初代はアストン マーティン復活の狼煙
21世紀の幕が開けるや、アストン マーティン復活の狼煙となったモデルは、その名にしっかりと想いが託されていた。
【画像】アストン マーティンのフラッグシップ!ヴァンキッシュと日本でもお披露目されたヴァンキッシュ・ヴォランテ 全158枚
『Vanquish(ヴァンキッシュ)』
順風満帆とはいかなかった過去を克服する。現在のライバルたちに対して優位に立つ。そして未来のスポーツカー市場を征服する。察するにそんな意を示したものだろう。
そのクルマ、初代ヴァンキッシュのボンネットに納まったのは自然吸気の6L V12だ。当時PAGの一員としてフォードの指揮のもと、再建中だったアストンが付加価値のためにデュラテック3L V6を連結するかたちで独自開発したAM29型で、ヴァンキッシュへの搭載はDB7ヴァンテージに次ぐ二例目だった。
以降、DB9やV12ヴァンテージなどにも搭載され、以降のアストンの成長の、文字通り原動力となったのを承知されている方もいらっしゃるだろう。
6L V12から5.2L V12ツインターボへ
3代目となる新型ヴァンキッシュが搭載するエンジンは、初代~2代目と続いた6L V12から5.2L V12ツインターボへと改められている。DB11から搭載されるAE31型は、骨格設計を継承しながら10mm近くストロークを詰めて排気量を抑えつつ、ポート噴射のまま過給でトルクとパワーを上乗せする、クラシックなスポーツユニットの手法を採った。
このエンジンの発展版となるAE34型を搭載したヴァンキッシュのアウトプットは835ps/1000Nm。初出しのDB11に対しては227ps/300Nmの向上を果たしている。ターボマジックとはいえ数値的にはまったくの別物、実に3L級のクルマ1台分のパワーが上乗せされた計算だ。
このスペックは12気筒スーパースポーツの実情や、xHEV化によるトルクリッチ化など、スーパースポーツカテゴリーのライバルたちの動向を意識しながら設定されたものであることが伝わってくる。
それほどのエンジンを搭載する車台は、あくまで伝統に忠実だ。ZFの8HPを後軸側にマウントするトランスアクスルレイアウトではあるものの、駆動方式はFRを貫いている。これはもう代々の歴史やスタイリングにも関連する彼らの定理だが、1000Nm級のトルクを御するなら四駆やMRの方が有利なことは間違いない。果たしてどのようなチューニングを施されているのかが興味深いところだ。
ちなみに前後重量配分はリア寄せではなく、車検証記載値を四捨五入すれば51:49と、ほぼイーブンとみていいだろう。
総代として自らの魅力を余さず詰め込んだ役割
ヴァンキッシュといえば、アストンの総代として自らの魅力を余さず詰め込んだ役割も期待されるのが常だ。それだけにエクステリアだけでなくインテリアも隙なしの作りとなっている。ADASやインフォテインメントといった先進装備もひと通り揃っており、GT的な用途にも十分応えてくれそうだ。
パッケージ的には2シーターだが、シート背後にはハンドバックサイズの手荷物を置ける程度の恭しいスペースが用意されていた。トランクの容量は245L。鞄の形状は選ぶかもしれないが、大人2名の旅行ぶんくらいは十分賄えるスペースは有している。
ちょっと気になったのはメーター周りのデザインやパネルのグラフィックに色気が乏しいことだ。ドライバーエンゲージメントのみならず、アストンらしいエレガンスという点からみても事務的で物足りない。もはや物理針ではないことを殊更に取り上げることもないが、情感情緒を期待されるブランドゆえ、せめてヴァンキッシュくらいは見せ方をもう少し練ってもらいたかった。
2008年に発表されたOne-77の姿と重なる
メリハリの効いたヴァンキッシュのプロポーションをみているとその姿が重なるのは、2008年に発表されたOne-77だ。その名の通り77台の限定販売となったそれは、今日のヴァルキリーやヴァルハラにも通じるアストンのハイパーカービジネスの先駆けともいえる存在でもある。
ヴァンキッシュの全長はそのOne-77より200mmくらい長いが、全幅はほぼ同じ。絞り込まれたウエストからパンと膨らんだリアフェンダーにかけてのラインはちょっと市販車離れしたセクシーさを感じるが、日本の狭い街路や駐車場の料金所では、さすがにその張り出しが気になるのも確かだ。
乗り心地は現在のアストンのラインナップにおいてはラグジュアリー寄りの位置にあるDB12と遜色ない。どころか、橋脚ジョイントなどの鋭利な凹凸や大きなバウンドの収め方などはこっちの方が上かもと思わせるところがある。タイヤサイズや銘柄からすれば、望外にGT側に振れているように窺えた。
乗り味が上質に感じる理由は音にもある。路面からの入力音やパターンノイズは適度に抑えられており、普通に走る限りは会話にも困ることはない。そもそも初代ヴァンキッシュが先鞭をつけたと記憶する始動時のブリッピングは相変わらずながら、最新のモデルらしく、アイドル音は低く保たれている。
身悶えるような突き進みっぷり
一方、お察しの通りで完全に一線を画しているのが動力性能だ。全開加速はさすがにタイヤの撓みが伝わるほど強烈で、身悶えるような突き進みっぷりに火力の凄まじさが伺い知れる。
通常であれば1000NmをFRで抑え込むのは相当に難儀な話だが、無粋な電子制御の介入はできるだけ控えたいのだろう。結果的にスポーツカーらしい手強さや野性味がインターフェースを通じて感じられた。仕立てのいいスーツの下は筋骨隆々……と、まさしく007の世界観を地で行くかのようだ。
が、その実、操縦性にはトリッキーなところはまったくない。どころか、コーナリングの振る舞いは至って素直だ。アクセルコントロールに対するトルクデリバリーは至ってリニアな上、操舵側も駆動側も接地感はしっかりと伝わってくるので、大きな体躯を持て余すことなく、自信をもって運転に臨むことができる。
操舵応答にも神経質なところはなく、切り増すほどにじわじわとゲインを高めていく味付けで、車体の動きを細密に管理しやすい。さりとて腕利きが振り回すにもかったるさを感じることはない、そういう絶妙な味付けだ。
エンジンの回転フィールも7000rpmの直前まで軽やかに吹き抜けてくれるし、それに伴ってのパワーもターボユニットらしからぬ伸びやかさが感じられる。そこに伴ってのサウンドも、DB11やDB12とやや趣が異なり、中高音の心地よさが印象的だ。もちろん、数的な主力たるV8とは明確な差別化が図られている。
パワートレインの多様化によって内燃機自体の存在感が揺らぐ中、ヴァンキッシュは12気筒専用車として、年間生産数は限られるも継続的に販売される目論見だ。そんなモデルに宿るのは、英国のスポーツカーの雄として、何としても伝統を継承するというプライドなのだろう。
アストン マーティン・ヴァンキッシュ(欧州仕様)のスペック
英国価格:33万ポンド(約6402万円)
全長:4890mm
全幅:1981mm
全高:1290mm
最高速度:344km/h
0-100km/h加速:3.3秒
燃費:7.3km/L
CO2排出量:312g/km
車両重量:1910kg
パワートレイン:V型12気筒5204cc ツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:835ps/6500rpm
最大トルク:101.8kg-m/2500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)
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