スペイン・バルセロナでの2026年第1回F1プレシーズンテストが終了した段階で、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが、シェイクダウン仕様のマシンを観察、分析した。今回はアストンマーティン『AMR26』にフォーカスする。
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ペリカンノーズと前例のないリヤサスペンションを備えたAMR26は、すでに2026年のグリッドの中で強烈な個性を放っている。
AMR26は、アストンマーティンにとって大きな転換点となるマシンだ。これは20年以上在籍したレッドブルを離れて加入したエイドリアン・ニューウェイがアストンマーティンで初めて設計したF1カーである。第一印象としては、まったく新しい2026年技術規則を、堅実かつ整合性のある形で解釈したマシンに見える。
「2026年のレギュレーションを初めて見た時、正直に言えば『なんてことだ、自由度がほとんど残っていない』と思った」とニューウェイは言う。
「だが細かく読み込んでいくと、そこには十分な柔軟性があることが分かる。もちろんもっと自由度があればとは思うが、受け入れ可能な範囲ではある」
視覚的にも、AMR26は明らかに他のマシンとは一線を画している。その設計は、根本的に異なるコンセプトと複数の独創的な空力ソリューションに基づいており、2026年世代の中で最も注目を集める存在のひとつになりそうだ。ただし未知数も残る。走行プログラムが非常に遅れ、かつ限られていたため、これらの大胆なコンセプトの真のポテンシャルは、まだ十分に評価されていない。
ニューウェイが手掛けたアストンマーティン初のF1カーが開発の出遅れというハンデを背負ったのは、新しい風洞設備の完成を待たねばならなかったことにある。
「2026年マシンの模型を風洞に入れられたのは4月半ばだった。一方、多くのライバルは、昨年1月初旬、空力テスト解禁と同時にモデルを用意していた。彼らに対し約4カ月の遅れが生じ、その結果、研究と設計のサイクルは極端に圧縮された。マシンが本格的に形になったのは最後の最後で、バルセロナでのシェイクダウンに間に合わせるため、ぎりぎりまで悪戦苦闘することになった」
それでは具体的に、AMR26の特徴を見ていこう。
■ペリカンノーズ、そしてメルセデスと共通する解決策
AMR26の最も目を引く特徴のひとつが、フロントにある独特の形状のノーズ、いわゆる“ペリカンノーズ”だ。
そのシルエットはオタマジャクシを思わせ、過去には2001年のBARや2009年のウイリアムズなどで見られた発想にも通じる。空力的な狙いは断定しづらいが、明確な意図を持った選択であることは間違いない。
フロントウイングの取り付け方法も特徴的だ。アストンマーティンはメルセデスW17と同様、ノーズを支持する支柱をメインプレーンではなく、2枚目のエレメントに固定している(上の比較写真参照)。この構造では、アクティブエアロ作動時に動くのは最上段のエレメントのみとなる。本来レギュレーションでは、2つの要素(最大60mmと30mm)を動かすことが許されているため、一見すると自由度が制限されているようにも見える。
しかしこの配置には複数の利点が考えられる。ノーズを2枚目のエレメントに固定することで、構造部をより短くできる可能性がある。また、メインプレーンの形状設計の自由度が増し、空力的な荷重を3枚目のエレメント全体に均一に分配できる。この特徴は、同様の構造を採用するW17にも見られる。
■非常に野心的なフロント周り
フロントサスペンションは、多くのライバルたちと同様にプッシュロッド式を採用(例外はアルピーヌとキャデラック)。さらにマルチリンク構造を取り入れており、これは2025年のマクラーレンが先行し、今や多くのチームが採用している。
ロワアームの2本のアームは、ホイール側で一点に収束せず、2点でハブに接続される構造になっている。これにより仮想的な操舵軸が形成され、ステアリング角やサスペンションのストロークに応じてキャンバー角やトー、車高を変化させることが可能になる。タイヤのマネジメント向上や、空力的に有利な位置へのステアリングロッド配置にもつながる。
またアッパーアーム前方はレギュレーションが許す限界まで高く配置され、ボディ上面にはわずかな膨らみが生じている。一方、後方アームはかなり低く設置されており、強いアンチダイブ特性を生み出している。これはレッドブルの思想とは対照的だ。
■2023年型レッドブルを思わせるサイドポンツーン
サイドポンツーンも非常に攻めた設計だ。強いダウンウォッシュ効果を狙った形状で、全体の流れとしては他チームと共通するが、そのコンパクトさは際立っている。
ラジエターを収めるスペースは非常に限られているように見え、その結果として極端に深く長いアンダーカットが形成されている。
「非常にコンパクトなマシンだ。これまでアストンマーティンで試されたどんなものよりもね」とニューウェイは語る。
ポンツーン上下面の厚みはどちらも薄く、側面全体にわたって大きな空間が生まれている。吸気口の下側はあたかも下唇を突き出したような形状で、2017年のフェラーリSF70Hや2023年のレッドブルRB19を思わせる処理だ。
全体としてはメルセデスW17やフェラーリSF-26と同様、上面を大きく下げてディフューザーへクリーンな気流を送り込む思想だが、そのアンダーカットの大胆さは群を抜いている。
ドライバー頭上のエアボックスは三角形のレイアウトで、“バイキングの角”のような造形も見られる。ニューウェイ自身は2005年のマクラーレンMP4-20で似た発想を使っていた。一方、エンジンカバー後端の冷却出口は非常に大きく、新世代パワーユニットの高い熱要求を物語っている。
■前例のないリヤサスペンション
リヤでは、自社でギヤボックスを設計したことで、サスペンション取り付け位置の自由度が生まれた。
特に特徴的なのは、リヤサス上側アームの後方部分がギヤボックスケーシングではなく、リヤウイング中央支柱に取り付けられている点だ。この配置の主目的は空力だと考えられる。アーム同士の間隔を広げることで気流の妨げを減らし、ディフューザー上方によりクリーンな空気を流すことができる。
さらにこの構造は、アンチスクワット特性を強める効果もある。2026年型マシンはより大きなトルクを持つため、後輪に安定して駆動力を伝えることが重要になる。また、荷重移動とダウンフォースの影響でリヤ上部アームはほぼ水平に近づき、追加の空力デバイスのような働きをする可能性もある。
ディフューザー外側には開口部が設けられており、ここから高エネルギーの空気を送り込むことで、気流の引き抜きを強め、フロア全体の性能向上を狙っている。この発想はすでにメルセデス、フェラーリ、レッドブル、ハースなどでも見られる。
シェイクダウン時のAMR26は、リヤの車高がかなり高く、静的レーキ角は1.5~2.5度と推定されている。2026年はフラットなフロアに回帰しているが、ディフューザー形状は従来と大きく異なるため、高レーキが最適解かどうかはまだ分からない。
リヤウイングの翼端板には上向きの折れが2つあり、これも特徴的だ。類似のアイデアは2022年以前にもあったが、より低い位置に配置されていた。
■ホンダ製パワーユニットでの経験を積む必要性
アストンマーティンは、2026年からホンダとのワークス契約により同社のパワーユニットを単独で使用する。アストンマーティンは、この新型エンジンの知見をまだ十分に蓄積できていない。バルセロナでの走行距離は302.71kmにとどまり、メルセデス(5200km超)、フェラーリ(4600km超)、レッドブル(約2900km)に比べて圧倒的に少ない。
バルセロナでアストンマーティンは、直線で最高速まで出さない低速走行を含むプログラムを実施することを他チームに事前に伝えていたとも言われている。そういった制限を設けた理由は明らかにされていない。
現時点では重量超過の可能性も指摘されており、真のポテンシャルからはまだ遠い状態にあると見られる。独創性が即座の優位性を保証するわけではないが、その発想の豊かさは、いかにもニューウィらしいものだと言える。
[オートスポーツweb 2026年02月09日]
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みんなのコメント
あの時もリヤサスペンションアームを空力最優先で設計していたから。