。ハイブリッドといってもマイルドタイプだから、モーター機能付き発電機が、減速時の発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行う。
それでも「軽自動車のハイブリッド」であることは、電動化が話題に登る昨今ではセールスポイントになり得る。WLTCモード燃費も、ノーマルエンジンは25km/Lと良好で、ライバル車となるタフトの20.5km/Lと比べても優れている。
■スズキのライバル会社ダイハツとの販売・商品戦略の比較
さらに先に述べたとおり、衝突被害軽減ブレーキを始めとする安全装備と運転支援機能も進化させたから、ハスラーは現行型も好調な売れ行きに至った。
しかもハスラーでは先代型も好調に売れたから、新型への乗り替え需要が多い。この点は、現行型が初代モデルになるタフトとの違いでもある。タフトは外観とコンセプトがハスラーに似ているのに、2020年6月に発売された現行型が最初だから、後追い商品の印象も強い。乗り替え需要もなく、販売面ではハスラーよりも不利になった。
2020年6月に発売開始されたダイハツ『タフト』。「バックパック・スタイル」をコンセプトに、ハスラーの対抗馬として登場した
そしてスズキとダイハツとの比較でいえば、車種数の違いもハスラーの売れ行きに影響を与えた。ダイハツのカーラインナップを見ると、全高が1600mmを超える背の高い前輪駆動の軽乗用車は、6車種用意されている。前述のムーヴキャンバスは、全高が1700mm以下の丸みを持たせたボディに、背の高いタントと同様のスライドドアを装着して人気も高い。
対するスズキの場合は、全高が1600mmを超える前輪駆動の軽乗用車は、ハスラー/ワゴンR/スペーシアの3車種だけだ。ダイハツのムーヴキャンバスやウェイクに相当する車種がないため、スズキでは背の高い軽自動車のニーズが前述の3車種に集中した。
そうなるとハスラーは、1車種でさまざまなユーザーに対応する必要がある。そこで後席には、左右独立式のスライド機能と平らな荷室の得られるフォールディング機能を採用した。ワゴンRと同様に座り心地も優れ、ファミリーカーとしても使いやすい。
このようにハスラーにはもともと大量に売る使命があり、1カ月の販売目標も6000台に設定した。ダイハツ『タフト』の4000台を上まわる。
そこで2020年度におけるメーカー別の軽自動車販売ランキングを見ると、ダイハツが1位(54万9409台)、スズキは2位(53万9396台)だが、両社の差は1年間でわずか1万台少々だ。しかも軽乗用車に限ると、2020年度はスズキが41万9966台で、40万4446台のダイハツを上まわった。スズキは車種数が少なく、なおかつ軽乗用車の販売台数は多いので、ダイハツに比べると1車種当たりの売れ行きが伸びた。ハスラーの売れ行きも、この影響を受けている。
以上のようにハスラーは、個性的で好感度の強い外観、ワゴンRに準じた広い室内、多彩なシートアレンジ、マイルドハイブリッドによる優れた燃費などによって人気を高めた。
タフトも低価格まで含めた全グレードに、ガラスルーフのスカイフィールトップ、フルLEDヘッドランプ、電動パーキングブレーキを標準装着して装備を充実させたが、売れ行きはハスラーが勝っている。
車種数を抑えながら販売台数を増やすスズキの戦略は、効率が優れ、同社の得意ワザともいえるだろう。それがハスラーを成功に導いた。
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みんなのコメント
どこを見ても、売れない要素が無い。