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伝統の「4WDの三菱」は健在だった!! 他社も注目するその技術力とは!?

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伝統の「4WDの三菱」は健在だった!! 他社も注目するその技術力とは!?

 今回の新型アウトランダーPHEVのツインモーター4WDは前後輪を各々独立したモーターで駆動させるシステムだが、その完成度の高さは他社の開発陣に舌を巻かせるほどのできのよさだったというから興味深い。

 具体的には三菱の技術のどこが凄いのか、そして過去のランエボやパジェロから綿々と受け継がれてきたAYC、スーパーAYC、S-AWC、そして今回のツインモーター4WDについて、袖ケ浦フォレストレースウェイでアウトランダーPHEVのハンドルを握った国沢光宏氏がレポートする!

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文/国沢光宏、写真/三菱、ベストカー編集部

[gallink]

■あのスバルも絶賛した三菱4WDの蓄積された知見!

 新型アウトランダーPHEVが多くのメディアやジャーナリストから高く評価され、ラリーアートブランドを復活させるなど、ここにきて三菱自動車の存在感は赤丸急上昇といったイメージ。なかでも新型アウトランダーPHEVに試乗した皆さんに共通する感想は「やっぱり三菱自動車の4WD技術って凄いよね~」というもの。

三菱自動車の4WDといえば、「パリ・ダカールラリー」で1983年のワークス初参戦以降、参戦回数26回、連続7回を含む12回の総合優勝を果たした

 新型スバルWRX S4試乗会でスバルの開発陣と話をしていたら、「新型アウトランダーPHEVの4WDはやはり違うなと。最近、RAV4以降に急激にレベルの上がったトヨタさんの4WDに注目してきて、三菱さんはあまり見ていなかったのですが、やはり三菱さんが蓄積してきた4WDの知見は凄いものがあります」と絶賛していた。

 実際、三菱が新型アウトランダーの4WDを開発するにあたり、「最強のランサーエボリューション」を担当していた澤瀬さんという「駆動力のマイスター」が指揮を執っている。詳しい技術内容を説明しようとすれば「なぜスマホで動画が見られるか?」と同じくらい難しい説明になるため、バックボーンから紹介していきたいと思う。

■WRCで鍛えられ完成度を上げた「AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)」

 ご存じのとおり、ランサーエボリューションはWRCに出場するために作られたホモロゲモデルとして登場した。ランエボIIIまでの第1世代を見ると、普通のセンターデフ式フルタイム4WDだったものの、1996年発表の第2世代のエボIVになり、第1世代で得た4WDの知見が入って後輪左右の駆動力を別個にコントロールするAYCという技術を入れてくる。

1996年に登場したランサーエボリューションIV。全長4330×全幅1690×全高1415mm、4G63型2L直4ターボエンジンは280ps/36.0kgm、AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を初めて採用した

 AYCは戦車のように右輪と左輪の駆動トルクを別個にかけるという技術で、アンダーステアの出やすいFF横置きベースの4WDを、まるで後輪駆動車のように「アクセル踏むと曲がるクルマ」とした。当時、こういった4WD技術を投入したメーカーは世界を探しても三菱自動車だけ。そしてAYCの能力を拡大していく。

 当初、後輪だけだった駆動力配分の制御を前後でも行うようになる。WRCに出ている車両は、前後の駆動力配分だけでなく、前後輪左右の駆動力配分も電子制御していたと言われており、WRCでトミ・マキネンが圧倒的な速さを見せつけた。とはいえ「4つの駆動軸を制御して曲がる」というロジック、とっても難しい。

■初期のツインモーター「S-AWC」はとってもアンダーステア

 WRCで4WD技術を極めた三菱自動車だったが、不祥事やリーマンショックで大幅自粛モードに入ってしまい、同時に「速く走るための4WD」も社内的に否定されてしまう。むしろ、「徹底的に安定感を持たせないとならない」という流れになる。益子前社長のクルマ感を100%具現化させた、ということになるだろう。

 その代表的存在が先代のアウトランダーPHEVだった。発売直後に試乗したのだけれど”曲がらない”と表現していいほどのアンダーステア。確かに前輪からグリップを失っていくため、テール流れるスピンモードに入ることはない。でも後輪のグリップ力を引き出せていないため、コーナリングスピードという点で遅くなってしまった。

2012年に登場したアウトランダーPHEV。ツインモーターによるS-AWCを初めて採用

 何より運転していて楽しくない。そんなクルマ作りを見ていて、社内の有志は「このままじゃダメだ」と考えたのだろう。ほかの部署に回されていた駆動力マイスターの澤瀬さんを筆頭にランエボの開発に携わっていた技術者を現場に復帰させた。それを受けて改良されたのが、2017年以降に出てきたモデル群です。

 興味深いことにアウトランダーPHEVは2016年にエクステリアまで変えるマイナーチェンジを行ったのだけれど、澤瀬さんたちは「一日でも早い段階で変えたい」と考えたという。翌年に「曲がる4WD」のコンセプトを入れ改良。このあたりから三菱自動車の4WD技術は徐々に本来の持ち味を取り戻し始める。

■ランエボの知見で生まれ変わったアウトランダーPHEV

 当時、澤瀬さんに話を聞いたら、「前後モーター駆動の4WDはエンジン駆動の4WDよりさらに制御幅を広く取れます。例えば、FFベースの4WDだとアクセルオンで4輪同時に駆動力をかけられます。でも、前後モーター駆動だと、後輪から先に駆動力をかけることができるんです」。駆動力で車両姿勢のコントロールまでできるということ。

 新型アウトランダーPHEVのプラットフォームは日産。けれど4WDに代表される走りの味付けは全面的に三菱自動車が担当した。現時点で袖ケ浦サーキットでしかアウトランダーPHEVのハンドルを握れていないものの、日本カー・オブ・ザ・イヤーの試乗会でも絶賛されていた。素直に曲がるし、何より楽しい! 

袖ヶ浦フォレストレースウェイを疾走する新型アウトランダーPHEV。シャシーとサスペンションの性能が向上し、磨きのかかったS-AWC制御でサーキットを気持ちよく走れる

 雪道や未舗装路での走りは動画を見るかぎり相当期待してよさそう。三菱自動車の4WD技術、いまだに世界TOPクラスだと思う。

[gallink]

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みんなのコメント

19件
  • 「アウトランダーPHEVは2016年にエクステリアまで変えるマイナーチェンジ」。2015年7月にしたはず。ご自分もオーナーだったはずで間違えちゃいけない。
    この当時からも、前後モーターの回生制動ブレーキや加速時は状況に応じてディレイ掛けたり複雑な制御をしている。
    下りのコーナーでフロントが逃げないセッティングと安定感は素晴らしかった。
    ただ、ユーザーはフワフワ、フニャーンな乗り心地を好むし、高級車はそういうものとすり込まれている。
    某社の設計と話していても万人向けには意識してそうしているみたいだから、故益子氏が販売一人勝ちメーカーを真似ようとした意図は分かるが、それはニッチ市場で生きる三菱には合わない。
    長年トヨタ車だったが必ず足は手を入れて乗っていた。
    この車はノーマルで満足できた。独自路線で生き残って欲しい。
  • AYCデフを初めて搭載したのは,ギャラン/レグナムのVR-4です.
    同年発売のエボIVのスポーツイメージで間違われがちですが,ギャラン兄弟が先です.
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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