過去最強のモデルラインアップとなっているボルボから、真打登場とも言えるエステートがデビューした。「V60」はDセグメントのプレミアムモデルでドイツ御三家の人気が高い国内で、新しい風を呼び込むのは間違いないモデルだ。
V60の登場記事はこちらを参考にしてほしいが、ステーションワゴンと言えばボルボという認識は国内だけでなく、世界中で共通だそうだ。実際の販売台数でもドイツ御三家のワゴンモデルよりも多く販売してきた実績があるという。
※関連記事:ボルボ、2種類のPHEVをラインアップする新型「V60」登場
そこまでの人気の秘密は、高い実用性とボルボらしさだろう。プレミアムモデル位置づけられるボルボは、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、そしてジャガーなどがライバルモデルとなるが、スカンジナビアンデザインを大きな武器に、安全性と実用性を兼ね備えてV60が誕生している。
先代のV60は2011年から18年にかけて販売されているが、先代のV60はリヤゲートをクーペライクな傾斜にして、スタイリッシュかつスポーティさを強調したモデルだった。そのデザインコンセプトは現在のV90に受け継がれているが、新型V60はV70のボクシーなデザインを受け継いでデビューした。
従って、V90の小型版ではなく、コンセプトの異なるエステートだという位置づけになっているわけだ。さらに、新型V60のセールスポイントは先進安全機能の充実であり、後述するが16個の安全機能が全モデルに標準装備している点も高く評価できるだろう。
そして輸入車では唯一の、新車5年保証も登場した。それだけ、モデルに自信があるという裏返しでもあるわけだ。さらに、パワートレーンでは2種類のPHEV、プラグインハイブリッドもラインアップする予定で、常にチェックが必要となるモデルだ。
また、国内ではステーションワゴンが絶滅に等しくこのボディサイズだと、マツダアテンザくらい。しかしドイツ御三家ではステーションワゴンの占める割合は50%前後もあるわけで、プレミアムモデルに限っては、ステーションワゴンはSUVに飲み込まれたモデルではない、ということも言えるわけだ。
アウトライン
さて、ボディサイズのチェックだ。全長は4760mm、全幅1850mm、全高1435mm、ホイールベース2870mmというサイズで、日本にジャストサイズだとボルボ・ジャパンはお勧めしている。先代と比較して全長は+125mm、全幅はなんと-15mmで1850mmに強くこだわったリクエストを本社に行なったという。それだけ日本のマーケットでボルボエステートの人気が高い、と予測したモデルでもあるのだ。
そして全高は-45mmの一方で、ホイールベースに至っては+95mmとサイズアップさせ、後席の居住性にこだわっているということだ。もちろん、リヤゲートの角度にもこだわったように、荷室容量は先代比約+100Lで、529Lの容量はセグメントトップを誇っている。
導入するグレードはモメンタムとインスクリプションの2グレード展開を予定。搭載するパワートレーンは2.0Lガソリンターボと2つのPHEVというラインアップになる。モメンタムとインスクリプションではエンジンパワーの差はなく、254ps/350Nmというハイパワー仕様だ。装備違いによるグレードということになる。またPHEVモデルはT6、T8どちらもインスクリプションの設定で、同じ4気筒ガソリンだが、スーパーチェージャーとターボチャージャーにモーターがプラスされたモデルになる。その違いは出力だが、PHEVの国内導入は2019年春ということなので、その時にまた詳細をお伝えしよう。
現在のモメンタムとインスクリプションはともにT5エンジン搭載のFFということになり、アイシン製8速ATを搭載している。シャシーはボルボの車内分類でソフト、ダイナミック、スポーツという分け方で言えば、ともにダイナミックのシャシー設定となっており、ソフトの乗り心地重視の設定は中国専用になっているという。また、スポーツはR-Design専用のシャシーなので、この先導入の可能性もある。そして4Cというアクティブパフォーマンスシャシーを設定すると、このソフトからスポーツまでをカバーするサスペンションになる。また、V60にはエアサスペンション仕様は設定されておらず、フロントはダブルウイッシュボーン、リヤは樹脂のリーフスプリングを採用した仕様となっている。
安全装備
新規に搭載された安全装備は、正面衝突に対応する機能で、国内の死亡事故の30.7%を占めるそうで、その対応策にもなっているわけだ。
作動は、自車の車線に対向車が侵入してきた場合、衝突が避けられないぎりぎりのタイミングでブレーキが作動し、最大10km/hの減速をして衝突するという。実はこの10km/hが生死を分けることが多いという調査結果があるそうだ。
そして自分が対向車線に出て対向車とぶつかりそうになったケースでは、オンカミングミディケーションという機能で、ステアリングのアシストにより自分の車線に戻す働きをする。場合によっては片輪にブレーキがかかり、車線に戻すということだ。
そして右直事故に対応する安全装置も含め、全部で16個の先進サポート機能を全車標準装備としている。これはライバル車と比較すると、かなり大きなアドバンテージになるのは間違いない。
試乗
新型V60の最大の特徴はデザインだと思う。エクステリア、インテリアともに、「スカンジナビアンデザイン」と表現され、個性的なデザインだ。ドイツとはまた違った高級感の演出も見事だ。これら品質や演出が良くできている理由のひとつにデザイン部門のトップ、ロビン・ペイジ氏の存在が大きいという。ペイジ氏は元ベントレーのデザイナーで、高級車、特にプレステージクラスのデザインを手がけてきた実績があるだけに、ボルボの高級感もうまく演出できてきているのだろう。
実際に車両を眺め、運転席に座ってみると、やはり個性的なデザインが新鮮だ。ドイツ車はある意味同じ方向のベクトルで高級感を出しているが、その手法の違いは誰でも感じることができるのは間違いない。
走り出してみると350Nmもの大トルクのエンジンだけに、パワーに対する不満は全くない。静粛性も高く、プレミアムモデルに相応しい静かさがある。
試乗はインスクリプションで18インチを装着。ちなみにモメンタムは17インチが標準装備。ともに、オプションで19インチ、20インチまで可能となっている。
乗り心地はプレミアムモデルの標準的なものだと思う。つまり、いい意味でエンジンも操舵フィールも乗り心地もプレミアムモデルらしい性能が確保されている、ということで、V60のアドバンテージとしては、エクステリア、インテリアのデザインセンス、そして安全装備の充実というのがポイントになると思う。
ボルボのエステートを待っていた人、ドイツ車とは違ったプレミアムモデルが欲しいという人には、かなり刺激のあるエステートモデルだと思う。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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