遊びたくなる軽二輪スクーター
インドネシアで先行して販売され、悪路走行も可能なスクーターとして話題となったホンダADV150。’20年2月14日の国内発売時点ですでに年間販売計画を1000台も上回る約4000台を受注しており、その注目度が窺い知れる。同クラスのホンダPCX150と乗り比べ、その違いをじっくりと検証した。
【試乗速報!】ホンダ「ADV150」はクラスを超えたライトウェイトSUVだった/PCX150も比較
●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史
[○]脚長が全てに好印象。エンジンにも違いが
’19年7月からインドネシアで販売されているADV150が、いよいよ日本でも’20年2月にリリースされた。’19年12月号で試乗したインドネシア仕様(生産も同国)との違いは主に排ガス規制で、日本で販売されるのはユーロ4相当のタイ生産車となる。マフラーやECUのマッピング、標準タイヤのメーカーなどが異なるが、根本的な違いはない。
―― 【’20 HONDA ADV150】 主要諸元 ■全長1960 全幅760 全高1150 軸距1325 シート高795(各mm) 車重134kg ■水冷4スト単気筒SOHC2バルブ 149cc 15ps[11kW]/8500rpm 1.4kg-m[14Nm]/6500rpm 変速機無段変速式(Vマチック) 燃料タンク容量8L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=110/80-14 R=130/70-13 ●色:赤、茶、黒 ●価格:45万1000円
―― 【悪路走破性も高めたシティアドベンチャー】日本仕様はタイで生産され、寒冷地に対応すべく発電量とバッテリー容量をアップする。リヤショックはショーワ製で、タンク別体式はホンダのスクーターでは初だ。ブレーキはフロントのみABSを導入。
今回はベースとなったPCX150と比較することができた。まずは動力性能から。149ccの水冷シングルeSPは基幹部分こそ共通だが、吸排気系およびベルトコンバーターのセッティングを変更。これにより発進時や低速域からの加速感がPCXよりも力強く、特に上り坂で違いが顕著に感じられる。加えて不快にならないレベルでパルス感が強まっており、補機類の違いでここまで印象が変わるのかと驚いた。
続いてハンドリングだ。ベースとなった現行のPCXは’18年のモデルチェンジでフレームを一新し、タイヤもフロントは1サイズ、リヤは2サイズも太くなった。これによりモーターサイクルに近い手応えと旋回力を手に入れている。対してサスストロークを前後とも30mm伸ばしたADV150は、発生するピッチングが大きめで、その中心付近にライダーがいるなどの理由から、さらにモーターサイクルに近いハンドリングとなっている。特に違いが現れるのは荒れた路面の峠道で、PCXではリヤショックが底付きしてしまうような場面でも、ADVは乗り手を慌てさせることがない。これはサスストロークだけでなく、インチダウンしてまでエアボリュームを稼いだリヤタイヤによるところが大きい。
ブレーキは、PCXのリヤがドラムなのに対して、ADVはディスクを採用する。’19年12月号で試乗したインドネシア仕様はCBS(前後連動)タイプだったが、日本仕様は非連動でフロントのみABSを採用する。CBSも好印象だったが、Uターンや未舗装路などでリヤのみ利かせたいシーンでは、やはり非連動の方が扱いやすい。加えて絶対制動力ではリヤもディスクの方が高い。
―― 筆者は身長175cm体重62kg。シート高は795mmと高めだが、座面形状の工夫により足着き性は極端に悪くはない。
◆PCXを基にSUV化
―― ADV150(左)とPCX150(右)
―― フレームは’18年に3代目へと進化したPCXのダブルクレードルを基に、シートレール端部のクロスメンバーを変更。同等の剛性をキープしながら約2kgもの軽量化を達成している。
―― 駆動系はファイナルを変えずウエイトローラーのセッティングなどを変更。吸気系はエアクリーナーダクト(1)を21mm、コネクティングチューブ(2)を2mm長くしている。
―― 【ホイールトラベル量を30mm伸長】PCX比でフロントは100→130mm、リヤは90→120mmへとホイールトラベル量を伸長。タイヤは専用設計で、インドネシア仕様のフェデラル製に対し、日本仕様はタイ工場のIRC製を標準装着。前後ホイールもADV専用だ。
―― ハイアップマフラーは仕向地の排ガス規制に合わせて2種類あり、インドネシア生産車はユーロ3、タイ生産車はユーロ4に対応。
―― 【テーパーハンドルを採用。メーターはフル液晶】クランプ径をφ28.6mmとしたテーパーハンドルを採用。メーターはバーグラフ式の燃料計や日付なども表示する多機能タイプで、インジケーターを別体として視認性を高める。
―― 左右のノブを引きながら操作することで高さを2段階に調整できるスクリーン。風洞実験から生まれた形状により防風効果は高い。
―― レッドカラー車はツートンのシート表皮を採用(他は黒1色)。グラブバーはPCXの金属→樹脂としてマスを集中。トランクスペースの容量はPCXの28Lに対し27L。
―― PCXと同様に便利なスマートキーを採用。なお、本体はインドネシア仕様とは若干異なる。
[△]意外と足着きも良く、不満は見当たらない
PCX150〈ABS〉との価格差は4万8400円。見た目だけでなく各部の作り込みも値段差以上のものが感じられ、特に不満は見当たらない。2段階可変スクリーンやスマートキー、エマージェンシーストップシグナルなど、装備も充実。
[こんな人におすすめ]軽二輪の起爆剤。遊びたくなるスクーターだ
前回、インドネシア仕様を試乗したときも優秀だと思ったが、今回はPCX150と比べたことで違いがより明瞭に。低い位置でピッと向きを変えるPCXも良いが、ADVのダイナミックな動きはまさにモーターサイクルのそれ。これは1台欲しい!
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