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メルセデス・ベンツ300SLでミッレミリア2026へ(1) 超希少なW194のステアリングを託されたUK編集部 混沌の公道レース

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メルセデス・ベンツ300SLでミッレミリア2026へ(1) 超希少なW194のステアリングを託されたUK編集部 混沌の公道レース

危険過ぎて2度も打ち切られたミッレミリア

公道で行われるクラシックカーレース、ミッレミリアへ出場すると、メルセデス・ベンツ300SLの重要性を理解できる。現行の関連規則がまとめられた冊子では、ゼッケンを貼る位置を示す図に、そのシルエットが用いられているのだ。

【画像】速度に関係なく素晴らしい メルセデス・ベンツ300SL 現行型と限定ピュアスピードも 全104枚

かつてのミッレミリア(1000 Miglia)は、今以上に本気のレースだった。イタリア北部のブレシアから中部のローマまでを往復し、各メーカーが速さを競った。走行距離は合計1000マイル、つまり約1600km。危険過ぎて、2度も打ち切られたほど。

最初に開かれたのは1927年。だが、1938年に11名の観客が命を落とすクラッシュが起き、当時の大統領、ムッソリーニが1939年の中止を決めた。戦後の1946年に再開され、1957年まで続くが、再び複数の命が失われ中止へ迫られた。

今回の主役は、W194型プロトタイプ・レーサー。同社が戦後にモータースポーツ復帰を果たした、1952年のミッレミリアで、4位入賞を果たした車両そのものだ。

同時期のイタリア製ライバルより非力だった177ps

ガルウイングドアと卵型フロントグリルが象徴的なW194型は11台作られ、その内の4台はメルセデス・ベンツが今も維持している。2台は廃車になり、2台は行方不明。3台は、厳密には純粋なW194と異なるが、個人のコレクションとして現存している。

今回の300SL プロトタイプ・ワークスレーサーは、5番目に製造されたもの。シャシー番号は194010-00005/52で、エンジンは3.0L直列6気筒。ツインキャブレターで177psの最高出力を得ていたが、同時期のイタリア製ライバルより非力ではあった。

トランスミッションは、Hパターンの4速マニュアル。シャシーは鋼管スペースフレームで、軽いアルミ製ボディが被されている。車重は900kgを切る。

初期のW194はサイドシルの位置が高かったが、ドライバーが駆け寄って乗り込むル・マン式スタートを想定し、00005/52では開口部が広げられている。工具類やスペアタイヤを搭載できるよう、広い荷室も備わる。

ドライバー中心で設計されたキャビン

74年も前のレーシングカーでありながら、内装の仕立てが丁寧なことに驚く。耐久レースを前提に、ドライバー中心で設計されているからだ。

タータンチェックのシートは座り心地が悪くなく、フロアにはカーペット。ダッシュボードは、クロームメッキのトリムが飾る。センタートンネル部分は、タイムカードや書類を収納できるよう、ポケット状になっている。

シフトレバーはS字状に曲がり、ノブはドライバーが手を下ろした先。巨大なステアリングホイールはウッドリムで、乗降時に取り外せる。スポークはX字状で、間からスピードとタコメーターが良く見える。補機類も。水温計は、酷暑の今年は特に重要だった。

2026年のミッレミリアは、6月上旬の5日間に開かれた。古いレーシングカーは特に、長時間の徐行を想定していない。ところが、コースは渋滞しがちなのだ。

クラシックカーが来ると周囲へ知らせる白バイ隊

レースを円滑にするため、警察も協力し、交差点では参加車を優先する。ところが先導役を担う白バイ隊は、自ずと珍しいクラシックカーが来ると周囲へ知らせることにもなる。

警察官は、一般車でもアルファ・ロメオには甘く、車列へ加えてしまう。気付けば、参加車ではないクラシックカーも混じり、関係ないアウティも並走していたりする。ミッレミリアが、好意的に受け止められている証拠ではあるが。

他方、先導車と距離が開いたポルシェ356が、100km/hで路地へ飛び込んでくることも。自宅へ帰るため、フィアット・プントを運転するご婦人からすれば、迷惑でしかない。参加ドライバーの多くは、プントが避けるものだと信じている。

レース後のレポート映像には、白バイ隊へ突っ込むポルシェや、路肩で横転したクラシックカーが映っていた。サルーンへ衝突する、古いアルファ・ロメオも。対向車が鳴らすクラクションの多くは、応援の意味を込めたものだが、違うものもある。

W194型300SLを3台投入したメルセデス

こんな混沌とした公道レースへ、メルセデス・ベンツは自ら管理する、超貴重なW194型300SLを3台投入。そして、その1台のカギを筆者へ貸してくれるという。

ペアを組むのは、メルセデス・ベンツ・クラシックを率いるマーカス・ブライトシュヴェルト氏。筆者のドライブで、彼の命は脅かされないと判断されたらしい。メルセデス・ベンツUKのトップにいた人物で、退職前になって再配属されたそうだ。

もちろん、混乱気味の市街地が延々と続くわけではない。トスカーナ地方の丘陵地帯は、非常に走りやすい。その間には、スピードへの欲求を鎮めるため、特定区間を22.9km/hで20秒間走る、といったトライアル・イベントも設けられている。

この続きは、メルセデス・ベンツ300SLで公道レースへ(2)にて。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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