プレミアムSUVハイパワー戦争の中、2005年に登場したボルボXC90 V8 も忘れてはならない1台だろう。V8エンジン搭載は不可能とされていたプラットフォームに、ヤマハとの共同開発による新開発の狭角4.4L V8エンジンを搭載して驚かせた。当時のハイパワーSUVの流れにあって、とくに北米市場ではV8エンジンは不可欠だったということだろう。ボルボXC90 V8はどんなモデルだったのか、振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年11月号より)
肩の力の抜けた軽快な走り味、エンジンも足回りも乗用車テイスト
スペック競争の様相を呈するプレミアムSUVの中にあって、ボルボXC90の成り立ちはちょっとユニークだ。シャシの構成はS80やV70と基本的に同じ。使われる4WDシステムもデフロックを備えるようなハードなものではなく、電子制御のハルデックスカップリングを使い必要に応じてリアに駆動力を割り振るオンデマンド式。それに空転したタイヤを止めてトルク抜けを防ぐブレーキ制御機能を添えている。
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つまりXC90はSUVらしからぬオンロードでの軽快な走りや卓越したオフロード走破性を誇るのではなく、乗用車に近い肩の力の抜けたドライビングテイストこそが最大の魅力であり個性なのである。
ハンドリングもそれに相応しい味付けのどっしり系。ステアリングはロック・ツー・ロック2.5回転とクイックな方だが、舵を入れた時の反応はシャープ過ぎず素直な動きを見せる。しかもそれでいて、ロールなどのアクションに適度な抑制が効いているのが特徴。オフロード志向が強いクルマだとサスストロークを大きく取る関係で車体の揺れがどうしても大きくなる傾向があるが、XC90はどこまでも乗用車テイストなのである。
そんなXC90の国内仕様に、今回ようやく4.4LのV8エンジンが追加された。北米市場をメインとするXC90にとってV8は必須アイテムだが、本来直6の横置きを前提としたエンジンベイにフォードグループの持つV8は収まらず、ボルボ設計/ヤマハ生産のまったく新しいコンパクトなV8が開発されたのである。
315psのパワーを得たこのV8は、これまでのボルボにはない軽快な回転フィールが特徴。6100rpmのレブリミットに即座に到達するフケの良さと鋭いアクセルレスポンスを備え、高回転域では「コーッ」という吸気音まで聞かせスポーティだ。小型軽量に努めているのでV8化によるノーズヘビー感が少ないのも魅力である。
このV8の搭載でXC90のキャラクターはわずかに変わった。よりスムーズで軽快感が強まったため、さらに乗用車的に進化したのだ。となると、スペース的な制約でV8が左ハンドル専用なのが残念に思える。(石川芳雄/Motor Magazine 2005年11月号より)
ボルボ XC90 V8 TE 7人乗り(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4800×1900×1780mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:2210kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4413cc
●最高出力:315ps/5850rpm
●最大トルク:440Nm/3900rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:927万円(2005年当時)
[ アルバム : ボルボ XC90 V8 (2005年) はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
EVも将来的には間違いないが、今は時期尚早。
まだまだ日本ではディーゼルが売れる。
異例のヤマハ生産エンジン搭載だけあって、V8 TEモデルだけは別枠感がある仕上がりでした。
ちなみにTEはトップエグゼクティブの頭文字です。
同じTEグレードでもV8でなく直6ターボ搭載車も存在しますので、お間違いのないよう。
現在では、そうは言ってませんが、PHVのツインエンジンも頭文字はTEになります。
そういう小技が効いてるとこや、他社製部品を組み合わせても仕上げられるとこだったり、ボルボの伝統。