現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 日本海軍を支えた「豪華客船になるはずだった空母」とは 米海軍の“武勲艦”を撃沈して終戦まで生き残る

ここから本文です

日本海軍を支えた「豪華客船になるはずだった空母」とは 米海軍の“武勲艦”を撃沈して終戦まで生き残る

掲載 更新 69
日本海軍を支えた「豪華客船になるはずだった空母」とは 米海軍の“武勲艦”を撃沈して終戦まで生き残る

太平洋を東奔西走した空母「隼鷹」

 1941年のきょう6月26日、日本海軍の航空母艦「隼鷹」が進水しました。同艦は日本を代表する豪華客船として竣工する予定でしたが、空母に改造。1942年10月の南太平洋海戦では、日本本土を初めて空襲したことで知られる、アメリカ海軍の正規空母「ホーネット」に致命傷を与えるなど、客船改造の空母ながら大きな活躍を見せました。

【画像】デカい!これが空母「隼鷹」の飛行甲板です

「隼鷹」の元となったのは日本郵船の「橿原丸」。同船はサンフランシスコ航路用として計画され、日本最大の豪華客船となるはずでした。

 起工は1939年3月で、有事に民間の船舶を改造し、海軍に徴用することを想定した補助金制度「大型優秀船舶建造助成施設」の適用を受け、機関などは当初から空母への改造を見越して設計されていました。建造途中に空母への改造が決まり、海軍に買収されたため、「橿原丸」は幻の豪華客船となったのです。

 建造は三菱重工の長崎造船所で進められ、1942年5月に竣工。民間から徴用した「特設航空母艦」という位置づけでしたが、日本の空母として初めて、艦橋と煙突が一体化した大型艦橋を採用したことが特徴です。

 ちなみに、「橿原丸」の隣の船台では、史上最大の戦艦である「大和」の2番艦である「武蔵」が建造されています。

 初陣は1942年6月、北太平洋に位置するアリューシャン列島への出撃でした。この戦いでは、アメリカ海軍の基地があるダッチハーバーを空襲します。ただ、同時期のミッドウェー海戦で日本海軍は主力空母4隻を失い、機動部隊は大きな打撃を受けます。

 翌7月、「隼鷹」は軍艦籍に入り、日本の空母では初となるレーダーを搭載。同じころ竣工した姉妹艦の「飛鷹」(橿原丸の姉妹艦である出雲丸を改造)と共に第2航空戦隊を編成し、機動部隊の主力となりました。

 客船をベースとした隼鷹型航空母艦は、速力や防御力は正規空母に見劣りしたものの、飛行甲板は広く、ミッドウェー海戦で失われた中型の正規空母「飛龍」や「蒼龍」に準じる航空機の搭載能力を持っていたため、貴重な戦力となったのです。

 1942年10月には南太平洋海戦に参加し、3度にわたって攻撃隊を発進させました。艦載機や搭乗員に大きな被害が出ましたが、アメリカ海軍の正規空母「ホーネット」に致命傷を与えるなど、大きな活躍を見せました。

終戦まで生き残った数少ない日本海軍の空母

 日米が戦力の回復に注力していた1943年は、機動部隊同士の海戦が発生せず、「隼鷹」は南方と本土を往復し、主に物資輸送任務に従事しました。

 その間には、ガダルカナル島の撤収作戦にも参加。しかし11月には、日本近海でアメリカ軍の潜水艦による雷撃を受け損傷、広島県の呉軍港へ帰投しています。

 1944年6月には、中部太平洋のサイパン島に侵攻しようとするアメリカ軍を、日本軍が迎撃したマリアナ沖海戦が勃発します。日本海軍はこの戦いに、真珠湾攻撃に投入した空母6隻を上回る空母9隻を投入。その中には「隼鷹」の姿もありました。

 一連の海戦で、日本海軍は空母「大鳳」「翔鶴」「飛鷹」のほか、多数の航空機を喪失して完敗しました。「隼鷹」も空襲を受けて煙突に爆弾が直撃し、火災が発生していますが、沈没は免れています。

 1944年7月に第2航空戦隊は解体され、「隼鷹」は伊勢型航空戦艦が所属する第4航空戦隊に編入。艦内の不燃化工事が実施されました。台湾沖航空戦で航空機の損耗が続き、1944年10月のレイテ沖海戦には参加せず、それ以降は搭載する機体もないため、輸送艦として活用されました。

 12月、「隼鷹」は台湾から本土へ向けて航行中、アメリカ軍潜水艦の攻撃を受け被雷。満身創痍で長崎港へ帰投しました。ちなみにこの時、隣の船台で建造された戦艦「武蔵」の生存者を本土に送り届けています。

「隼鷹」は修理を受けますが、燃料や物資も欠乏しており、もはや空母の出番はありません。そのまま終戦を迎えます。機関が損傷していたこともあり、復員輸送に従事することもなく、1947(昭和22)年に解体されました。

 戦争に翻弄された「隼鷹」は、豪華客船として完成することはありませんでしたが、正規空母と同等以上の活躍を示し、その生涯を終えたのです。(乗りものニュース編集部)

文:乗りものニュース 乗りものニュース編集部

関連タグ

【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

旧日本軍の駆逐艦が残ってる!「え、コレ…!?」 変わり果てた姿で奇跡の現存 なぜ軍艦が“港の一部”になったのか
旧日本軍の駆逐艦が残ってる!「え、コレ…!?」 変わり果てた姿で奇跡の現存 なぜ軍艦が“港の一部”になったのか
乗りものニュース
海自「最古のイージス艦」いよいよ後継艦を本格検討へ 今や“先代の戦艦”を上回るベテランに
海自「最古のイージス艦」いよいよ後継艦を本格検討へ 今や“先代の戦艦”を上回るベテランに
乗りものニュース
思わず二度見!? な米ステルス軍艦「マイケル・モンスーア」東京湾に突如来た! 世界に3隻しかない異様なデザイン
思わず二度見!? な米ステルス軍艦「マイケル・モンスーア」東京湾に突如来た! 世界に3隻しかない異様なデザイン
乗りものニュース
日本版「恐怖の彗星」危険なロケット戦闘機を陸海軍共同で開発した理由とは? 80年前に“悲劇の初飛行”を行った機体
日本版「恐怖の彗星」危険なロケット戦闘機を陸海軍共同で開発した理由とは? 80年前に“悲劇の初飛行”を行った機体
乗りものニュース
80年超の船歴にピリオド!「第二次大戦中に誕生した米軍艦」ついに退役 ビキニ環礁での核実験にも参加
80年超の船歴にピリオド!「第二次大戦中に誕生した米軍艦」ついに退役 ビキニ環礁での核実験にも参加
乗りものニュース
海自の巨艦「かが」首都圏に来る! 対潜ヘリ母艦→空母に変わった姿で公開へ 改造後では初めて横須賀に接岸か!?
海自の巨艦「かが」首都圏に来る! 対潜ヘリ母艦→空母に変わった姿で公開へ 改造後では初めて横須賀に接岸か!?
乗りものニュース
歌にもなった無人攻撃機「バイラクタル」最新型は空母向け! 開発の裏には「アメリカとの亀裂」いったい何が?
歌にもなった無人攻撃機「バイラクタル」最新型は空母向け! 開発の裏には「アメリカとの亀裂」いったい何が?
乗りものニュース
旧海軍の本格的な激レア4発爆撃機「連山」の“風防ガラス”を実見 場所は“群馬”…なぜ?
旧海軍の本格的な激レア4発爆撃機「連山」の“風防ガラス”を実見 場所は“群馬”…なぜ?
乗りものニュース
「軍隊の航空機=戦闘機じゃないの?」←違います! 戦わない軍用機ってナニ? 民間企業が飛ばす “まんま戦闘機”なんてのも
「軍隊の航空機=戦闘機じゃないの?」←違います! 戦わない軍用機ってナニ? 民間企業が飛ばす “まんま戦闘機”なんてのも
乗りものニュース
巡航ミサイルじゃないの!?「誘導爆弾+ジェットエンジン」新兵器 裏にはフランスの切実な理由が
巡航ミサイルじゃないの!?「誘導爆弾+ジェットエンジン」新兵器 裏にはフランスの切実な理由が
乗りものニュース
台湾を60年守った名物戦闘機ついに退役! じつは世界最大のユーザー 最後まで飛んでいたのは希少な独自仕様
台湾を60年守った名物戦闘機ついに退役! じつは世界最大のユーザー 最後まで飛んでいたのは希少な独自仕様
乗りものニュース
史上初! 日本最大の「空母な護衛艦」激セマ&メチャ混雑な“交通の難所”を通過 どんな様子?
史上初! 日本最大の「空母な護衛艦」激セマ&メチャ混雑な“交通の難所”を通過 どんな様子?
乗りものニュース
護衛艦でたま~に聞こえる「ピー」音のナゾ 実は何種類も音色がある!? どう鳴らしているのか
護衛艦でたま~に聞こえる「ピー」音のナゾ 実は何種類も音色がある!? どう鳴らしているのか
乗りものニュース
トランプ関税の交渉カード「造船協力」そんな余裕はありません!? 日本の造船「絶好調に見えるだけ」の現在地
トランプ関税の交渉カード「造船協力」そんな余裕はありません!? 日本の造船「絶好調に見えるだけ」の現在地
乗りものニュース
「フランス機を撃墜した中国戦闘機」次に狙うのは米国製F-16の後釜か? お膝元のパリでPR!
「フランス機を撃墜した中国戦闘機」次に狙うのは米国製F-16の後釜か? お膝元のパリでPR!
乗りものニュース
原子力潜水艦「アスチュート」“史上最長”の初期配備を終え改修へ 15年は異例の長さ? 素直に喜べないワケとは
原子力潜水艦「アスチュート」“史上最長”の初期配備を終え改修へ 15年は異例の長さ? 素直に喜べないワケとは
乗りものニュース
海自舞鶴地方隊に新たな“自衛艦”が就役! 7月26日開催のイベントで初披露か 乗員数はまさかの1人!?
海自舞鶴地方隊に新たな“自衛艦”が就役! 7月26日開催のイベントで初披露か 乗員数はまさかの1人!?
乗りものニュース
消滅しかけた「2人乗り戦闘機」が復権? 変化しつつあるパイロットの役割 “もう一人がいないと酷”なワケとは
消滅しかけた「2人乗り戦闘機」が復権? 変化しつつあるパイロットの役割 “もう一人がいないと酷”なワケとは
乗りものニュース

みんなのコメント

69件
  • sad********
    考えたら隼鷹は大和や陸奥より活躍していると思う
  • oga********
    本当に頑張った船ですよね
    足が遅くて、搭載機も少なめなのに
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村