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ガソリンの高値安定傾向はいつ終息? 価格高騰の背景に迫る

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ガソリンの高値安定傾向はいつ終息? 価格高騰の背景に迫る

 世界的な原油高が止まらない。2021年11月29日の時点で1バレル当たりの価格は70ドルを超えている。2020年4月には20ドル前後だったから、1年半で3倍以上の値上がりだ。これほどの高値がつくのは2018年10月以来である。

 その結果、発電用の重油、暖房用の灯油などが値上がりしているが、最も打撃を受けているのがガソリン価格だ。日本では2020年12月全国平均でリッター当たり129.1円だったレギュラーガソリン価格は、2021年11月8日には169.0円になった(資源エネルギー庁調べ)。その後、2週続けて値下がりし、11月22日現在のレギュラー価格は168.7円になっている。

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 それにしても、なぜ原油価格がこれほど高くなっているのか。ひとつには、コロナがワクチンの普及もあってようやく落ち着きを見せ、世界経済が再開に向かっていること。経済活動が活発になって石油需要が高まり、先進諸国と中国を中心に原油への買付需要が高まっていることが挙げられる。

 日本では円安が進み、輸入品が高騰している。2021年11月時点で1ドル=114~115円程度。2021年1月当時は105円を切っていた。円安の影響で、輸入食料品などが最近値上がりしたのは記憶に新しい。原油・ガソリン価格の高騰も円安の影響を受けている。

 一方で世界最大の産油国によるOPECプラス(OPECとロシア、メキシコなどの産油国)では、昨年の大幅な需要減の際に原油を減産したが、そのペースを上げてきていない。OPECプラスに対しては原油増産を訴える動きがあったものの、応じていない。

 OPECプラスにとっては増産して再びコロナ感染症が拡大して需要が減り、原油価格が大幅に下落する事態が心配だ。またCOP26でも話し合われたように、いま世界は脱炭素に向かっている。とくに欧州諸国はガソリン車の販売禁止に積極的だ。早ければ2030年以降、世界のガソリン需要が大幅に減少する可能性もある。そうした時代に合わせた生産体制を作っていくうえで、ある程度抑制された原油生産管理が必要になる。

 もうひとつの要素が、アメリカのシェールオイルの減産だ。一時原油価格が100ドル水準から50ドル程度に下落したことがある。その理由が「アメリカで安いシェールオイルが大量に生産されるようになったため」といわれる。

 ところがアメリカのシェールオイルの生産が鈍化しているのだ。バイデン政権が環境政策に重きを置き、環境への負荷が大きいシェールオイルに消極的なのが理由のひとつ。同時にパイプラインへの投資も滞っている。

 つまりアメリカでは自国産のシェールオイルの減産、OPECプラスからの増産がない、その一方で産業で使用される重油の需要が高まる、というダブルパンチを食らっている。

 こうした傾向に拍車をかけているのが、コロナ感染症による世界的な物流の遅れだ。カリフォルニア州のロサンゼルス港の例を紹介しよう。

 ここは世界最大級の物流ハブのひとつだが、昨年以降ロサンゼルス港沖のコンテナ船の停留が問題になっている。同港はアメリカに出入りするコンテナの4割を扱っているが、沖待ちと呼ばれる、入港できない船が増えている。その数は2021年9月には70隻以上に上った。

 これを解消するため、カリフォルニア州はロサンゼルス港の24時間稼働を決め、2週間以上沖待ちをする船舶への罰金を課することも決定した。

 そもそもコロナ感染症により購買需要が減り、企業は在庫処理に苦労していた。とくにクルマに関しては、一時レンタカーやディーラーの在庫を置く場所がなく、ロサンゼルスではドジャースタジアムの駐車場がこうした車両で埋まる、という事態が見られた。その当時、日本や韓国からの輸入車を載せたコンテナの長期停泊が話題となった。

 現在需要は急速に回復しているものの、一旦途絶えた物流を元に戻すのは難しい。コロナの影響で離職者が増え、港湾労働者もトラックドライバーも不足しているのが現状なのだ。

 こうした問題は世界中で見られる。その結果、需要に見合うだけの供給もなければ、それを運ぶ物流にも問題があり、それが物価高騰に影響している。

 今後の見通しだが、この原油高、イコールガソリン高は年末年始までは続くと見られるが、現在は高止まり、との見方が多い。いま以上のガソリン高はとくに米国では人々の暮らしに与える影響が大きいため、アメリカが思い切ったシェールオイル増産に踏み切るなどして解決策を見出す可能性が高い。

 ただし、現在はエネルギーの過渡期ともいえる。再生可能エネルギー、水素発電などが広く普及するにはまだ時間がかかり、電力需要をすべて満たすことはできない。今後その方向にエネルギー政策がシフトしていくのは確実だろうが、化石燃料なしに産業や一般家庭の電力を供給できる状態にはまだまだほど遠い。

 クルマも同様だ。2050年の時点でもEV普及率は50%程度、というシンクタンクの予想もあり、すぐにガソリン需要が大幅に減ることも考えにくいが、一度EVにシフトすればガソリン需要が戻ることも考えにくいため、原油需要はゆるやかに減少する、と予測できる。

 OPECプラスとしてはそれまでの間に利益を確保する必要があるため、少し需要が増えたからといってすぐに原油増産という態勢は取りにくい。そのためガソリン高は簡単には解消できない、という見方もある。一方で、アメリカの出方次第では急に暴落する、という予想も。

 来年の初めごろまでは、現在の高いガソリン価格が続くことだけは間違いなさそうだ。

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