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下田丈が語る、スーパークロスデビューを終えて「毎年、チャンピオンを狙っていく」もちろん今年も…

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下田丈が語る、スーパークロスデビューを終えて「毎年、チャンピオンを狙っていく」もちろん今年も…

2020年2月15日、日本のダートバイク界を揺るがす歴史的な日を迎えた。下田丈の、スーパークロスデビューである。「レースが終わってから、ラーメンを食べに行ったんです。ガイコのフーディを着てたからか、知らない人に声をかけられて、いまさっきスーパークロスを走ったことを話したら、めちゃくちゃ盛り上がって…ラーメンをおごってもらいました。アメリカらしいな、と思ったし、日本でもそのくらいモトクロスで盛り上がってくれたらいいな、と思ったんです」と下田。弱冠17歳、どこまでも前向きな下田の直撃インタビューをおとどけしよう。

同世代で決勝に残ったのは、下田だけだった
その下田は、初年度からタイトルを狙う

「他のライダーは、ケガが多かったですね。イーストで出る予定だった、ピアース・ブラウンは事前の練習でケガ。フランスからきたブライアン・モローも開幕でケガ。ジャレク・スウォルは、予選に通りませんでした。スウォルは、特にアマチュア時代の勝率も高かったのですが、スーパークロスの準備は間に合わなかったのかも」と下田は言う。

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北米でアマチュアモトクロスを戦うライダーは、いきなりスーパークロスにプロデビューするわけではない。例をあげると、下田の場合はモンスターエナジーカップのためにトレーニングを積んでいる。彼らスーパールーキーからすれば、「プロのスーパークロスは、フープスもある」程度の違いなのだそうだ。目が慣れていない我々からすると、そのフープスの深さは尋常では無く、ジャンプの尖り方もすさまじい。

事前情報の記事にも書いたことだが、下田はパワーランキング8位。スウォルはここに入ってこない。底力が、評価されているのだ。

「どうなんですかね、走ってみて10位、まぁ…」と下田は言葉を濁す。自分の立ち位置は、肌感覚で理解しているが、あまりその辺に「興味がなさそうな返事」をする。

下田は言う。
「いつまでにチャンピオンを獲りたい、なんて考えはなくて…、1年1年を大切にしていきたい。今年だって、チャンピオンを狙っています。だから、ケガはしたくない。今後もですが、開幕戦は特にその思いが強かったですね」と。アマチュア時代から、実は下田はケガをしないことが一つの長所だった。クレバーであり、歩みを止めずに成長することの、「強さ」を知っているのだ。

半年前に苦戦した、スタートが改善したワケ
下田を取材しに渡米するたびに、その成長率に驚かされる。Off1.jpが何より下田を追っている理由は、その成長率にある。確実に目に見える形で改善し、スピードを常に底上げしているのがJO SIMODAなのだ。この開幕戦では、明らかにスタートのキレがアップデートされていた。

「メンタルが強くなったと思います」と下田は、単刀直入に言う。ロレッタリンから、アウトドアモトクロスへ1週間でデビューした昨年、下田はナーバスだった。端から見てもそれがうかがえたのだけれど、このたびスーパークロスでは、振り切った雰囲気があった。

「スタートを徹底的にトレーニングしてきました。それに、チームとしっかりテストを繰り返してきました。特に言えるのは、クラッチのテストをやりこんだことです。重くレスポンスのいいクラッチでは、つながりがダイレクトなのですがフロントが浮き気味でした。スーパークロスはメタルスタート(スタート地点に金網が引いてあり、トラクションに優れる)ですしね。ある程度ダルな軽いクラッチを今は使っていますが、こちらのほうが調子がいい。4つほどセッティング別につめました」と下田。

「それと、20モデルのCRF250Rが、全体的にパワーが出ているというのもあります。今年のガイコは、全員スタートがいいでしょう? 僕らが乗っているのは、プロ仕様なのですが、19モデルから一段階上のパワーだと言えるくらいアップデートされています。今後、もっと自分が速くなったら、どう言うかわかりませんが、今のところマシンはパーフェクト」と言う。大型ルーキーを二人も抱えたガイコホンダのマシンセットアップ、およびホンダのアップデートサイクルが、ちょうどマッチしたのだった。DOHC化され、様々な意見があった現世代のCRF250Rは、ここにきて日本の下田丈を強力にバックアップしている。

北米のメディアに「ナーバス」だと書かれて
そんなタンパの走りは、下田として評価が高い。前述したとおり、特にケガに対して守りに入る意向があったというのもあり、その状況でトップ10へ食い込んだのだから、これはとんでもないことだ。

だが、2020年を代表するスーパールーキーに向けられる視線は、そうたやすいモノではない。「下田は初戦でナーバスだった」とかき立てたメディアも散見された。逆に言えば、期待値が高いということでもあるのだが「ナーバスだったかと言われたら、その通りだと思います。反論できません」と下田。

「ヒートレースがはじまる前、ほんの直前までは余裕だったんです。ところがスタートしたらものすごい緊張してしまった。むしろ、直前まで余裕があったのが、自分でも不思議なくらいですよ。

理由はわかりませんが、体の動きも固かった。特にフープスは練習してきてスピードに自信があったんですが、そのフープスでもあぶないシーンが何度かありましたね。スーパークロス自体が、たとえばライダーのあたりが強かったりするのかというと、そんなことはありません。タンパでもカイル・ピーターズとバトルして、少しあたった…かな? それで気落ちするようなことも無かったですし、プロなんだからアグレッシブにやり返したくなる気持ちがあります。スーパークロスは、180度ターンがほとんどなので、コーナーのスピードが高くない。だから、アウトドアより安全だと思いますよ」とのこと。

サンドセクションのこなしで1秒の差があったのだ
速報でも書いた、サンドセクションの難しさは、レースが終わって解析してみるとさらに深刻だった。

「ゴースト(同じスピードで、違う時点の映像を重ねる)を使ってみたら、アウトのほうがインよりも1秒速かったのにインを走っていました。アウトのほうが、メインレースではスピードに乗せやすかったんです。本番では、これはわからなかったことですね。だって、タイムドプラクティスでは、ジェレミー・マーティンがファステストを刻んだラインがイン側だったんですよ」と下田は言う。「今回のコースは、特に難しくてレース中にコンディションが大きく変わったということなんでしょう。だから、こういう情報をチームとしっかり共有していきたいと思いました」と。予想通り、サンドセクションが、タンパラウンドの大きなキーになったのだが、それを戦略として活かすことができなかったというわけだ。

このタンパをもって、下田は本格的なプロのキャリアがはじまった。アウトドアは3週連続で後半だけ走ったが、シーズン終了まで駆け抜ける年は、2020年がはじめてになる。

「疲れはあまり残っていません。たぶん、3戦目あたりから、疲労がたまってくるんじゃないかな」と下田。拠点にしているカリフォルニアから、木曜日(あるいはプレスデーがなければ金曜日)にフライとして現地へ。金・土のレースデイ後、日曜に移動、月曜日だけオフの時間をとる。このインタビューは、とても貴重なオフの時間をいただいた(オフといっても、朝イチでMTBでアップ、整体し、ジムでトレーニングをこなしている)。現地時間、明日の火曜・水曜はきっちり乗り込んで、シーズン中にもグローアップを果たさなければならない。

「心拍数が気になる」ジェフ・ワードの言
現トレーナーの、ジェフ・ワードはこのタンパを想定していたような返答をしてくれた。

「下田はオフシーズンの間に、学ぶために沢山ミスをし、繰り返し修正して、成長してきている。レース終盤の疲労でミスを犯さずにレースをマネジメントする方法とかね。簡単なことではないが、私ができることはすべてたたき込んでいるつもりだ。

気になるのは、心拍数だね。

練習はいろんなものを自分のコントロール下におけるものだが、レースでは思っている以上に速くものごとが過ぎていく。だから息が詰まって、深呼吸をして場に慣れようとするものなんだ。それで、心拍数が上がる。レースでも、心拍数をマネジメントしなければいけないのが、プロとアマチュアの違う点だと私は考えている。速いやつが後ろにぴったりつけてきても、状況を受け入れ、平常心を維持してずっと戦い続けること。4、5、6ラップをいい状態に保ち続けること。

だから、下田にとっては緊張状態を落ち着かせるのが大事なことだ。レースをこなすうちにできるようになると思う。だからテストトラックのライディングでは、誰よりも速く走ることを要求しているんだよ」と。下田がたとえば表彰台に上がれるかどうか…は、パニックに陥らないこと、レースをマネジメントできることが大事なのだとワードは言う。

「He is really good at the game.
(彼は、本当にいいレースをするからさ)」
と。

驚異的な成長率をみせる下田の、この開幕の10位の意味はとてつもなく期待感に溢れている。次戦、ダラスラウンドはたったの1週間後。この2020シーズンをどう戦っていくのか、大いに注目して騒いでほしい。下田も日本のファンに対して「今の時代だから、SNSとかを通じてもっと盛り上げたい」とコメントしてくれている。

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