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スズキがレース活動に再注目? S耐に挑むプライベーターがメーカーを「本気」にさせた理由と、次期スイフトスポーツへの期待

掲載 更新 21
スズキがレース活動に再注目? S耐に挑むプライベーターがメーカーを「本気」にさせた理由と、次期スイフトスポーツへの期待

■スズキの4輪モータースポーツは復活しないの? S耐マシンきっかけで何かが変わる?

 毎年1月に開催されるカスタムカーの祭典「東京オートサロン」。

【画像】超カッコイイ! これが「スイスポ」です。 画像で見る!

 クルマ好きの動向をウォッチするのに最適なイベントと言う事で、昨今は日本の自動車メーカーのみならず海外メーカーも積極的に出展を行なっています。

 その自動車メーカーの1つであるスズキは、様々な提案モデルと共にスーパー耐久シリーズのST-4クラスに参戦するスイフト・スポーツ(以下:スイスポ)を参考展示しました。

 スイスポは「速い・軽い・楽しい」をアフォーダブルに具体化したスポーツハッチで、その素性の良さからカスタマイズの世界では定番車種となっています。

 モータースポーツの世界だと、ラリーはJN4クラスの定番車種として何度もタイトルを重ねていますが、S耐には正式な参戦記録はありません。

 スズキは2008年のWRC撤退を機に4輪のモータースポーツ活動は事実上撤退。

 更にスズキのスポーツイメージを支えてきたアルトワークスは2021年、スイスポは2025年で生産終了。

 ベースモデルは世代交代していますが、その後継車は存在せず。スズキは事あるごとに「我々は庶民の下駄」と語りますが、筆者(山本シンヤ)は元気/楽しい/安い「庶民のスニーカー」も必要だと思っています。

 ただ、そのようなモデルをやめてしまったスズキに正直ガッカリしていたのも事実です。

 そんな中でのスイスポによるレース参戦は驚きでした。ただ、マシンを製作しレースに挑戦しているのはスズキ自身ではなく、大阪府茨木市に店舗を構えるKunimatsu Auto Labo(國松自動車研究所)です。

 実はこのマシン、2025年の東京オートサロンにも展示されていましたが、この時はスズキのブースではなくプライベーターのKunimatsu Auto Labo自身での出展でした。

代表の國松宏二氏は「スズキは現在4輪のモータースポーツ活動をやっていません。私はWRC/JWRCの頃を知っているので、もどかしさがありました。私はお店を立ち上げ様々なモータースポーツに関わっていますが、すでに完成されたものを真似するのではなく、誰もやっていないこと(0から1)を作り出すのが好きです。『それなら、我々でやろう?』と言うのが参戦の発端でした」。まさに自動車研究所らしい考えと言えるでしょう。

 そんなAuto Labo、名前から想像するとそれなりに大きな組織に感じる人も多いですが、実はS耐に参戦するチームの中でも少ないスタッフでレース運営が行なわれています。

 國松氏は「2025年シーズンはスイスポと“素”ヤリスの2台エントリーなので、普段よりスタッフは多いです」と語るも7~8人で全てのレースオペレーションを行なっています。

 それも國松氏以外のメンバーは普段は他のチームのメカニックや別の仕事を持っているサラリーマン、更に大学生や普通のレース好きの女の子などバラバラです。

 ここだけ見ると単なる寄せ集めの即席チームのように見えますが、メンバーは國松氏の「0から1を作る」と言う考えに“共感”して集まっているため、結束力はもの凄く強いと言います。

 筆者はチームの密着をした事もありますが、皆が「今、何をすべきか」を考え、指示を受けることなく自発的に行動しているので、動きに無理/無駄がありません。

 更に驚いたのはレース前にケータリングを担当していたスタッフがレース中は燃料給油のサポートを行なっていたり、走行していないドライバーがタイヤ交換を担当したり、チーム監督の國松氏もピットレーンのボックスでの指示だけでなくピットイン時はジャッキ作業を行なうなど、メンバー全員がマルチタスクをこなしています。

 もちろんスキルは各々で異なるのでできる/できないはありますが、國松氏はそれでも挑戦させるキッカケを作っています。その結果、皆が“クルマ屋目線”で動いて行動しているのです。

 國松氏は「うちのチームは大人の部活なんですよ(笑)。レースウィークは皆でご飯を作り、お酒飲んで、クルマの話をして……。レースもただ走る、ただ戦うのではなく、その生活全部を含めて楽しむものだと思っています」とサラリと語っています。

 この光景を見て、筆者はあるチームの事を思い出しました。それはモリゾウこと豊田章男氏が率いるルーキーレーシングです。

 チームのモットーは「家庭的でプロフェッショナル」ですが、それを更に少人数で行なっているのが、Auto Laboなんだなと。

 ちなみに大阪府茨木市の店舗にも伺った事がありますが、いわゆる“町工場”と言う言葉がピッタリなファクトリーながらも、工場内にサラッと置いてあるパーツや工作機器、更に保管されているクルマを見て、「ここは只者ではないな」と言う雰囲気とオーラを即座に感じました。

 そんな事もあり、筆者はAuto LaboによるスイスポのS耐参戦を密かに気にしていましたが、より興味を持ち始めて取材を行なおうと思ったキッカケは2つの出来事でした。1つはSTMO(ス―パー耐久未来機構)の加藤俊行氏からの“逆”取材依頼で、次のように話しています。

「S耐は日本の各メーカーのマシンが走っていますが、唯一欠けていたのがスズキでした。

 なので、心の中では『スズキのクルマ、走らんかな』と思っていた中の参戦。もちろん、誰もやっていないのでたくさん苦労されていますが、その挑戦を見ているとクラスは違いますが『1人ST-Qクラス』に見えてきました。

 その取り組みが私には『S耐の原点』を感じたので、シンヤさんに是非深堀取材をしてほしいな……と思いました。

 國松自動車研究所と自動車研究家の山本シンヤさん、どこか共通項もありそうな気がして」

■スズキ社長も興味津々!? メーカーとの関係値とは

 もう1つは、S耐24時間をキッカケに繋がった“絆”です。実はスイスポのS耐参戦を聞きつけたスズキの首脳陣がAuto Laboのピットを訪れました。

 加藤氏は「スズキの人に来てもらいたいと思っていたのでお声がけした所、二つ返事でOKでした」と。

 実はスズキは、これまでも「S耐に来たい」と思っていたようですが、スズキ車が出ていないので行くキッカケがなく。しかし、Auto Laboの挑戦を機に「スイスポ出ているからね」となったそうです。

 現場では単なる激励ではなく、マシンに対する困り事やトラブルなどに関しての“アツい”議論などのやり取りも行なわれたと言います。

 スズキ自身も「今回、いいキッカケを作ってもらった」と語っています。國松氏は「それ以外にも開発の若い子が“お忍び”で見に来ることもありますよ。彼らも、自分が作ったクルマがレースで走っているのは嬉しいんでしょうね」と語ります。

 スイフト・スポーツでの参戦はそもそも知見が無い中での試行錯誤の連続ですが、その中で24時間はクルマへの負担も大きく過酷なレースです。

 そのため、レースウィークを通じて様々な部品が壊れたそうです。その1つがトランスミッションでした。実は決勝中にブローして2回交換作業を行なっています。

 これはスズキの首脳陣が帰った後のトラブルだったためその状況をレポートにしてスズキに送った所、スズキから「専任チームを作ったので、店舗に伺わせてください」と。

 最初の頃は「設計上は絶対壊れないはずだ」でしたが、壊れた部品を目の前に「ほら、こうなっているでしょ」、「えっ、こんな壊れ方するの?」と言うやり取りを行ない、現場の事実をメーカーにフィードバックする関係が構築されたと言います。

 すでにスズキの開発メンバーとモノを見ながらミッション破損の原因追及/対策方法が進められています。

 それもコスト上昇と手間がかかる特任申請が必要な改良ではなく、破損時に起きたであろう「ある仮定」を元に、オイルのより良い潤滑と冷却にこだわった改良を行なっているそうです。

 更にこれまでASSYで手に入れることができなかったエンジンを提供できる体制を築いてくれたと言います。筆者が訪れた時には、スイスポのエンジンASSYとミッションASSYが所せましと並んでいる光景に驚きました。

■スズキ副社長はどう思っている? 実際に聞いてみた

 筆者は昨今4輪のモータースポーツに明るくなかったスズキが、Auto LaboのS耐参戦を機に“覚醒した”と思っていますが、その真相を当の本人となるスズキの技術を統括する副社長の加藤勝弘氏に聞いてみました。

―― そもそも、キッカケは?

 加藤:元々は広報経由で「Auto Laboさんがうちのスイスポを使ってS耐に出ています」と聞きまして、「1度見学させてください」とS耐のピットに伺いました。そこで色々な困り事をお聞きしました。

―― 具体的にはどのような困り事が?

 加藤:複数のマシンで参戦しているチームはトラブルに関する情報交換ができますが、スイスポは1台だけなのでそれができない……そんな話でしたが、「そういう事なら、ウチは協力できますよ」と。

―― それを機にサポートが始まったと。何か即断即決な感じが凄いと思いました。

 加藤:我々が大々的に何かやる事はありませんが、社内には「サポートしたい」と言う気持ちのあるエンジニアはたくさんいますので。

―― 國松さんからの要望は?

 加藤:色々ありますが、1つは「スズキはエンジンASSYの提供……と言う仕組みがないんです。なので、エンジンが欲しい時は中古車買うしかないです」でした。それならすぐにできますので、仕組みを変えました。

―― 國松さんの店舗に行ったら、エンジンとミッションがズラーっと並んでいて驚きましたが、そういう事だったんですね。

 加藤:我々は“整えた”だけですから。

―― 簡単に言っていますが(汗)、生産側の話もあるので一筋縄ではいかないと思います。

 加藤:そんなことないですよ。例えば、社内でね、我々が開発する時もベースエンジンは生産ラインから貰ってきます。

 そのための手続きは社内にありますが、社外に出すルールが無かったのでそれを追加しただけです。別に凄い事をやったわけではないんです。

―― ただ、Auto LaboのS耐参戦をキッカケにルールが変わった事が凄いです。

 加藤:我々には「ルール変更は大変」と言う意識はなくて、「必要なら変えればいいよね」と言う意識なだけですね。

―― 他には何かありますか?

 加藤:國松さんからレース中に「ちょっとこの部品が壊れてしまい、何ですかね原因は?」みたいな電話は良く来ますね。

―― ホットラインがあるのですか?

 加藤:これも普通にやっていることですけどね。ただ勘違いしてほしくないのは、公式サポートではなく、スズキのクルマ/エンジンを使っていただいている人でお困りがあるなら、『お手伝いしますよ』と言うスタンスです。

―― なぜ、そんな考えになったのでしょうか。

 加藤:スズキの行動理念の1つに「中小企業経営(YARAMAIKA)」があります。

 具体的には「意思決定の速さ」「人と人との距離の近さ」、「変化に対応できる柔軟性」ですが、今回の件はそれを愚直に実行したと言う事です。

―― スズキが元々持つ「やらまいか」の精神が活きた出来事だったと?

 加藤:そうです。なので「凄いですね!」と言われてもこそばゆいんですよ。

―― でも、スズキの“普通”は外から見ると“凄い驚き”です。

加藤:ありがとうございます。それは我々が気づかない事なので(笑)。

※ ※ ※

 実はS耐24時間ではもう1つのストーリーがありました。実はトランスミッション以外にブレーキ系のセンサーも壊れました。このセンサー、通常は壊れるモノではないため予備部品を用意していませんでした。

 そんな緊急事態にチームは“藁をもつかむ”思いでSNS(X)に投稿をした所、レース観戦中だったスイフト・スポーツのオーナーさんが「僕のクルマを使ってください」と返信。

 彼はオートサロンでこのクルマの存在を知り、初めてS耐24時間に来たそうですが、チームがトラブルで困っている事を知り、声を上げてくれたのです。

 更に「自走不可になっても足があるので大丈夫」、「何ならミッションも必要なら、どうぞ」とまで。つまり、スイスポのS耐参戦はメーカーのみならずファンの心も動かしたのです。

 そんなAuto Laboのスイスポ参戦を喜んでいるのが、豊田章男氏です。國松氏は次のように語っています。

「モリゾウさんも『よくスズキのクルマでS耐に来てくれた!』と凄く歓迎してくれています。S耐の現場にはメーカーの垣根を超えて『もっとクルマを楽しもう!』と言う空気があると思っています。

 なので、良い意味での“連携”や“仲間意識”は強いですよ。モリゾウさんもSTMO理事長として気にかけていただいていますが、オートポリスの時に『うちのマシンで走りませんか?』とオファーをして、シート合わせはしてもらいました」

 実はその時のやり取りについて豊田氏に聞くと、「余計な事は言いませんよ(笑)。乗ってみたい、そしてスズキの反応を見てみたいですね。修さん(鈴木修氏)から散々『バカなこと(=レース)はやめなさい』と言われてきたので、余計にスイフト・スポーツに乗った“モリゾウ”を見てもらいたいですね。ドライバーとしてはFR/4WDは良く乗りますが、FFはあまりないので、走ってみたい想いはありますね」とまんざらではない様子でした。

 このようにプライベーターの挑戦が様々な化学変化を起こしたわけですが、筆者が気になるのは「次期スイスポは出るのか?」と言う所です。

 ちなみにスズキの東京オートサロンのサイトでこのマシンについてこのように書かれています。

「過酷な耐久レースの舞台でもそのポテンシャルを存分に発揮し、進化を止めないスイフト・スポーツの挑戦。走りの良さを磨き上げた、ファンの想いに応える一台です」

 進化を止めない→次期モデルが存在する…と考えるのが素直じゃないでしょうか。

 スズキはそれに関してはノーアナウンスですが、筆者は水面下で動いていると信じます。(山本シンヤ)

文:くるまのニュース 山本シンヤ
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みんなのコメント

21件
  • hab********
    なかなか面白い記事だった。レース観戦中のファンから、自分の車の部品提供の打診があったなんて、なんかええ話やな〜
    情熱は伝播して、時には人を動かす。
  • tek********
    時代に逆らえない部分は有るんやろーけど手軽に楽しめるベース車を提供してくだされ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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