110kgもダイエットしたM3 CSL
執筆:Ben Barry(ベン・バリー)
【画像】マクラーレン12CとBMW M3 CSL 最新のアルトゥーラとM3、M4も 全105枚
撮影:Luc Lacey(リュク・レーシー)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
今日の2台を貸し出してくれたソーニー・モータースポーツ社が誕生するきっかけとなったのが、BMW M3のレーシングカーだった。今でもM3との関係性は濃く、年に数回はCSLのメンテナンスもしているという。
M3 CSLのベースは、E46型のM3。当時はまだ2ドアクーペだった。細部まで大幅に手が加えられ、通常のM3とは異次元のドライビング体験が生まれている。
専用の19インチ・ホイールのほか、バンパーやカーボンファイバー製ルーフ、ダックテールのトランクリッドなどが目印。軽量化が強く意識され、110kgもダイエットしている。
3.2L直列6気筒エンジンにもチューニングが施され、17psを上乗せ。最高出力は360psに届いた。
専用のバケットシートに身体を収める。マクラーレンより遥かに座面は高く、一般的なモデルがベースなことを思い出させる。座る位置は少し前気味。最初は不自然に感じられるが、すぐに慣れる。
口うるさいドライバーなら、色々と気になる部分がCSLに見えてくるかもしれない。低速域では乗り心地は硬い。少し我慢の必要があるほど。
オートメーテッド・マニュアルのSMGは、変速がかなり手荒い。ゴツゴツと。変速時は、MTのようにアクセルを少し戻すと良い。狭い場所への駐車は避けたい。マクラーレン12Cの後では、ステアリングの反応も緩く感じてしまう。
とはいえ、速度が少し上昇すれば、サスペンションには充分なしなやかさが出てくる。SMGのメカニカルなフィーリングが、CSLのスパルタンな雰囲気とマッチする。M3 CSLは素晴らしい。
白眉のシャシーと中核をなす直列6気筒
シャシー・バランスは白眉。フロントタイヤのグリップ力は高く、反応はシャープ。リアタイヤのトラクションは強大。フロントエンジン・リアドライブという、悪用可能な特性も引き出しやすい。
M3 CSLの中核をなすのが、S54と呼ばれる直列6気筒ユニット。滑らかで静かで、普通に運転している限り荒々しさは感じられない。
CSLの車重は1385kgで、1434kgのマクラーレン12Cより約50kg軽いが、265psと23.4kg-mほど劣る。発生回転域もBMWの方が高い。
しかしアクセルペダルを踏み倒すと、専用のカーボン製エアクリーナーボックスから痛快な吸気音が響き、7900rpmめがけて秘めていた獰猛さが顕になる。オールドスクールなM3にふさわしい体験だ。
クルマの真の能力は、ドライバーがしっかり振り絞ることで引き出せる。すべてを体感したいという、強い想いに駆られてしまう。
ソーンによれば、BMWがこれまで開発してきた中で、E46型はレースカーのシャシーとしてベストだという。当初からレースカーも視野に設計され、ロードカーに展開したためだろう、と話す。
同時にマクラーレンはまったくの別次元だとも、ソーンは認める。シャシー構造やハンドリング、デザイン、パフォーマンス。新車時の価格は、マクラーレンの方が3倍高かっただけの理由はある。
M3 CSLの強みは、ランニングコストの手頃さだ。ソーニー・モータースポーツ社に持ち込めば、BMWなら税別で1時間あたり75ポンド(1万1500円)のサービス費用で見てくれるという。
コレクションするに値するBMW
M3 CSLは信頼性も高く堅牢だと、ソーンは説明する。E46型のM3では、トランクのフロアにひびが入るケースが稀にあるが、CSLは殆どないそうだ。ヴァノスと呼ばれる可変バルブタイミングも、問題は起きにくい。
SMGが不具合を起こす可能性はなくもないが、多くの場合は30ポンド(4500円)のソレノイドが原因。あるいは、フルードポンプだとのこと。
サーキット走行を楽しみたいなら、SMG用のラジエターを追加した方が良いと、ソーンが付け加える。ブレーキのアップグレードと一緒に。燃費が急速に悪化した場合は、バルブクリアランスの調整が必要になるとも。
BMW M3 CSLで最も手強い問題は、専用部品に関わる部分。CSLの純正ホイールは、再生産品でも見つけるのが難しいそうだ。サーキット走行で、すぐに2本を歪めてしまったという顧客もいるらしい。
CSLのステアリングラックは3400ポンド(51万円)もする。だが、ソーニー・モータースポーツ社では通常のM3用を使っているという。こちらは半額で手に入る。CSL専用のフロントバンパーは、入手困難だ。
「マクラーレン12CとM3 CSLとは、直接の比較はできないかもしれません。でも、CLSはコレクションするに値するBMWです。12Cは少しクラシックな見た目で、価値も保たれています。現実的に買えて、運転を楽しめるマクラーレンだと思います」
では、われわれのような庶民が7万ポンド(1050万円)を費やして1台を選ぶとしたら、どちらが良いのだろう。「どう考えても、マクラーレンでしょう」。ソーンは即座に答えてくれた。
マクラーレン12CとBMW M3 CSL 2台のスペック
マクラーレン12C(MP4-12C/2011~2014年/英国仕様)のスペック
10年前のAUTOCARのテストでは、フェラーリ458に負けている。だが軽量なカーボン・タブとツインターボV8エンジンで、419ps/tのパワーウエイトレシオを誇る。
英国価格:16万8500ポンド(2011年時)
全長:4509mm
全幅:1908mm
全高:1199mm
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.1秒
燃費:8.6km/L
CO2排出量:279g/km
車両重量:1434kg
パワートレイン:V型8気筒3799ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:625ps/7500rpm
最大トルク:61.1kg-m/3000-7000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
BMW M3 CSL(2003年/英国仕様)のスペック
E46型M3の限定モデル。1383台しかCSLは製造されていない。CSLの名の通り、鍵は110kgの軽量化。エアコンとステレオは無償オプションだったが、85%のオーナーが選んだという。
英国価格:5万8455ポンド(2003年時)
全長:4492mm
全幅:1780mm
全高:1365mm
最高速度:259km/h
0-97km/h加速:4.9秒
燃費:8.4km/L
CO2排出量:287g/km
車両重量:1385kg
パワートレイン:直列6気筒3246cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:360ps/7900rpm
最大トルク:37.6kg-m/4900rpm
ギアボックス:6速オートメーテッド・マニュアル(SMG)
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みんなのコメント
単に軽くするのは簡単だけど、車の性能そのものを踏まえた上で様々な応力に対処する事が出来る車体性能が必要なだけに、マクラーレンと同列に考えること事態、有り得ないかも?