この記事をまとめると
■いま新車の納期遅延が著しい
出せばバカ売れ必至! それでもトヨタが軽自動車を作らないワケ
■とくに影響が大きいのがトヨタ車
■しかしトヨタ車の購入検討者が他社のクルマに流れるケースは少ない
納期遅延は2025年まで続くと予想されている
一部車種でとくに顕著となっている納期遅延は、その度合いは別として長期化の様相を呈してきた。少し前までは2024年中までとされていたが、最近では2025年までその影響が残るのではないかとされている。そのなかで国内販売に目を向けると全般的にトヨタ車の納期遅延が目立っている。これは、世界的なサプライチェーンの混乱や、新型コロナウイルスの感染拡大などで思うような生産ができないなか、現行モデルをオーダーストップし法規対応の改良を進めているため。販売現場にて話を聞くと、「満足に受注申告(売ること)できるモデルすら少ない」という状況とのことで、納期が長く、そして読めない状況が拡大しているのである。生産車種、規模ともに多いことが、他メーカーより状況をより深刻にしてしまっているようである。
ホンダも売れ筋モデルは改良が入っていたりして納期遅延が目立っているのだが、日産ではそれほど深刻な納期遅延は発生していないし、それ以外のメーカーでもトヨタほど深刻な状況にはなっていないように見える。しかし、「納車まで時間がかかるなら」としてトヨタ以外のメーカーへ購入車種が流れているのかといえばそういうわけでもない。
自販連(日本自動車販売協会連合会)統計をもとに、コロナ禍前となる2018年から2022年までの各5月単月の登録車のみの販売台数でトヨタの販売シェアをみると、2018年が約44%、以下2019年約48%、2020年約54%、2021年約53%、2022年約50%と、コロナ禍前よりコロナ禍のほうがトヨタは販売シェアを伸ばしている。2022年は2020年比で4%ほどシェアを落としいているが、2020年は5月よりトヨタ系正規ディーラーすべてでトヨタ車全車が購入できるようになっており、それがコロナ禍とはいえ呼び水となり、販売を伸ばしたようである。年後半から納期遅延が深刻となった2021年も、その余波を受けたものと考えられる。つまり、この数値を見る限りはトヨタから他メーカーへ積極的にお客が流れているような傾向は見られず、かえってコロナ禍になってからはシェアを伸ばしていることになる。
消費者の“自己防衛本能”が働いている可能性も
これは新型コロナウイルス感染拡大という非常事態下において、“どうせ新車を買うならば、値落ちの少ない確かなブランドのモデルを買いたい”という、ある意味消費者の自己防衛本能が働いていることも大きいかもしれない。ちなみにロシアでは政情不安や経済が混乱すると、国民が現物で資産保全に走る傾向があり、高級車も飛ぶように売れるのだが、そのなかでも故障が少なく確かなブランドとしてレクサスに富裕層が殺到するそうである(いまは経済制裁下なのでこのパターンはなかなかあてはまらないだろう)。
そのなかで納期遅延が深刻ということで他メーカー車を検討せずに、早めに結論(契約)を出し、納車をできるだけ早めたいという心理も働いているのかもしれない。このような傾向にはトヨタ以外のメーカー系正規ディーラーのセールスマンからも、「納期遅延覚悟でトヨタ車が選ばれるのが不思議だ」という声も聞かれる。
トヨタ系正規ディーラーで商談をしていて、「ライバルメーカー車のクルマは納期が早い」といわれてもセールスマンではどうしようもできないので、「そちらを買ってください」ということになってしまう。だからといって極端な“殿様商売”をしているわけでもなく、値引き交渉にももちろん応じてもらえる。いまは新車の納車がなかなか進まないので、下取り車も集まりにくく、中古車市場も流通台数不足になっている。全般的に下取り査定額も“底上げ”となってきているのだが、トヨタ車は中古車人気も高いので“底上げ幅”が高く、それゆえトヨタ車ユーザーがトヨタの新車へスライドしやすいのも、他メーカーに流れにくくなっている理由のひとつかもしれない。
コロナ禍うんぬん以前に、いまどきの新車購入はあらかじめ自宅などでウエブサイトを閲覧するなどして商品研究を行い、さらに見積りシミュレーションも可能なので、大まかな予算繰りもでき、商談前によりリアルな自分なりの予算での購入へ向けての値引き目標も設定しやすい。そのため、リアルな商談では単純な支払い条件の交渉などで終わることも珍しくないようだ。それもあってか、他メーカー車との比較交渉はかなり減っている。過去には他メーカー車を引き合いに出せば「買う気満々」として好印象を持たれたが、いまでは商談でも効率性(より短期間に受注に持ち込む)が重視されているので、「結論に時間がかかりそうだ」とネガティブに判断されることが多いとも聞く。
セールスマンも、ノア&ヴォクシークラスや軽自動車のように、ガチンコでライバル関係にあるならともかく、一般的には他メーカー同クラス車には興味を示さないことが多い。それよりも国内販売シェアで断トツトップのトヨタでは、看板(カローラ店やトヨペット店など/まだ看板が別、つまり販売会社の異なる地域が多い)の違うディーラー間での同じ車種の値引きの競り合いのほうが重視されているので、トヨタ車の購入を検討している商談では、他メーカー車が介在する余地は2020年5月以降、極端に減っている。
“いますぐに新車が欲しい”といったケースは別だが、すでにトヨタユーザーの間では以前から、セールスマンが納車までに余裕のある“売り時”を見計らい、乗り換えを勧めるのが当たり前であった。すべてのセールスマンが該当するとはいわないが、セールスマンが日々顧客と丁寧に接してきて信頼関係が構築されているからこそ、いまの深刻な納期遅延でも納車はできないものの、受注を積み上げることができている。そして、混乱しているとは言うものの、結果的には毎月他メーカーを圧倒する新車を各ディーラーに出荷することができ、販売シェアトップを維持しているのである。
“リモート~”とか、“非接触社会”などといわれているが、皮肉なことに表層的なものに終わらず、よりリアルに顧客とコミュニケーションがとれてきたか否かの差が、如実にいまの新車販売に表れてきているようにも見える。
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みんなのコメント
出る杭になりたく無い人種だもん。
失敗は許されない人種だもん。
例えトヨタが大規模な不正を起こしても、見て見ぬ振りする。トヨタは既に宗教の域に入ってると思う。