11月16~17日には静岡県の富士スピードウェイにて第7戦『S耐ファイナル富士』が開催され、2024年シーズンのENEOSスーパー耐久シリーズは全7戦を終了した。271号車シビック・タイプR CNF-R(Team HRC)は、2年間の集大成にふさわしい大津弘樹、武藤英紀、伊沢拓也を召喚してトラブルを抱えながらも見事に完走を果たした。
スーパー耐久のST-Qクラスは、STMOが認めた開発車両を走らせることができ、国内の自動車メーカーが多数参戦。レースに参戦しつつ、カーボンニュートラルに向けた取り組みなど各社がさまざまな活動を行っている。Team HRCもそのうちのひとつであり、2023年のスーパー耐久第2戦富士SUPER TEC 24時間レースから参戦を開始した。
S耐第7戦富士に突如出現した黒い球体『イマーシブドーム』って? 次世代コンテンツに潜入してきました
シビック・タイプR CNF-Rを走らせ、主にカーボンニュートラル燃料に適合したレース用エンジンの開発、参加型モータースポーツ向けのベース車両製作やパーツの研究開発を目的としている。2年目となる2024年も引き続きその取り組みを継続するとともに、レースカーとしてドライバビリティ向上の目標を追加。プロドライバーだけでなく、ジェントルマンドライバーやホンダ育成ドライバーと毎戦異なる選手を起用して開発を促進させていた。
開幕2戦はパワステ等のトラブルに見舞われるなど厳しい状況が続いたものの、さまざまなドライバーのフィードバックも得ながら、第4戦もてぎと第5戦鈴鹿では2戦連続でのアップデートを実施。内容としては外観からも違いが見て取れるほか、ドライバーの熱対策やアンダーボディのエアインテーク/アウトレットを最適化、車重の軽量化やサスペンションの強化などさまざまな改良が施された。
初年度から参戦するTeam HRCレギュラードライバーの大津は、第4戦もてぎで「パワステが適正な温度で走れるため、ほぼクリアになった」とし、軽量化を始めさまざな面での違いを感じていた様子。ただ、レース結果にすべて反映されるには時間を要し、その後も完走はできるものの、時折トラブルに見舞われる一面もあった。
■2年間のプロジェクトを完遂。最終戦にはプロドライバーが集結
そんななか、2年間の集大成とも言える2024年シーズンのスーパー耐久最終戦には大津に加え、シビック・タイプR CNF-R開発初期メンバーの武藤と伊沢が乗り込んだ。伊沢は2023年シーズン最終戦富士以来、武藤は2024年第2戦富士24時間以来でひさびさのドライブで進化をどう感じたのだろうか。Bドライバー予選で1分50秒578をマークした武藤は「熱対策は正直気候が違うのでなんとも言えませんが、軽量化は感じました」と変化を実感。
さらには「予選でアタックしてるときの特にAコーナーやハイスピードの動きで軽さを感じました。以前はもう少し遠心力と重さによって外にラインがふくらんでしまうようなシチュエーションがありましたが、ちょっと小さく細かく小回りが利くような感じです。少しスピードを上げても、外まではらむ印象はなかったですね」と付け加えた。
予選でST-Qクラス3番手、総合26番手につけ、いい兆しも見えていただけに決勝での活躍にも期待がかかっていた。だが、決勝は序盤からFCYや赤旗中断など荒れたレース展開となり、大津からスタートし武藤に乗り継ぎを行ったものの、途中ガレージインしてしまうシーンもあった。結果的に50周を走破して完走を果たしたが、パワステのトラブルだったようだ。
この結果を受けて武藤は「ブレーキパッドにまだあまりリニア感が出てないので、防錆だったりパッドとの相性もあるけど、もう少し細かく調整が効くようなものがあれば、決勝に関してはもう少し扱いやすくなったとは思います」と改善の余地があることを確認していた。
第7戦富士でも一時トラブルに見舞われてしまったものの、無事に完走を遂げたシビック・タイプR CNF-Rは、2年間にわたる活動を今回でひと区切りにするという。HRCからは「開発は一定の成果をみたので、2年間にわたるプロジェクトは今回で完了となります。市販車ベースのレースカー開発で得たノウハウは大変貴重なものとなりました。来季のスーパー耐久の参戦体制などについては、今しばらくお待ちください」とアナウンスされた。
2年と長い年月をかけてカーボンニュートラル燃料使用エンジンの開発に取り組みつつ、レースを重ねる度に進化した姿を見せていただけに、今後の活動方針など気になるところだ。さらには開発だけでなく、どのドライバーが乗り込んでも和気藹々としているドライバーたちの姿も見ていると、彼らの活躍をこれからも見続けたいと願う方も多いはず。
武藤もレース終了後には「やっぱり普段プロの仕事をしている人たちなので、もちろん真剣にやってはいるけれど、そのなかでも羽を伸ばせる環境ですね。クルマに乗ってないときももの作りの話もしつつ、笑いもありつつとすごくちょうどいいバランスのとれた楽しい環境で、いつまでも続けばいいなと思えます。そういうメンバーと一緒に走れることはすごく価値のあることだと思います」と思いを語った。
来シーズン以降、スーパー耐久におけるTeam HRCとしてどのような活躍が展開されていくのか。ネクストプロジェクトがあることを願うとともに続報を待ちたい。
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