ISFのために設えた5L V8ユニット
2007年、レクサスがISFのために設えた5L V8ユニット、その終焉がじわじわと近づいている。
【画像】渡辺敏史がラストラン!8年をかけて極まったレクサスLCと名機2UR-GSEを阿蘇路で味わう 全78枚
この原稿を書いている時点でレクサスのWEBサイトを覗くと、RCFとIS500については販売終了が既に告知されており、LC500及びそのコンバーチブルについては、納期が5.5~7.5ヵ月と表示されている。が、こちらも店舗によっては受注を終了しているところも多いと聞く。
トヨタの高性能エンジンと縁の深いヤマハ発動機との共同開発となる2UR-GSE型、その販売終了の理由は、エンジン本体というよりもそれを支える電子プラットフォームの、サイバーセキュリティなど最新の法規対応が難しいという理由があるようだ。
日本のメーカーが開発するV8エンジンは、そもそもラグジュアリーサルーンに用いられるものとしての側面が強かった。実際、2UR-GSEも元ネタはLS600hが搭載する2UR-FSE型だ。
それをベースに高回転、高出力化や冷却、循環系の強化などチューニングを隅々まで加えることで1本立ちさせた。4気筒や6気筒ならまだしも、大排気量、マルチシリンダー、自然吸気というイジるには手数も多く負荷も大きい骨格をわざわざスポーツユニットとして仕立てた例は日本の場合、これをおいて他にはないだろう。
ちなみにLFAに搭載される1LR-GUE型は同時期に登場しているが、1日1基のハンドビルドゆえ、量産という枠にはあたらない。
最後になるかもしれない
もしかしたら最後になるかもしれない、そんな2UR-GSEに触る機会を得たのは、レクサスが定期的に開催している『サーキットエクスペリエンス』の取材に向かう道すがらだった。
熊本空港とオートポリスとの往復に用意いただいたのは『レクサスLC500 Sパッケージ』だ。ちなみにこのサーキットエクスペリエンスは大舵角での旋回や全制動、レーシングコースでの先導走行など、非日常的な速度域でのクルマの挙動を体験するもので、得られた経験値は普段のドライビングの余裕にも繋がるだろう。
1泊ぶんの荷物を入れたカバンを後ろに積んで、ナビをセットしスルスルと走り出す。LCは大人2名のグランドツーリングをカバーするできる積載性を前提としているから、後席に荷物や上衣を放り込んだ上で、トランクルームには機内持ち込みサイズのスーツケースをふたつ積むことも余裕だ。
もちろん小柄な人なら座ることも出来なくはないが、立派な設えはあくまでそこを物置きに使うという粋のためにある。そういう、ビッグサイズのクーペはもはやドイツのプレミアム勢でさえ作り続けることが難しい。そうやってマーケットが極端に萎む中でも、LCは淡々と販売を続けてきた。
LC500はRCFやGSFなどのいわゆる『F銘柄』とは異なり、サーキットをきっちり走り込むという設えとは一線を画している。それでもGPSと連動してリミッターをカットするサーキットモードを備えるなど、然るべき状況ではしっかり応えてくれるドライビングプレジャーを備えていることは、以前クローズドコースでの試乗でも確認済みだ。
そういう性能的な余剰も、自らの振る舞いの余裕のために纏うのがこの手のクルマの常套でもある。
ニュアンスで生きるクルマたち
そんなLCのような、ニュアンスで生きるクルマたちがいよいよ存続しづらくなっている理由は思い当たるところもある。ひとつはスポーツモデルの快適性が引き上げられたこと。フェラーリにランボルギーニにマクラーレンに……と、今やスーパーカー領域のクルマはタウンライドでも苦痛のない乗り心地を備えている。
一方で運動性能面ではSUVも相当なレベルに達しているわけで、機能や性能の軸でみれば大柄なクーペはどっちつかずで不便なものにしかみえない。だからいいんじゃない……のというのは、もう人生の酸いも甘いも噛み分けて山っ気も拔けたオッさんだからいえることで、ギラギラに前のめりな現役組は耳を貸さないだろう。
そんなことを考えつつゆるゆるとLC500を走らせていると、いつしか道は阿蘇を貫くシチュエーションへと変わる。広大な阿蘇の平原に沿うように通されたそれは、見通しの良い高速のワインディングだ。
それまで周囲の交通に合わせて2000rpm以下の低回転域でぬるぬると歩みを進めていた2UR-GSEは、アクセルの踏量に比して幾重にも表情を変える。2000rpmを超えると脈動音が立ち始め、3500rpmを超えた辺りからはエキゾーストバルブが開放、粒立ちを揃えながら7000rpmオーバーのレッドゾーンまで独特の中高音を鳴り響かせる。
RCFやIS500も同様だが、バルブが開いても直管状態ではなく消音を効かせた節度のある音圧が心地よい。そして音質で独特の高揚感を生み出す辺りはヤマハの調律も奏功しているのだろう。ちなみにヤマハはLFAのサウンドデザインにも深く関わっているが、LC500のそれも音の響かせ方に相通じるものが感じられる。
心の中のベンチマーク
LCの開発を指揮したのは現在の佐藤恒治社長だが、氏はそのベンチマークとして当時のBMW6シリーズの名前を挙げていた。が、それは主力市場である北米での販売台数面からみた商業的な建前であり、自分の心の中にはひっそりと別のベンチマークがあったと話してくれたことがある。
それがマセラティの先代グラントゥーリズモ……だといえば、LCとの繋がりを重ね見ることも出来るだろう。
早朝のマルホランド・ドライブを駆け抜けてマリブへと下りカフェに立ち寄る、そんなクルマ好きには至福のウィークエンドをより豊かなひと時にしたい、そういう造り手の想いがもちろんサウンドにも込められているわけだ。
ゆったりとしたワインディングでエンジンを大いに鳴らした後に待ち構えるのはタイトコーナーが連続する山道だ。重量級の大柄なクーペではもちろん、ヒラヒラと舞うように走るというわけにはいかない。が、体躯を忘れさせてくれるほど従順に応答し機敏に反応する、そういうスポーツドライビングへの適応性の高さは充分に感じさせてくれた。
LCは登場から8年以上の時をかけて、ほぼ毎年のようにシャシー周りに改良を加えるなど熟成を極めていて、その過程を体感してきた身としても、現状の仕上がりは乗り心地的にもハンドリング的にも極まった感がある。
その官能性においては類稀なものとして、エンジン史に名を残すことになるだろう2UR-GSE。恐らくはそれを搭載する最後のモデルとなるLC500は、その任を担うに相応しい完成度を身につけながら、いまだ色褪せない存在感も示している。この、真に稀有なビッグクーペは今後、レクサスにとっても日本のクルマ好きにとっても、誇らしい礎であり続けるはずだ。
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