SUBARUの「フォレスター」が、独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA/ナスバ)の「2025年度 自動車安全性能 ファイブスター大賞」を獲得した。2026年5月28日に表彰式が行われたので、その模様のレポートとともに、SUBARUの安全への取り組みについて紹介していこう。
「2030年までの交通事故死亡者ゼロ」実現への道筋
NASVAは国土交通省が設立に関わる独立行政法人で、正式名称を「独立行政法人 自動車事故対策機構」という。自動車の安全性能を評価するアセスメント、NCAPの日本版である「JNCAP」の実務を担う存在であり、その名のとおり自動車事故に関する「事故防止」と「被害者支援」を中心に活動している公的機関だ。
ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
そのNASVAが実施している自動車アセスメント(衝突安全試験など、「どのクルマがどれだけ安全か」を中立的に評価・公表する活動)において、現行フォレスター(評価実施車両は「Premium S:HEV EX」グレード)が満点に近い高得点を叩き出し、最高評価である「ファイブスター大賞」の栄冠に輝いた。
表彰式の壇上には、フォレスターの開発を統括した商品革新本部・プロジェクトゼネラルマネージャーの藤居拓也氏が登壇し、NASVAの理事長 中村晃一郎氏から受賞の証を受け取った。
これを機に、SUBARUが実直に推し進めている「2030年までの交通事故死亡者ゼロ」を実現させるための取り組みを紐解いてみたい。
【未然に防ぐ】中島飛行機から受け継ぐ「アクティブセーフティ」
まずは事故を起こさない取り組みだ。これは「アクティブセーフティ(予防安全)」と呼ばれる分野で、事故を未然に防ぐことを指す。具体的には、航空機メーカーである「中島飛行機」時代から受け継がれている「優れた視界の確保」と「運転操作への素直な挙動の実現」、そしていまやSUBARUの伝家の宝刀となっている「アイサイト」による事故防止システムが挙げられる。
0次安全と呼ばれる事故予防のための重要な要素、視界の確保については、ボディ剛性の維持やスタイリングデザインとの緻密なバランスの上で、何よりも「安全」を最優先に設計されている。よく話題にのぼるAピラー(フロントガラス両脇の柱)による斜め前方の視認性問題をはじめ、ボンネットフード越しの見下ろし角や斜め後方の死角の最小化など、その工夫は多岐にわたる。
走行安全にあたる動的性能や危険回避性能を実現する、素直なハンドリングや車体の挙動は、すでにSUBARUのお家芸と言っていい分野だ。いざという瞬間のとっさの回避操作に対して、車両がどれだけドライバーの意図どおりに反応するかは、事故を未然に回避するために極めて重要な要素となる。これは走りのスポーツ性を追い求めることと共通する部分が多く、SUBARU車の基本性能の高さの証明でもある。
そしてその危険回避を支援する「アイサイト」に関しては、1999年から独自にステレオカメラの研究開発を続け、先進運転支援システムとして今や業界をリードしていると言ってもいいだろう。現行型では、システムの中核をなすステレオカメラに加え、新たに「広角単眼カメラ」を装備。これにより、従来はカバーが難しかった低速域での左右からの歩行者や自転車の飛び出しなどに対して、対応領域を大幅に広げている。
【衝突から守る】衝撃を分散する「パッシブセーフティ」と緊迫の衝突実験
続いて、万が一の衝突時に乗員や歩行者を守る「パッシブセーフティ(衝突安全)」にも、抜かりなく力が注がれている。その実現にはボディの骨格構造をはじめ、エンジンや足まわり、外装の構造、素材の性質に至るまで、あらゆる要素が関係している。
今回、その取り組みを直にその目で見て体感してもらおうという計らいで、オフセット衝突の公開実演が用意された。場所はSUBARUが保有する実験施設だ。
ダミーの衝突用台車(1200kg)と、ファイブスター大賞を受賞したフォレスター(※実演車両はターボエンジン車)が対峙する。衝突設定ポイントの両側からそれぞれ50km/hのスピード(相対速度100km/h)で、互いの前面の半分同士がぶつかる「オフセット衝突」が再現された。
自動車メーカーが公開している衝突試験の映像を見る機会はあっても、生で目撃する機会は滅多にない。さまざまな媒体社から集まった100人を超えるメディア関係者たちが固唾を飲んで見守る中、実験がスタートした。
準備が整いカウントダウンが行われると、空母のカタパルト(射出機)のような牽引機構によって、左右から台車とフォレスターが猛烈に接近。みるみるうちに距離が縮まり、次の瞬間「バンっ!」という、耳を劈(つんざ)くような激しい衝撃音をともなって激突した。
衝突の瞬間、フォレスターのフロントセクションがグシャリと潰れ、その直後に後輪が数十センチも跳ね上がる姿が網膜に残った。と同時に、施設内に響いた破壊力を感じる想像以上の音に、メディア陣は一瞬言葉を失っていた。
しかし、現場のアナウンスで我に返り、車両を観察する余裕が生まれる。
衝突した右側の、フロントフェンダーとフロントドアの境界から前の部分は、約半分にまで押し潰されていた。ところが、その境界からうしろの居住空間(キャビン)は、ほぼ完全に元の形状を保っている。のちに行われた解説で、スタッフがフロントドアのノブに手をかけて引くと、何ら抵抗もなく普通に開いた。
これは、事故の際に乗員が自力で脱出、あるいは外部から救出できるよう、キャビンの形を強固に保つ「新環状力学構造ボディ」思想を盛り込んだ、フルインナーフレーム構造の「SGP(SUBARU・グローバル・プラットフォーム)」の設計の賜物だという。
一方の衝突試験用の台車に目を移すと、衝突面に装着された緑色のハニカム構造のアルミブロックが、受けた衝撃の凄まじさと角度を物語るように変形していた。この変形具合を精密に解析することで、相手車両や歩行者へのダメージを軽減する「コンパチビリティ(相互安全)」構築のヒントを得ているそうだ。
車内にはまだエアバッグ展開時のガスの匂いが漂っていて生々しかったが、多数のセンサーを装着されたダミー人形は、破損の痕跡もなく平然と座席に佇んでいた。内部を見回してもトリムや内張りに目立ったダメージはなく、エアバッグを見なければ、あれほどの衝撃を受けた空間とは思えない状態だった。潰れることで衝撃を吸収する「クラッシャブルゾーン」と、形を保って乗員を保護する「セーフティゾーン」の役割分担の鮮やかさを目の当たりにし、言葉では伝えきれない圧倒的な説得力を受けた。
ちなみに、SUBARU伝統の「水平対向エンジン」は、衝突時の衝撃で室内に押し込まれないよう、フロア下に潜り込んで脱落する設計になっている。実際にエンジンがぶつかりそうな前席足元付近を確認したが、室内の変形は見られなかった。
【二次災害を防ぐ】燃料漏れ・火災への徹底したリスク管理
また、人員の直接的な保護と並んで重要なのが、「火災の発生要因を作らないこと」だという。
ガソリン車やディーゼル車などの内燃機関車は燃料タンクを搭載し、エンジンとの間をホース(燃料配管)で繋いでいる。衝突の衝撃でこの経路が破損して燃料が漏れ出し、そこに損傷した電装系のショートによる火花(スパーク)が重なると、一気に引火して車両火災につながる危険性がある。
そのためSUBARUではまず、燃料配管が損傷を受けにくいように配置するとともに、万が一燃料系が破損しても燃料の漏れ出しを最小限に食い止め、引火リスクを極限までゼロに近づける工夫を施している。
この安全思想は、現在高い評価を得ている次世代ハイブリッド「S:HEV」や、今後増えていくであろう「BEV(電気自動車)」にも一貫して適用されている。これらは大型で高電圧を発生させ、衝撃による破裂やショートの危険性を内在する駆動用バッテリーや制御システムを搭載しているため、より厳格な防護構造が求められる。
【交通弱者も守る】歩行者&サイクリスト保護エアバッグのこだわり
さらに、SUBARU車には「歩行者保護エアバッグ」を独自開発して標準装備していることも大きなトピックだ。今回は、さらに自転車乗員への保護まで範囲を広げた新型が実装されている点もアピールされていた。
簡単に解説すると、歩行者とサイクリストでは衝突時に衝突する頭部の位置(高さ)が異なる。自転車に乗っている人は高い位置から倒れ込むため、フロントガラス両脇の硬いAピラーに頭部を強打する確率が高い。新型エアバッグは、そのAピラーまでをカバーする形状に進化している。
ちなみに、この歩行者&サイクリスト保護エアバッグは、フロントバンパー内部に圧力センサーを備えている。しかし、衝突時にセンサー周辺のバンパーが適度にしなって衝撃がセンサーまで到達しなければ作動しない。そのため、デザインの美しさやランプ類の配置などの要件とセンサーの作動性を両立させるべく、開発チームとデザイン部との間で何度も協議が繰り返され、最終的な造形・構造に仕上げられたという。安全性をアイデンティティとするSUBARUにとって、絶対に譲れない部分だろう。
積み重ねてきた安全の実績と、SUBARUの使命
今回の催しでは、SUBARUの保有する施設にて現行型フォレスター(ターボモデル)による衝突実験が実演されたが、NASVAによる2025年度の安全評価試験は茨城県筑波にあるJARI(日本自動車研究所)の「自動運転評価拠点 Jtown(筑波)」と「城里テストセンター」で、規定に基づき厳格に行われている。
ちなみに試験用の車両は3台用意され、フルラップ(正面)衝突、オフセット衝突、側面衝突、そして歩行者へのダメージを見る脚部と頭部の保護性能試験と、複数の衝突試験に分担して用いられるとのこと。
2025年度のJNCAPアセスメントでは4車種※が評価を受け、フォレスターは「予防安全性能」と「衝突安全性能」の双方の項目で最高ランクである「Aランク」を獲得。さらに事故時の「事故自動緊急通報装置」の搭載要件を満たしたことで、「自動車安全性能 ファイブスター賞」を受賞。その上で、2025年度の全評価対象車種の中で最高評価となる「自動車安全性能 ファイブスター大賞」の栄冠に輝いた。
※評価対象は販売数上位モデルから選定。4台は少ないように思えるが、各メーカーのモデルチェンジのサイクルなどが影響する。2023年度は多く、16台が対象となっていた。
ちなみにSUBARUの受賞歴を振り返ると、2016年度にインプレッサが当時の「衝突安全性能評価大賞」を受賞して以来、2018年度、2020年度、2021年度、2023年度と立て続けに大賞を受賞。一歩一歩積み重ねてきた安全開発の成果を証明し続けている。
SUBARUは今後も、自車だけでなく交通社会全体の安全性を向上させるため、他車への加害性低減や歩行者・自転車といった交通弱者の保護など、「相手を守る性能」も追求していく構えだ。
「ひとりでも多くのお客様に安全なクルマに乗っていただくこと」をなによりの使命とし、アイサイトや歩行者保護エアバッグ、強固な衝突安全ボディといった高度な安全装備を全車標準化しながら、ユーザーがアプローチしやすい「手の届きやすい価格」との両立を図っていくという。
今回、過酷な衝突試験の様子を間近で体感したことで、SUBARU車が持つ本物の安全性能とはなにかを再認識させられた。SUBARUが掲げる「死亡交通事故ゼロ」という目標が、単なるスローガンではなく、確固たる技術に裏付けられた重みのある挑戦であることを強く実感した。
[ アルバム : SUBARUの交通安全の取り組み(フォレスターがファイブスター大賞を受賞) はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
いちど乗ってしまうと...
特にアイサイトの高性能ぶりはね。
スバルだって過去に重量操作の不正をしています。昔の話です。