EVの回生ブレーキはなぜ利くのか
回生とは、英語ではregeneration(リジェネレーション)という。日本語の回生という漢字は、それぞれ「回」はもとへ戻る、「生」は生きる、蘇るという意味がある。EVにおいて回生とは、減速時に駆動用モーターが発電機に切り替わり車載バッテリーに充電することを指す。充電されていた電気で走り、減速で電力を生み出して充電し、バッテリーに戻す、あるいは電力を蘇らせるからだ。
<第5回>電気自動車独特の回生ブレーキ | 知って役立つEV知識・基礎の基礎 御堀 直嗣
モーターも発電機も内部の機構は同じで、それぞれの機能は磁力によって生み出される。回転する軸(回転子)と、それを囲む筒状の固定子それぞれには磁力があり、互いの磁力が影響しあって回転軸をまわす。
永久磁石のN極とS極の関係は、子どものころに体験しているのではないだろうか。N極とS極を向き合わせると引き合う力が働き、N極同士、あるいはS極同士を向き合わせると反発する力が働く。この関係を利用して、軸と筒のふたつの磁石が影響しあうことで筒の内側にある軸が回転する。
量産市販EVでは多くが永久磁石式同期モーターで、回転子に永久磁石を使い、固定子には電磁石を用いる。固定子の電磁石は電流量によって磁力が変化する。このため、アクセルペダルの操作で加減速することになる。なかには回転子も電磁石のモーターがあるが、それでも基本的な考え方は変わらない。
減速ではアクセルを閉じても回転子がまわっているので、その磁力の影響で発電する。あわせて、回転子の回転を止めようとする磁力の働きになる。その作用によって、あたかもブレーキをかけたような力が働く。エンジン車でいえばエンジンブレーキのような効果だ。したがって、アクセルペダルを戻した際に働く減速を回生ブレーキという。
エンジンブレーキは変速機を低いギヤに設定した場合は強く利くが、一定の速度で走っているときのように高いギヤで走っていると、すぐには減速度を感じにくい。そこでギヤをより低い設定に切り替える必要があるが、EVは多くが変速機をもたない。そして回生ブレーキの強弱は、アクセルペダルの踏みこみ量で変えることができる。EVのアクセルは音響機器の音量スイッチのようなものだ。アクセルペダルの踏み込み量次第で、回生ブレーキの強弱を即座に変更できる。
アクセルペダルを少し戻したときは交通の流れのなかで速度調整に適した減速が得られる。ペダルを大きく戻したり足を離すと強い減速度となり、あたかも急ブレーキをかけたようになる。これによって、いわゆるワンペダル操作と呼ばれる、アクセルペダルだけで加減速し、ペダルから足を離せば停止するような制御も可能になるのである。
近年のEVは安全性と制御性能が大きく向上している
ところで、回生ではモーターが発電機に切り替わり、発電した電気を車載バッテリーに充電すると説明した。そのとき、もしバッテリーが満充電(100%)であったら、充電できず回生ブレーキが機能しなくなるのではないかとの懸念がある。
そのとおりだ。ただし、厳密には回生ブレーキが働く。
理由は、EVに車載されているバッテリーは、メーター上の表示でSoCが100%となっていても若干のゆとりをもっているからだ。したがって、100%まで充電して走り出しても、アクセルペダルを戻せば回生ブレーキは作用する。
EVの車載バッテリーについて、その容量の数字がネットであるかグロスであるかという話が出てくることがある。ネット(Net)とは正味の数値で、グロス(Gross)は総合的な数値をいう。一般的に、EVのバッテリー容量はネット表記とされ、実際に使える電力量であることを意味するとされている。しかし、実際には容量にゆとりを残している。そこで100%の満充電であるとしても、回生ブレーキを使えることになる。
グロス表記であると、バッテリーが技術上可能な容量になり、これで100%充電をしたら、それ以上の電力をバッテリーが受け入れることはできない。充電量が減らないと回生ブレーキの効果は得られないことになる。
かつて、100%の満充電の際に回生ブレーキが利かなかったり利きが弱かったりしたことがあった。しかし現在は、ほぼそのようなことはないのではないだろうか。実際に私が保有する日産サクラも、バッテリー容量が20kWhと多くないので、外出の際は100%充電で出発することがあるが、それでも回生ブレーキは利いている。
回生ブレーキの作動については、EVが減速をしているのにブレーキランプが点灯せず後続車が戸惑うことが以前はあった。ことにアクセルペダルを大きく戻して強い減速が行われた際には、後続車に追突される懸念もあった。
しかし今日では、わずかにアクセルペダルを戻して速度調整する場面でブレーキランプが点灯することはないが、大きくペダルを戻し速度を落とすことを目的とするペダル操作の際には、ブレーキペダルを踏んでいなくても、ブレーキランプが点灯するようになっている。
エンジン車でも、エンジンブレーキが機能しているときにブレーキランプは点灯しない。ブレーキペダルを踏んで速度を落とす意思が明らかなときブレーキランプは点灯する。強い減速を意図しながら、変速機を原則チェンジして強いエンジンブレーキを働かせても、エンジン車のブレーキランプは点灯しないのだから、EVの回生ブレーキでのブレーキランプ点灯は、後続車に対しより丁寧に状況を知らせているといえるだろう。
EVが市販されてから15年以上過ぎ、もはやEVはエンジン車以上に安全かつ安心して利用できる性能や機能を備えている。過信は禁物だが、15年前の状態を取り沙汰し、EVがエンジン車に劣るだとか使い勝手がよくないだとか、まして危険であるといった風評については、いまのEVの姿を適切に説明する必要がある。
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みんなのコメント
昔の自転車は、ライトつける為にダイナモをフロントタイヤに当てて、回生電力を利用して灯りをつけていましたが、ダイナモ使用した途端タイヤにブレーキがかかりペダルが一気に重くなりますから。
でも、そんなの昭和生まれしか知らないか。